イタリア・オペラの殿堂によるヴェルディ・オペラの神髄 ミラノ・スカラ座 TEATRO ALLA SCALA 2009年日本公演
イントロダクション 「アイーダ」 「ドン・カルロ」 最新情報 来日特別演奏会 公演概要
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「アイーダ」【全4幕】当代随一の円熟の巨匠バレンボイムが指揮を振る、贅のかぎりを尽くした究極のイタリア・オペラ!

解説

スカラ座の『アイーダ』こそ、“本家本元”である!

 オペラ『アイーダ』といえば、やはり壮大さや凱旋行進やバレエなどに盛り上がる祝典的な雰囲気の圧倒感を期待するのは当然のことといえるでしょう。周知の通り、この作品は、スエズ運河の完成を記念してエジプトの首都カイロに建設された歌劇場のこけら落としのために作曲されたものですが、当地での初演から7週間後の1872年2月、『アイーダ』はミラノ・スカラ座で上演されます。イタリア初演となるこのとき、ヴェルディは、リハーサルから立ち会って、細部に至るまで指示を出し、その結果、「幕ごとに8回のカーテンコールを受け、終幕後にはヴェルディは32回も舞台に呼び出された」と言われています。初演の地でも成功をおさめたとはいえ、現在に至るまで、世界中への凱旋行進が繰り広げられることとなった源はスカラ座にあり!というべきでしょう。
 自身の作品の上演に対して厳格な姿勢をもったヴェルディは、当初、『アイーダ』の上演に際して、「ソリスト、オーケストラ、合唱など舞台上の諸条件が水準を満たし、一人の指導的頭脳があらゆる責任を負うことができる場合にのみ上演を許可する」ということも考えたようです。これは『アイーダ』が、単に派手なスペクタクル・オペラというだけではなく、音楽的にもドラマとしても、他の作品とは違う、さらに高みに達した作品として上演されなければならないというヴェルディの確固たる自信を示していたのではないでしょうか。ヴェルディの考えた上演を彼の目の前で実現させたスカラ座には、『アイーダ』上演への誇りが受け継がれてきました。2006年12月のシーズン開幕を飾ったこの『アイーダ』は、20年ぶりに新演出が行われたもの。他の追随を許さない誇るべき“本家本元”の『アイーダ』は、スカラ座でこそ実現できることを見せつける堂々たる上演が、日本のファンに届けられます!

壮大な舞台装置だけではない、ゼッフィレッリ演出の凄さ

 イタリア演出界の巨匠ゼッフィレッリの演出となると、舞台美術の壮麗さ、スケールの大きさなどが第一印象として浮かぶこともあるでしょう。今回の『アイーダ』も、「舞台上に古代エジプトが再現されたような豪華絢爛さ」「総勢400人にもおよぶ出演者が登場する凱旋行進の場面の圧倒的迫力」など、ゼッフィレッリ演出ならではのゴージャスさは、その期待に応えてあまりあるものとなっています。しかし、この一大スペクタクル・オペラが、3人の愛に苦しむ主人公たちの悲劇であることを、絵空事ではなく描き出すのもゼッフィレッリの手腕。
 美しい二重唱、壮大なスケールの合唱、輝くばかりの凱旋行進のなかで影を落とす人間模様、地上と地下での愛と永遠の別れ…、このドラマティックな悲劇物語を、空前のスケールに埋もれることなく描き出せるのは、ゼッフィレッリならでは、と誰もが感じることとなるはずです。

壮大な舞台装置だけではない、ゼッフィレッリ演出の凄さ

 指揮者ダニエル・バレンボイムが、世界の頂点に立つオペラ指揮者の一人であることは誰もが認めるところでしょう。しかし、日本のオペラ・ファンにとってバレンボイムの振るオペラといえば、《ニーベルングの指環》や『トリスタンとイゾルデ』をはじめとしたワーグナー作品、あるいはモーツァルト作品での名演が印象深い傾向にあるといえるでしょう。バレンボイムが2007年12月にスカラ座デビューを果たしたのも、『トリスタンとイゾルデ』でした。これに先立つ2006年5月、スカラ座はバレンボイムに“マエストロ・スカリージェロ(スカラ座のマエストロ)”という称号を与えています。『トリスタン』の成功は、両者が緊密な協力関係を築いた成果といえるものでした。このとき示された歌劇場と指揮者の間の信頼関係があればこそ、今回のスカラ座日本公演にバレンボイムの登場が実現したともいえるでしょう。
 さてでは、バレンボイムは過去に『アイーダ』を振っているのかいないのか? ご本人いうところの、「かなり以前に」とは、1970年代後半から客演したベルリン・ドイツ・オペラでのことのようです。“ヴェルディの劇場”の異名をもつスカラ座は、切り札ともいえる作品『アイーダ』を託しました。それは、この作品がもつスケールの大きさ、ダイナミックな響き、オーケストラと大合唱をコントロールする技術、すべてにおいてバレンボイムの手腕を確信してのこと。
 バレンボイムが振るスカラ座の『アイーダ』、オペラ・ファンにとって、これほど期待と興味が高まる公演がほかにあるでしょうか?!

愛の悲劇を描き出す実力派歌手たち

 ヴェルディは『アイーダ』において、登場人物や場面の設定に同一のモチーフ(旋律)を使うなど、音楽とドラマをぴったりと寄り添わせ、劇的効果を高めることに成功しました。こうして書かれた作品の上演には、当然のことながら、主役歌手たちへの要求も難度が高まります。まずタイトル・ロールのソプラノには、大合唱のなかでも輝きを放つ声量が不可欠。さらに、恋人と祖国という相反するものへの愛に苦しみながら、最後には献身的な愛に死を遂げるアイーダには、深い表現力が求められます。メゾ・ソプラノとして活躍した後、ソプラノに転向したヴィオレッタ・ウルマーナは、張りのある艶やかな声と王女としての気品も感じさせるプリマ・ドンナ。2006年の開幕公演を成功に導いた実力を披露してくれることとなります。一方ウルグアイ生まれの新進マリア・ホセ・シーリにはみずみずしい感性が期待されます。
 アイーダの恋敵アムネリスは、強烈な嫉妬心、激しい情熱と王女の威厳を備えていなければなりません。しかし、結局は愛するラダメスを救うことができない無力感を嘆き、地下に封じられたラダメスのために鎮魂を唱える…。複雑な心情を表現するドラマティックな歌唱力が必要です。すでにこの役で圧倒的な歌唱が認められているルチアーナ・ディンティーノと、スカラ座をはじめ、ベルリンやフライブルクでもこの役で成功をおさめているアンナ・スミルノヴァの登場です。
 アイーダへの愛を貫き、その愛ゆえに国を裏切るという汚名を着て死んでいくラダメスには、若く熱血あふれる武将としての輝かしさと豊かな声量、そして恋愛と名誉の間で苦悩する表現力が要求されます。ウィーンを本拠に、ワーグナー、R.シュトラウス、ヴェルディなどのヒロイックな役柄をこなして絶大な人気を獲得しているヨハン・ボータ、21世紀を担うテノールの一人として世界中で目覚ましい活躍をみせている人気テノール、ラモン・ヴァルガス、いずれも聴き逃せないラダメスにちがいありません。


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