デンマーク・ロイヤル・バレエ団: インタビューアーカイブ

最新情報トップ > インタビューアーカイブ

5月2日付けで、「ロミオとジュリエット」のジュリエット役のキャスト変更のお知らせをいたしましたが、初日(22日)と24日にジュリエットを演じることになったスザンネ・グリンデルに岩城京子さんが電話で緊急取材してくださいました。

スザンネは1981年11月30日生まれの27歳。171cmの長身のダンサーで、ノイマイヤー振り付の「人魚姫」のタイトルロールや「ロミオとジュリエット」のジュリエットなど多くの作品で主演しています。芸術監督のニコライ・ヒュッベは彼女のことを「スザンネの長所は、その信じられないほどの美しさと長いしなやかなラインです。また、さまざまな振付に対する人並み外れた鋭い能力があります」と語っています。
"信じられないほど美しいジュリエット"にぜひご期待ください。


●スザンネ・グリンデル インタビュー
 
 二月。筆者のデンマーク訪問時にはまだ来日予定のメンバーには入っておらず、その後、急遽ジュリエットを踊ることが決定し、電話取材を敢行することになったソリストのスザンネ・グリンデル。「ハロー、連絡待ってたわ」と電話口で軽やかな挨拶を投げてきたスザンネは、のんびりとしたペースで話しはじめた。

 4歳でバレエをはじめ、7歳でここデンマーク・ロイヤルバレエ団の学校に入学し、17歳でバレエ団の研修生としてカンパニーに参加。気負うことなく淡々と、日々バレエ道を邁進しつづけてきた堅実な生き方が語られていく。だがひとつの習練をひとつの街で、これだけ長きにわたり継続するには、堅実さと共にやはりそれなりの覚悟が必要。ギリシャ神話に登場するニンフのような美しさを誇るスザンネだが、この金細工のごとき繊細な風貌の裏側には、どうやら、容易には折れることのない芯の強さが潜むよう。それは、たとえば彼女が十代のときに哲学、文学、社会学、ヴィジュアル・アーツの勉強に人一倍熱心に入れ込んだという行動にも表れているし、また次のような発言からも端的に読みとれる。

09-05.13iwaki01.jpg
「バレエをはじめた時点では、自分がどれだけ踊ることが好きかなんて考えてもみなかった。けれど歳月を重ね踊り続けていくうちに、自分にはなにがしかの才能があるのかも、その才能によってどこかしらに辿り着けるのかも、という希望が見えてきた。それと共に自分のなかに『なら、できるところまで行ってみたい!』という野心が生まれてきた。そうして私は徐々に、自分の能力を日々試しながら、バレエを強く愛するようになっていったのだと思う」
 そんな彼女がいま何よりも入れ込んでいるのは、パ・ド・ドゥを踊ること。他者と一緒に踊ることによって「自分ひとりでは生み出せない感情が生まれてくること」が楽しくてしょうがないのだという。
「異なるパートナーと踊ることにより、異なる感情が生まれてくる。今の私はそうして他者とのコンタクトを利用して、直感的に現場で、自分の踊りを作りあげていくことがとても楽しい。逆にいえば踊るまえに1ミリの狂いもない設計図を用意しておいて、その計画どおりに事を進める創作法はあまり好まない。私はできる限り本番でも振り付けのガイドラインを守ったうえで、そこからはみ出る要素も取り入れていきたい。舞台はライブ。その日その日に生まれてくる感覚を取り入れて踊りを作りあげていかなければ、臨場感のあるステージは決して生まれて来ない」
09-05.13iwaki02.jpg

 もちろん『ロミオとジュリエット』で披露する3つのパ・ド・ドゥ ーー、ボールルームの場、バルコニーの場、寝室の場、でのデュエットを踊ることも心から楽しみだと声を弾ませる。
「ロミオがリードする最初のパ・ド・ドゥから、ジュリエットが関係性を推し進める最後のパ・ド・ドゥまで、二人の関係性はダイナミックに変化していく。そしてその変化が、ノイマイヤーの振付によってとてもクリアに浮き彫りにされていく。ちなみに私としては何より、この3つの美しいパ・ド・ドゥを通して、さまざまな形の"愛"を表現したい。憎しみと戦いに溢れた舞台上のこの世界において、唯一、ロミオとジュリエットの二人だけが"愛"を信じて生きている。そして愛を信じて生きているからこそ、彼らは誰よりも強く生きられる。そんな感情が観客に届けば嬉しい」
 のんびりとした取材開始時の口調はすっかり影をひそめ、次から次へ熱く質問に答えていくスザンネ。気づけば電話口で50分、休みなく言葉を紡ぎつづけている。暢気そうで熱く、脆そうで強い。そんな彼女が果たしてどんなジュリエットに扮するのか、今から想像が膨らむ。



岩城京子(演劇・舞踊ライター)
photo:Martin Mydtskov Rønnep

9年ぶりに日本公演開幕までいよいよあと5日となりました。岩城京子さんのコペンハーゲン取材、最終回はディアナ・クニ。16日の「ナポリ」にティム・マティアキスとともに主演します。

●ディアナ・クニ インタビュー

 右も左も、きれいに着飾ったフランス人形のような女の子ばかり。7歳のディアナ・クニはここデンマークのバレエ学校にはじめて足を踏み入れた瞬間から、まずこの純絹のレースと花々の薫香に包まれた舞踊世界に唖然とした。それまで自分が生きてきた家庭環境とは大違い。母は元体操選手、父は元アマチュアのサッカー選手。アートというより明らかに体育会系の両親のもとに育てられた壮健な少女にとっては、はじめて目にする豪奢なバレエ世界は、異次元以外のなにものでもなかった。
「私はいまでも、どちらかというとサッカーを見て大騒ぎするのが好きなタイプ。だから規律がかっちり四角四面で、生徒もみな礼儀正しくて、ちいちゃなかわいいバレリーナとして振るまわなければならなかった学校生活は、たまに奔放な私には窮屈に感じられることもあった。けどひとたび舞台に立てば、これらの問題はいっぺんに吹き飛んだ。舞台上で踊れることがあまりにも楽しくて、そうした些細な悩みは帳消しになった」
09-05.07iwaki01.jpg 特に、南イタリアの太陽に祝福された歓喜のディヴェルティスマンが繰り広げられる『ナポリ』第3幕のような、舞台上から自然発生的に陽性のエネルギーが放出してくるような場面に出逢うと、その場に立ち会えている自分にとろけるような至福感を覚えるという。だから彼女自身も、『ドン・キホーテ』のキトリ、『ラ・シルフィード』のエフィー、バランシンの『シンフォニー・イン・C』、フォーサイスの『イン・ザ・ミドル・サムワット・エレヴェイテッド』といった強靱で発散的で陽性のエネルギーが要求される役柄を踊ることを得意とする。
「精神的にも身体的にもストロングな役を踊ることが私は好き。素早いステップやジャンプが多用されるパートは、自分の得意とするところだと言える。でも実はそうした嗜好性が、最近になって少しずつ変わりつつある。『ナポリ』でいうなら勝気で華やかな第1幕と3幕のテレシーナを踊ることより、第2幕のゆったりとしたアダージオを踊ることが楽しめるようになってきている」
 それはなぜかとこちらが問えば......、おそらく「ありのままの自分に自信が持てるようになってきたから」と意味深長な答え。92年にカンパニーに入団し、ソリストに昇進したのが00年。その間の8年間は「他者に自分ができることを認めさせること」にやたらと躍起になっていたけれど、近年ソリストとしてのキャリアを積むにつれ「人の意見は気にせず、自分のベストを尽くそうと思えるようになってきた。だからこそ自分の不得意分野にも平常心で目がむけられるようになってきた」と語る。他者尺度ではなく自己尺度で、いちバレリーナとしての自分を客観視する。その作業には自分の欠点を正面から受け止めなければならない辛さも伴うが、現在のディアナは「それを受け止めることで、よりダンサーとしての完全性が高まるから、いまでは課題の多い毎日が楽しい」と健やかに笑う。
 人間としてもダンサーとしても成熟期を迎え肩の力がすとんと抜けたディアナ。「とにかく今は、踊るこのできる毎日を、天からの贈りものだと思って楽しく過ごしていきたい」と他意なく語る。汗ばんだ盛夏の肌に心地よい一陣のそよ風のように、溌剌さのなかに柔らかな熟成をはらむ現在の彼女の踊りは、きっと観客に風通しのよい清々しさを届けるはずだ。


岩城京子(演劇・舞踊ライター)
photo:David Amzallag

岩城京子さんのコペンハーゲン取材、第7弾はトマス・ルンド。芸術監督ヒュッベから「トマスは、彼が本物のスターであることを、これまで何度も彼のキャリアを通じて証明してきました。劇場とバレエにどっぷりと浸かってきた人間です。そして彼の存在そのものが芸術なのです」と絶賛される、デンマーク・ロイヤル・バレエ団を代表するプリンシパルです。

●トマス・ルンド インタビュー

 物心つくころにはすでに、親戚一同を居間に集め、彼らのまえで演技や踊りを披露して「客を湧かせていた」と笑うのはカンパニーを代表するベテランプリンシパルのひとりトマス・ルンド。幼くして知らずのうちに周囲の人間と「感情をシェアすること」に至上の喜びを感じるようになっていた感受性豊かな少年は、ぼんやりと将来を見据え「なにか人前に立つ仕事がしたい」と次第に舞台に心を傾けるようになっていく。そして当時通っていたボールルーム・ダンスの教師に「体型が向いているから試してみれば」と薦められるままに、ここコペンハーゲンのバレエ学校に足を踏み入れる。以後、彼は「自分の居場所に疑いを持つことなく」まっすぐにこの劇場のなかで生きてきた。
09-04.28iwaki01.jpg 骨格のしっかりとした男らしい身体美に恵まれたトマスは、その濁りのない清潔なテクニックで、早くからカンパニー内で注目を集める。『くるみ割り人形』の王子役や『ラ・シルフィード』のジェイムスといった気品溢れるプリンシパル・ロールに抜擢されたのは二十代のこと。だが元来、自分が目立つことよりも、他人を喜ばせることに人並以上の喜びを覚えるタチなため、気づけば舞台中央に平凡な王子役として立つよりも、端にいてもより面白い役で舞台に貢献したいと願うようになっていく。そして『真夏の夜の夢』のパックや『ロミオとジュリエット』のマキューシオといった道化的な役柄にも果敢に挑んでいく。
「だからどちらかといえば、僕は正統派な王子というよりドゥミ・キャラクテールに近いのかもしれません。もちろん王子役を演じることも可能ですけど、それだけをずっと踊れと言われたらどうしても飽きてしまう。僕は......、たとえば今回日本で上演する『ナポリ』のジェンナロのように、陽気で、等身大で、ふだんの自分を生かして観客を喜ばせることのできる飾り気のない役柄を演じるのが好きなんです。それになにも王子に扮して空高く優雅なダブル・トゥールを披露することだけが、男性ダンサーの使命ではないですからね(笑)。僕は以前80歳の誕生日にコッペリウスを踊ったキャラクター・アーティストと共演したことがあるのですけど、彼は彼にしかできない踊りで観客を存分に沸かせていた。僕もいずれそういうダンサーになれればと思います」
 とはいえ、それは遠い未来のこと。今現在35歳の彼は、バランシンからフォーサイスからブルノンヴィルまで、その軸のぶれないしなやかなテクニックで、すべてを一陣の春風のように軽やかに踊りこなしてみせる。なかでも『ナポリ』や『ラ・シルフィード』といった作品への評価は地元でも高く、今ではバレエ団屈指のブルノンヴィル・ダンサーとして名をはせている。
「僕の意見では、ブルノンヴィル作品では『脚がリズムで腕がメロディ』。このふたつをうまい具合にあわせて、一曲の華麗な舞を奏でていくんです。もちろん、途中で音楽が途切れてしまうことがあってはなりません。だから大きなジャンプでいつ着地して、その直後の短いフレーズにどれだけの数のバッテリーを詰めるか、途中に妙な間が空いてしまわないように、すべてを事前に計算しておく必要があります。またさらにブルノンヴィルを踊るダンサーは『この踊りなら私にもできそう』と観客に思わせるほど平易に踊って見せなくてはなりません。これはとても難しいことですけど、成功すると、観客は自分たちもパーティーの一部に参加できたような高揚感を持って劇場を後にすることができます。日本のお客さんにも、そのような気持ちをお届けできれば嬉しいですね」
 『ナポリ』第一幕----まるで観客に大きな花束を授けるかのごとき華やかなジュテで舞台に登場するトマス。日本の観客がその花束の馨しさにむせて至福の心地よさのなか、劇場を後にすることを願いたい。


岩城京子(演劇・舞踊ライター)
photo:David Amzallag

 デンマーク・ロイヤル・バレエ団、9年ぶりの日本公演初日まで、いよいよ20日を切りました。日本側でも着々と公演準備が進んでいますが、デンマークからは今日とても立派な日本ツアー手帳(?)が届きました。
 このツアー手帳には、来日するダンサー、スタッフのリスト、スケジュールから、日本における注意事項やショッピング情報まで、ガイドブックさながらの充実した内容が掲載されています。
 例えば、「日本の水道水はきれいです。少し塩素のにおいがしますが、問題なく飲めます」、「薬屋さんは、街のあちこちにあります。」、「洋服は春先のもので。傘も忘れず」などなど、初めて日本を訪れるメンバーが困らないように、さまざまな事柄について丁寧に解説してあるのです。

DSC05367.JPG
DSC05368.JPG
 この立派な手帳を手に来日するメンバーは約140名。その中のひとり、「ナポリ」で主演するティナ・ホイルンドのインタビューをお届けします。

●ティナ・ホイルンド インタビュー

 ひらひらしたよそ行きのワンピースを着せられ、痛さで目尻が吊り上がるほど髪を梳かされ、たいして興味も湧かぬ芝居に両親に連れて行かれたティナ・ホイルンド。当時5歳。少女は「あーあ」と生あくびを噛み殺しながら、舞台の大半をぼんやり眺めていた。だがもうすぐ芝居が大団円を迎え、ようやく劇場という名の牢獄から開放されると思った終幕間際の数分。彼女はとつぜん電気ショックを受けたかのように客席で跳ねおきる。目に飛びこんできたのは、自分と同年代の子供たちが陽気に舞い踊る小さなバレエ場面。「一目でこれが私のやりたいことだとわかった」少女は、天啓にうたれたかのごとき確信を持って翌日から「バレエを習わせて欲しい」と渋る母親を口説きはじめる。習わせて、ダメ、習わせて、ダメ。ようやく母親からイエスの答が帰ってきたのは説得開始後、一年後。少女は6歳にして「完全に自分の意志で」バレエの世界へ足を踏み入れた。
09-04.25iwaki01.jpg「だからいざバレエを習いはじめて、途中でいろいろと大変な出来事に遭遇して、まわりの人間に『そんなに大変なら他のことをやったらどう?』と心配されたときもあったけれど、私はいつもこう答えてきた。『心配しなくていいわ、これは私が自己決断で選んだ人生だから』って。間違いなく私は、かなり幼いときから強い意志を持って生きてきた」
 この強靱な個人規範はその後も揺らぐことなく、彼女はスター街道をまっすぐ迷うことなく進んできた。だが当人はスターになりたいと思ったことは「一度もない」と言いきる。5歳でバレエという芸術表現に惚れ込んでしまったそのときから、彼女は、名声や権力といった利己主義にかぶれることなく、ただただ無償の畏愛をこの芸術に注ぎこんできたのだ。
「なぜならバレエという芸術表現は、私一人よりもずっと偉大だから。私なんてバレエの歴史からみたら、たった5分ほどの芥子粒のような存在でしかないから。だから私は子供のときから、この素晴らしいアート−フォームに、小さくともなんらかのかたちで貢献できれば、それに勝る喜びはないと思ってきた。それに......これは確実な真理だと思うのだけど、ダンサーが舞台上で『私を見て!』というエゴイスティックな意識を持つほど、観客は逆に引いてしまうもの。ダンサーは誰であれ舞台上では、ある種の謙虚さを持つべき」
 この言葉どおり、彼女は舞台に過剰な自己主張を持ち込まないよう務める。ただ『ドン・キホーテ』のキトリ、『ジゼル』のミルタ、あるいは今回日本で披露する『ナポリ』のテレジーナ、といった得意とする役柄をいくつかならべてみると、彼女が舞台上で自分らしくいられる役柄が、どのようなタイプのものかは自然とわかってくる。凛々しく、堂々と、主張のある女性。砂糖菓子色のチュチュを着たお姫様よりも、彼女はこうした役柄を愛するのだろう。
「確かに、私は強い役を振られることが多い。そしてそれはおそらく、私自身かなり強い人間だから。特にテレジーナに関しては、自分の素の性格を利用するかたちで役柄に挑めているように思う。たとえば彼女は非常に地に足がついた思考の持ち主で、気性が激しくて、何より強い意志を持って恋人を愛する。自分の愛への信念を貫くために、戦いぬく強さを持っている。私自身、彼女のこの生き方には心から共感する。だからこそ10年以上踊りつづけてきても飽きることがないのだと思う」 人生を賭してバレエへの一途な愛を追求してきたティナ・ホイルンド。その誠実なプロフェッショナリズムに、人は心を打たれるはずだ。


岩城京子(演劇・舞踊ライター)
photo:David Amzallag

ちょっと間が空いてしまいましたが、岩城京子さんのコペンハーゲン取材第4弾は、「ナポリ」ジェンナーロ役のティム・マティアキス。興味深いエピソード満載のインタビュー、どうぞご一読ください!



●ティム・マティアキス インタビュー

 質問をひとつぽんと投げる。......と、予想だにしなかった沈黙。そして数秒間の黙考ののち、知性と経験からじっくりと考察を重ねた実のある哲学を返してくる。
「より広く視野を持つことにで、より深くこの職業を掘り下げていける」
「心の疲弊は身体の疲弊を招く。だから心にこそ休息のときが必要」
 勤勉実直なスウェーデン人と、熱血漢で分析癖のあるギリシャ人の血。その双方を両親から半々に受け継いだティム・マティアキスは、見事にこの水と油ほどに対極的な性質を自分のなかで共存させている。スカンジナビア人そのものといえるやんわり柔和な物腰で話を進めたかと思えば、たぎる熱意でロジックを極めるギリシャ人の一徹さを垣間見せる。彼自身「いつでも両親双方の血が僕のなかに流れていることを意識させられます。特に物事をとことんまで考え抜こうとする分析癖が出てくるたびに、哲学論議を戦わせていたギリシャの祖先のことを考えずにはいられません」と笑う。
09-04.21iwaki01.jpg
 二つの祖国それぞれでバレエの第一歩を習得したのち、16歳でスウェーデン王立バレエ学校に入学。3年後には同バレエ団に入団し、ソリストとして活躍する。だが「より広い世界を見たい」と思い立った彼は、20代半ばで、英国ロイヤルバレエ団への移籍を決意。そのときの想い出を聞けば「人生の最良のときであり最悪のとき」との返答。世界屈指のバレエ団で、至福(ギエムなどの芸術家と同じ稽古場にいて学べる素晴らしさ)と苦悩(物価高のロンドンでは朝10時から夜11時まで毎日働いてもアパートひとつ借りられない!) の激動の日々を過ごしたという。ただ英国での生活が3年ほどたったある日「いくらバレエが好きでも、このままでは生活が立ちゆかなくなる」と客観的な自己分析を施し、より経済的保障がなされ、時間的にも余裕のある、ここデンマークにて04年から踊りはじめる。この決断は功を奏し、いまではバレエダンサーという職業の可能性に対し「日々喜びを感じて」過ごしているという。
09-04.21iwaki02.jpg「バレエダンサーという職業のすべてを一日で知ることは不可能。とても複雑な職業です。でもだからこそ心を開いてさえいれば、どこまでも探求していくことができる。ムーヴメントを、芸術性を、舞台上の時間の使い方を、観客の誰も気づかないような小さなディテールを、どこまでもどこまでも追求していける。そしてそれが今はとても楽しい」
 ただ少しばかり皮肉なことに......、この沈思黙考型な性格に反し彼は今までその俊敏な身体性を買われ、『白鳥の湖』の道化、『ラ・バヤデール』のブロンズ・アイドル、といったテクニック重視の役柄を多くあてがわれてきた。
「だから僕の魂と身体は、別々の言語を話すんですよ(笑)」
 と、自分でそのアンヴィバレントな性質を茶化してみせる。だが今後は、この魂と身体のすりあわせ作業を進めて、より「演技重視で柔和な役がら」を多く踊りたいと話す。そんな彼が近年踊ることを楽しみにしているのが日本で披露する『ナポリ』のジェンナロ。ジャンプやターンのエネルギー放射で観客を圧倒するのではなく「観客をぐっと自分の内に招き入れるような踊りを構築したい」と意気込む。
「この役は僕にとって巨大な挑戦。特に1幕後半から2幕にかけての、喪失感を表現するのが難しい。僕らの多くは、自分の視線が宿る最愛の人のために日々呼吸して生きていく。だからその愛する人が突然いなくなってしまったら、僕らの心は空白になる。その圧倒的な喪失感。空虚感。それをどう、感情に呑み込まれすぎることなく表現するか。とても難しい。でも、こうすれば虚無感や喪失感を表現できるという方程式はバレエにはない。自分なりの答を誠実に見つけていきたい」
 会話をひとつも疎かにすることなく、丁寧に言葉を紡いで質問に答えるティム。きっと日本の舞台でも、この彼の熟考型の性格が反映された、周到にパの一つ一つが磨き上げられたダンスが披露されるはずだ。


岩城京子(演劇・舞踊ライター)
photo:David Amzallag

岩城京子さんのコペンハーゲン取材第4弾は、今回の日本公演でもっとも注目を集めているといえる。セバスティアン・クロボーのインタビュー。弱冠19歳でロミオ役に抜擢されたバレエ団の新星です。芸術監督のヒュッベはセバスティアンについて「セバスティアンはすばらしい謙虚さを身につけており、一番の長所はスタジオで役柄に取り組むときや観客の前で踊る時に、自らの心を素直に開くところです」と紹介しています。岩城さんのインタビューからは、写真から受ける印象とはちょっと違う、骨太なセバスティアンの素顔が垣間見えます。


●セバスティアン・クロボー インタビュー

09-04.04iwaki01.jpg 日本の感覚でいえば、まだ大学を出たての22歳。しかも父親が元バレエ団の芸術監督であり、母親が現バレエミストレスときたら「どれだけ甘やかされたドラ息子が現れるのだろう...」と妙にうがった考えを持ってしまう。だが取材室にさらりと現れたセバスティアン・クロボーは、白亜の宮殿で首まで贅沢に浸かり育てられたボンボンというより、鞄ひとつで世界を駆けまわるタフな旅人の匂いがする。彼にそう告げるとハハと軽く一笑いしたあと「まあ、子供のころから両親について世界中を旅してきましたから。その分析はあながち間違いじゃない。僕は旅人(笑)」という答え。実に気取りがない。
 「ハンドボール選手かテニスプレイヤーになりたかった」というスポーツ大好きな少年期を過ごしたのち、13歳で初めて「家のなかにあたりまえのようにあったバレエ」に目を向けたセバスティアン。血は争えないのか、たった6年後には振付家ジョン・ノイマイヤーに抜擢されて今回日本でも披露する『ロミオとジュリエット』の主役を務める。当時はまだコールドの一員で19歳。さぞかし緊張したのではと問えば「緊張もしましたが、それ以上に楽しめました。それにそもそも人生は挑戦を受け入れることですから」と力強くまっすぐに即答。リスクを怖れず自力で道を切り拓いて来た人間でなければ言葉にできない、成熟した哲学が垣間見える。

09-04.04iwaki02.jpg
 そんな彼も今年1月にようやくソリストに昇進。前述のロミオをはじめ『オネーギン』のレンスキーなど数々の大役を早くもこなしている。
「ロマンティック、ポエティック、それに 何よりドラマティック!」。
 それが今の彼が愛する役柄の多くに、当てはまる共通点だという。
「僕にとっては子供のころから演技をすることはとても自然なことでした。だから他のバレエ団で、一に踊りで、二にマイム、といった意識が見てとれる舞台に出くわすとどうしても悲しくなる。僕にとっては踊りとマイム、あるいは踊りと演技は切っても切り離せないもの。というよりむしろ僕らプロのダンサーは、誰もがある一定水準の踊りをこなすことができるわけですから。演技の力量で、はじめて大きな差が出ると言える。どれだけパーソナルな想いを、その役柄に投影できるかで踊りの精度が変わってくるわけです。もちろんテクニックも疎かにしてはいけませんけど、どれほどテクニックが凄くても人は感心するだけで感動はしません」
 では、日本で上演するロミオに関してどんな演技を考えているのかと問えば、その後10分、役柄に取り憑かれたかのように演技分析をとうとうと繰り広げていく。
「まずロミオはとても若い。そして恋愛経験はあるけど、本物の愛に関してはまだ経験が浅い。ジュリエットが初めての本物の愛。両親とは少し疎遠。だから親に依存しているというより、それなりに自分の人生の手綱を握っている。けれどティボルトほどは成熟していない。そのティボルトを殺してしまうシーンは僕が大好きなシーンのひとつ。あそこから、彼の世界が崩れ始める。友達が殺され、殺人に手を染め、義理の母が発狂し、街から追放されてしまう。あそこで彼は自殺すら考えたはず。でも同時に彼にはジュリエットがいるから、死ぬことができない。たったの4日間で、彼は男の子から本物の男に成長するんです。それはもうものすごい感情の嵐......ってごめんなさい、なんだか話している自分が熱くなってきちゃいました(笑)」
 なるほど、彼が自他ともに認めるドラマティック・ダンサーであることに納得。のほほんと暢気なお坊ちゃんと高をくくっていると火傷をする、熱く激しい情動が彼の心にたぎっている。


岩城京子(演劇・舞踊ライター)
photo:David Amzallag

岩城京子さんのコペンハーゲン取材vol.3は、ジュリエットを演じる、クリスティーナ・ミシャネックのインタビュー。
彼女の魅力を芸術監督のニコライ・ヒュッベは「クリスティーナの踊りは美的感覚に溢れており、彼女の舞台という一瞬にかける強い表現はとても貴重な体験となるでしょう。彼女はすばらしい演技力と愛らしい叙情性を備えています」と語っていますが、このインタビューからもそんな彼女の個性が窺えます。


●クリスティーナ・ミシャネック インタビュー

09-03.27iwaki01.jpg 薔薇色がかったミルク色の肌に、天使のような柔らかな表情をのせて、ころころと子供のようによく笑う24歳のクリスティーナ・ミシャネック。たっぷりとした栗色の睫毛におおわれた瞳をまっすぐこちらに向け「私は本当に幸せな少女だった。バレリーナになる前はお姫様になりたいと思っていたぐらい」と彼女が囁くと、その愛らしい願いがそれほど非現実的なことには思えなくなる。世界中の光を独り占めしてまどろんでいるかのように、彼女のまわりには幸せな薫香が漂っているのだ。聞けば昨年、同じくダンサーである最愛の人と結婚したばかりだとか。しかも同時期に彼女は、バレエ団内でソリストに昇格も果たしている。幸せの風で心が満帆になるのもうなずける。
「しかも昨年には、私の最も愛する役柄のひとつ『ラ・シルフィード』の主役を初めて踊ることができた。もちろん一度踊っただけでは、シルフィードのような難しい役柄を完璧に踊りこなすことはできないけれど。ブルノンヴィルの物語バレエが大好きな私にとっては、とても素晴らしい体験だった」
 羽根のように軽く舞うシルフィードは、確かに彼女の霞のような雰囲気によく似合う。しかも彼女は芸術監督が「ものすごい集中力の持ち主」と絶賛するように、ひとたび舞台にあがると、日々の世俗的な匂いをすべて取りはらって、完璧な夢物語を観客に届けてみせる。クリスティーナ自身「いったん役柄に没頭すると、普段はできないようなテクニックさえこなしているのよ」と笑う。
「今度、日本で踊るジュリエットにしてもそう。彼女はいま恋に落ちていて、魔法がかった時を過ごしているわけだから、そりゃもちろん空に浮かぶような素晴らしいバランスをこなせるのよ。でも舞台からおりてリハーサル室で『はい、じゃあポアントに立ってバランス!』と言われると、私は途端にできなくなる(笑)。なぜなのかは分からないのだけど、本当にそうなの。不思議でしょう。だからどうやら私がうまく踊るためには、舞台に流れている空気に染まることが大切みたい」

09-03.27iwaki02.jpg
 では、ノイマイヤー版の『ロミオとジュリエット』に流れている空気はどんなものかと問うと「愛、そして憎しみと政治」が漂っているという答え。
「1幕では、ロミオとジュリエットの世界は完璧。この世界にはお互いふたりしかいなくて、その他には何も必要がない。目の前にいるロミオを見ると、彼の目を通して自分を見ているのか、彼自身を見ているのか分からなくなる。それぐらい、ふたりはひとり。けれど2幕になると、代々続く家同士の憎しみと政治闘争がふたりの純愛を侵しはじめる。外界が彼らの愛に干渉しはじめる。つまりノイマイヤーはここで愛を必要以上に美化せずに、現実の空気感もきちんと入れ込んだ。だからこそ、とてもリアルで人間的な物語に仕上がっている、すばらしいバレエなのだと思う」
 ジュリエットを踊り終えたあとは「あまりにも役柄に没頭しすぎて、体中が痣だらけになっていることもある」と愛らしく笑うクリスティーナ。無垢で、お転婆で、純心で、一途な、とてもジュリエットらしいジュリエットに出逢えそうだ。


岩城京子(演劇・舞踊ライター)
photo:David Amzallag

お待たせしました!
岩城京子さんがコペンハーゲンで取材してきてくださった、ダンサーたちのインタビュー連絡がいよいよスタートします!
初回は、「ロミオとジュリエット」に主演するウルリック・ビヤケァー。「ロミオとジュリエット」の舞台写真を見たときに、"ポートレートよりずっと美しい青年なのでは・・・"と密かに思っていたのですが、今回インタビュー写真が届いたときにそれを確信しました。そして、岩城さんの原稿を読んで、彼の舞台がますます楽しみになったのでした。


●ウルリック・ビヤケァー インタビュー

09-03.20iwaki02.jpgプロコフィエフの奏でる至愛の音色があたたかな真昼の稽古場に流れる。ロミオに扮するは弱冠24歳のウルリック・ビヤケァー。芸術監督ニコライ・ヒュッベが「素晴らしく清潔で細やかなテクニックの持ち主」と絶賛するとおり、一瞬も表情が失せることのない手先足先で音楽をつむぎ、かの有名な寝室のパ・ド・ドゥを舞う。「姉の付き添いでオーディションに行ったら自分が受かってしまった」という天のいたずらから、6歳でデンマーク・ロイヤル・バレエ学校に入学して以後18年。彼はコペンハーゲンにある劇場を一度も離れたことがない。だが「十代のときは好奇心から友達数人と連れだって夏ごとに、パリ・オペラ座バレエ学校や、ロイヤル・バレエ・スクール、ニューヨークのSAB(スクール・オブ・アメリカン・バレエ)などに短期レッスンを受けにいった」と語るように、よく見ると彼の踊りでは様々なスタイルの長所が渾然一体となっている。
 また尊敬するダンサーとしてマニュエル・ルグリやアリーナ・コジョカルの名をあげるように、彼は「テクニックと知力と音楽性を融合させること」こそが優れたダンサーの条件だと語る。
「もう少し説明を加えるなら、良いダンサーがより良いダンサーになるためには"ダンスしつづけること"が大切----。なにを馬鹿みたいに当たり前のことを、と思うかもしれないけれど。知性を生かしつつ、音楽と楽しく戯れながら、ダンスしつづけることのできる踊り手は本当に一握りしかいない。たいがいの踊り手は美しいポーズを完璧にこなすことばかりに躍起になって、音楽と戯れてダンスする、という感覚を忘れてしまう。でもよく訓練されたテクニックで美しいポーズをこなせることは、バレエダンサーとしての最低条件。問題はそこから先、どう自分らしい踊りを作っていけるかでダンサーの質は決まる」

09-03.20iwaki01.jpg
 自分らしい踊りを作るためには「客観性」が大切だ、とも彼は続ける。
「ダンスという行為は、とてもパーソナルな感情から生まれる。だからこそ誰もが、自分の信念に基づいて踊るべき。そうしなければ観客に踊りの心が届かない。けれどそれと同時に、2000人の観客を納得させるだけの客観的な分析力も必要。僕は自分の長所も短所も、とてもクリアに見ているつもり」
 それでは日本で踊るロミオについて「あなたならではのパーソナルな役柄分析を教えてください」と問うと、とても興味深いアナライズが返ってきた。『ロミオとジュリエット』といえば禁断の愛の代名詞。だが彼はこれを「自由な愛」だと逆説的に発言する。
「ロミオのなかにはつねに"自由"への渇望がある。だから彼は、貴族的で厳格でキャピレットそのものといえるロザラインとは不幸せな恋しか味わえず、自由な魂そのものであるジュリエットに一目惚れしてしまう。彼にとってはジュリエットこそが、自由への扉なんです。けれど彼はティボルトを殺すことで、みずからその自由な愛を壊してしまう。そして大きな悲しみに晒される。けどそれと同時に、彼ははじめてジュリエットと一夜を過ごし幸福感も味わう。だからあの寝室のパ・ド・ドゥでは、悲しみと喜び、別れと絆、本当に一言では言い表せない美しい感情が紡がれているんです」
 再び稽古場−−。目の前で、寝室のパ・ド・ドゥが踊られる。最後の別れ際、今生の別れを告げるかのように、彼はえもいわれぬ熱を秘めた口吻をジュリエットに授ける。ブラボー、あまりの熱演に稽古場から声があがる。東京の劇場でも、このとても大胆な年若きロミオに喝采が送られることを期待したい。


岩城京子(演劇・舞踊ライター)
photo:David Amzallag

トマス・ルンド(「ナポリ」5/15,17主演)

09-03.18.jpg◇生年月日:1974年9月13日

◇出身地:コペンハーゲン

◇身長:174cm


◇ジェンナロの役作りについて。
 私は小さな子どもの頃から「ロミオとジュリエット」と「ナポリ」の両作品で踊ってきています。この2作品と共に成長してきたと言っても過言ではないので、ほとんどの男性パートを暗記していると言えるほどです。アーティストとして向上しながら、同じ役柄を何年も踊り続けるというのは、私にとって絶え間なく成長し続けることでもあります。
こうして繰り返し踊ることは、長い期間に渡ってそれぞれの役柄において、とても詳細な点まで掘り下げる機会を与えてくれました。私は毎年、年を重ねるにつれ、演じる役柄に新しい視点を加えるようにしています。
 どの役作りにおいても、想像力と人間の本質についてよく理解していることが一番大事だと私は信じています。私は実際に日常生活を観察して舞台での役作りに反映させています。そのすることによって現実世界を舞台に反映させることができますし、より真実味のある役柄を観客の皆さんのために演じることができるからです。また実際に、私は何度もナポリを訪れており、そのことでジェンナロという役柄の背景を理解する有益な情報を得ることができました。

◇「ナポリ」の魅力。
ダンスのテクニックと、真実味のある物語の創造こそが観客を一番惹きつけるのではないでしょうか?観客の皆さんに最高の経験をしていただくには、まず皆さんが舞台上の役柄と心が通じ合える必要があります。いかに観客の皆さんを惹きつけ、気持ちを動かすかは、芸術を語るにあたってしばしば問題になる点ですが...。

◇デンマーク・ロイヤル・バレエ団の魅力。
デンマーク・ロイヤル・バレエ団はストーリー・テリングの点において、世界でも素晴らしいバレエ団の一つとなることを目指していると思います。観客の皆さんが心を通わせることができる役柄を創造していることなどがその例として挙げられます。私たちは全ての世代を代表する人々が舞台上に集まった、一つの大きな家族でもあります。実際に、多くのダンサーが年齢を重ねながら、より観客の皆さんに納得していただけるような表現能力を身につけ、同じ作品を何度も踊ってきています。

◇日本公演への抱負と日本のバレエ・ファンへのメッセージ。
今回の日本訪問は私にとって11回目となります。日本の食事も大好きですし、日本を訪れるたびにその文化について知ることができるため、再び訪れるのがより楽しみでなりません。今回の日本訪問がこれまでと同様に素晴らしいものになると期待しています。


09-03.18-1.jpg
「ドン・キホーテ」バジル

ディアナ・クニ(「ナポリ」5/16主演)

09-03.11-00.jpg◇生年月日:1975年3月27日

◇出身地:デンマーク・コペンハーゲン

◇身長:160cm


◇テレシーナの役作りについて。
テレシーナを演じることができて本当にうれしいです。彼女はとても芯の強い女性であると同時にとても寛大で、ジェンナロと愛し合っている幸せな女性でもあります。
テレシーナの大きな変化は第2幕、そこで彼女は彼女自身がかつて感じているとも思わなかった気持ちを感じることになるのです。第1幕と第3幕では、できる限り地に足が着いた人間になりきりたいと思っていますし、第2幕では、彼女が海王ゴルフォを惹きつける魅力を表現していきたいと思っています。
そして何と言ってもテレシーナという役柄を心を込めて演じたいと思っています。

◇「ナポリ」の魅力。
ナポリは特別な雰囲気を持った作品です。それは愛であったり、とても強い信じる心であったり...。観客の皆さんに幸せな気持ちで劇場を後にしていただける作品だと思いますし、日本の皆さんにもそういった楽しく幸せな経験をしていただくために私は何でもするつもりです。

◇デンマーク・ロイヤル・バレエ団の魅力。
デンマーク・ロイヤル・バレエ団はとても人間的なカンパニーです。それはやはりブルノンヴィルのバレエからくるものではないでしょうか。彼のバレエはとてもシンプルで、人間的でとてもナチュラルなんです。加えて、バレエ団では小さな子供から、年配のキャラクター・ダンサーまで、多くの世代が一緒に活躍しています。それに私たちにはブルノンヴィル・バレエ以外にもチャレンジしがいのあるレパートリーがたくさんありますからね。

◇日本公演への抱負と日本のバレエ・ファンへのメッセージ。
日本を訪れるのをとても楽しみにしています。私にとってとても素晴らしい経験になると思いますし、日本の観客の皆さんにも「ロミオとジュリエット」「ナポリ」の両方を楽しんでいただきたいですね。


09-03.11-01.jpg
「ドン・キホーテ」のキトリ

ティム・マティアキス(「ナポリ」5/16主演)

09-03.05-00.jpg◇生年月日:1978年12月6日

◇出身地:スウェーデン生まれ。
スウェーデンとギリシャで育ちました。

◇身長:172cm

◇ジェンナロの役作りについて。
役柄を創り上げる作業はいつもワクワクします。今度日本公演で僕が演じる「ナポリ」のジェンナロを例にすると、まず貧しい漁師であり、また深く恋に落ちている幸せなイタリア人男性であるという、彼の役柄を形成する明確な情報があるわけです。僕はこういった情報から、さらにその役柄を掘り下げることが好きなんです。ジェンナロのリハーサルを行った際に、最初に捉えたイメージより、彼がより寛大で、詩的な人物であると僕の目には映りました。おそらくそれは、僕の性格が僕の名前(マティアキス)から連想されるイメージよりも穏やかな性格だからかもしれませんが...。
僕は、演じるキャラクターの中に自分自身を見つけることができなければ、舞台上で誠実に演じることができないと信じています。舞台上では誠実さ以上に大切なことはないと僕は思います。それが、人々に自分自身を信じてもらうこと、その演じる役柄をも信じてもらうことにつながる唯一の方法だからです。だから僕はイタリアの漁師の陽気な気性とテレシーナへの一途な愛、そして失った彼女を追い求めるという絶望、これを詩的な雰囲気で表現するということを守り続けています。それがいろいろな異なる感情を同時に持ち合わせている人間というものだと思っているので。
『ナポリ』全幕を演じたのは少し前のことなので、また全てのプロセスに取り組み、役柄や踊りからさらに何がみつけられるのか楽しみです。ニコライ・ヒュッベと一緒に仕事をするのはきっとすばらしい経験になることでしょう。芸術監督であると同時にかつて僕と同じ役柄を踊ったダンサーでもあるので、きっと多くの情報を与えてくれると思います。僕にとって準備を入念に行うことは、一番重要な要素です。舞台へ上がる前に、テクニック、役柄について探求すればするほどためらわずに自由に演じることができますし、また実際にステージに全力を持って飛び込み、その役柄として舞台で生きることができます。

09-03.05-01.jpg

「ナポリ」のジェンナロ


◇「ナポリ」の魅力。
僕にとって、自分自身を観客の立場に置くことは難しいです。というのも、純粋に舞台を楽しむため、感動するためというより、勉強しにいく気持ちで観に行くことが多いからです。でも観客の皆さんには、それがライブで行われる舞台であること、皆さんの目の前で実際に行われるという点が魅力となっているのではと思っています。その性質上、すべての舞台は以前のものとは異なるはずですし、1世紀の間繰り返し上演されているレパートリーにもかかわらず、観客の皆さんを再び劇場へ向かわせるのはダンサーそれぞれの役柄の解釈ではないでしょうか。もちろん身体的にも新しいアイデアや現代の振付家の新しい表現方法なども魅力的なポイントだと思います。もしくは単純に踊るというのは人間の遺伝子の中に組み込まれているものだから、踊れなくても見たいと思うのではないでしょうか。

◇デンマーク・ロイヤル・バレエ団の魅力。
デンマーク・ロイヤル・バレエ団はみなさんご存知の通り、とても長い伝統を持ったカンパニーです。外国人として訪れると、この伝統について気づかされます。とはいえ、強制的にではありませんが。バレエ団のダンサーたちは付属のバレエ学校で教育を受けていますし、キャラクターダンサーたちはこの劇場で長年働いてきています。指導者の方々もここの伝統を愛し、まず第一に学んでほしいと思っているのです。そしてその伝統を味わうことでゆっくり恋に落ちていき、そして最後にはそれを引き継ぐことになるのですが...。
デンマーク・ロイヤル・バレエ団はその立場に甘んじることはありません。素晴らしい振付家たちを招き、新しい作品を生み出していますし、それが踊りの限界を次世代へと広げると同時に世界中の多岐に渡るレパートリーとなっているのです。

◇日本公演への抱負と日本のバレエ・ファンへのメッセージ。
今回の日本ツアーが僕にとって初めての日本訪問になります。今まで所属した2つのバレエ団(スウェーデン・ロイヤル・バレエ団、英国ロイヤル・バレエ団)では、僕が入団した際にはちょうど日本公演を終えたところか、僕の退団後すぐに出発したといった感じだったので。そのため、日本はずっと訪れたいと思っていた国でした。高度な先進技術で知られている国ですが、その文化、宗教、料理、お茶、そして私たちが生きる現代社会においての役割について興味があります。日本滞在中にはすべてを経験してみたいと思っています、できればカラオケにも行ってみたいですね。
日本のバレエ・ファンのみなさんについては、素晴らしいことしか聞いたことがありません。皆さんのバレエへの愛と情熱は世界でも良く知られています。日本へ行くのが今から待ちきれません、世界に知られる皆さんのバレエへの情熱と同じように私たちを迎えていただければと思っています。


09-03.05-02.jpg
「エチュード」のエトワール

ティナ・ホイルンド(「ナポリ」5/15,17主演)

09-02.25-00.jpg◇生年月日:1972年12月16日

◇出身地:デンマーク・コペンハーゲン

◇身長:165cm


◇テレシーナの役作りについて。
テレシーナの性格はとても明快です。彼女はとても芯が強く、感情の起伏が激しく、地に足がついた性格であり、ジェンナロと深い恋に落ちています。また、彼女は神への深い信仰を持っています。私はこれらのテレシーナの特徴を私自身の性格から見つけ出し、役柄に反映させたいと思っています。
(ジェンナロを踊る)トマスとはこれまでにも多くの作品で共演してきましたが、日本公演の前も綿密なリハーサルを行って日本に向かいます。

◇「ナポリ」の魅力。
きっと皆さんはこの物語(「ナポリ」)の持つ「信じること」、「希望」、「愛」というロマンティックな側面を楽しんでいただけると思います。そしてきっとダンスのすばらしさに圧倒されのではないでしょうか。

◇デンマーク・ロイヤル・バレエ団の魅力。
デンマーク・ロイヤル・バレエ団は偉大な伝統と多彩なレパートリーを誇るすばらしいカンパニーであるからこそ、私たちは常に挑戦し続けなければなりません。またバレエ団が子供から、経験を積んだキャラクター・ダンサーから成り立っていることも、伝統を守り続けていく責任を与えてくれます。

◇日本公演への抱負と日本のバレエ・ファンへのメッセージ。
日本に行くのがとても楽しみです!これまでも日本ツアーに参加していますが、いつもとっても楽しんでいます。日本の皆さんにも私たちの公演を楽しんでいただきたいです!


09-02.25-02.jpg
「ドン・キホーテ」のキトリ (photo:Henrik Stenberg)

フィムケ・メルバッハ・スロット(「ロミオとジュリエット」5/23主演)

09femke_moelbach_slot.jpg◇生年月日:1978年6月8日

◇出身地:デンマーク

◇身長:168cm


◇ジュリエットの役作りについて。
リハーサルは、まず、小さいグループで踊ることから始めます。ソリストとコール・ド・バレエがそれぞれ異なるスタジオへ入り振付を学び、そしてその2つのグループを合わせて全幕を通してスタジオで稽古を行います。それから舞台へ上がり、衣裳、照明と合わせてリハーサルを行います。今回はとても幸運なことに、「ロミオとジュリエット」の振付家のジョン・ノイマイヤー氏が再びバレエ団を訪れ、最終リハーサルをみてくださったんです。
私は自分が踊る役柄において、直感的に取り組みます。振付と音楽に身をまかせ、自分の役柄を見つけていきます。このような方法を取ると、役柄は私の一部となり、ただ単に"演じている"以上のものになります。また、舞台上では周りのダンサーはもちろん、パートナーからも多くのインスピレーションをうけます。

◇ノイマイヤー版「ロミオとジュリエット」の魅力。
ノイマイヤー版の「ロミオとジュリエット」はそのリアリズムとドラマが多くの人々を引き付けてやまないのでしょう。プロコフィエフの音楽、ユルゲン・ローズによる舞台セット、そしてもちろん振付がユニークな劇場体験へと誘ってくれるのだと思います。

◇デンマーク・ロイヤル・バレエ団の魅力。
バレエ団の伝統とダンサー同士の温かい雰囲気がやはりデンマーク・ロイヤル・バレエ団で踊る楽しさの理由の一つでしょうね。この楽しさというのは、観客の皆さんにも舞台を通じて感じてもらえるものだと思います。

◇日本公演への抱負と日本のバレエ・ファンへのメッセージ。
私は日本食と日本の飲み物が大好きなので、今度のツアーを凄く楽しみにしています。日本のファンの皆さんには、ぜひ私たちの公演を楽しんで、感動していただきたいです。


onegin_4.ashx.jpg
「オネーギン」のオリガ

ウルリック・ビヤケァー(「ロミオとジュリエット」5/23主演)


09.02.10.jpg◇生年月日 1985年9月23日

◇出身地 デンマーク・コペンハーゲン

◇身長 187cm


◇ロミオの役作りについて。
役作りのために、シェイクスピアの原作を読み、またインスピレーションを得るために、過去に上演した際のビデオなども見ました。さらにステージ上のほかのダンサーとの対話の中で役柄を作り上げて生きます。こういったことを役作りの糧にするのです。

◇ノイマイヤー版「ロミオとジュリエット」の魅力。
ジョン・ノイマイヤー「ロミオとジュリエット」は人間の魂のいろいろな側面を描き出した本当に美しいバレエだと僕は思います。そこには技術、感情、演技、心理、そして特別な宇宙のような感情があります。まるで漫画の世界のようです。

◇デンマーク・ロイヤル・バレエ団の魅力。
デンマーク・ロイヤル・バレエ団はとても古いカンパニーです、つまり長い歴史と経験を持つ、大きな組織であるということです。加えて、バレエに対しても人間的なアプローチをもって取り組むので、演劇性や現実性の感覚を私たちの舞台にもたらしていると思います。

◇日本公演への抱負と日本のバレエ・ファンへのメッセージ。
日本を訪れるのをとても楽しみにしています。以前、名古屋に行ったことはありますが、東京や兵庫は今回が初めて。僕自身、日本の文化や人々にとても深い尊敬の念をもっているので、今からとても楽しみにしているんです。多くのすばらしいものが日本からデンマークにきていますが、今回のデンマーク・ロイヤル・バレエ団の公演が、少しでも日本の皆さんが世界にもたらしてくれたインスピレーションへのお返しとなればと心から思っています。


etudes_img_6584.jpg
「エチュード」より

クリスティーナ・ミシャネック(「ロミオとジュリエット」5/22,24主演)

09-02.02.jpg◇生年月日:1984年12月28日

◇出身地:デンマーク・コペンハーゲン

◇身長:172cm


◇ジュリエットの役作りについて。
まず始めに、振付家のノイマイヤーがいかにジュリエットを描いているか捉え、そしてシェイクスピアがいかに彼女を描き出したかを学び、「ロミオとジュリエット」の物語を舞台に反映させるようにしました。そして、想像力を働かせて、彼女自身になりきって踊れるようにしました。
まずは自分が演じるそのキャラクターを愛さなければなりません。さもないと、真実味のある舞台にはなりませんから。特に自分自身が絶対に行わない行動を舞台上で演じる時は...。もし私がその役柄を信じなければ、誰一人信じてくれるはずはないからです。そしてもちろん、私を指導してくださる先生方ともそれぞれの場面の背景となっているものについて意見を交わします。リハーサル・スタジオでのこうした相互対話がとても重要だと思います。

◇ノイマイヤー版「ロミオとジュリエット」の魅力。
第一にそのストーリーです。すばらしいラブストーリーに勝るものはありません。この「ロミオとジュリエット」の物語には、本当の恋に落ちた2人がいて、そして2人を分かつ何らかの障害があり・・・そして、ロミオとジュリエットの愛というのが長年の憎しみや争いに打ち勝つわけです。
第二に、その視覚的な美しさです。舞台セット、動きそして音楽、踊りが一緒になって、あなたの目、耳、心で感じていただけるはずです。

◇デンマーク・ロイヤル・バレエ団の魅力。
デンマーク・ロイヤル・バレエ団は強い個性を持つダンサーが集まったカンパニーです。そのため、私たちはこのような様々な感情を内包する壮大な物語バレエを上演することができるのです。

◇日本公演への抱負と日本のバレエ・ファンへのメッセージ。
初めて、日本を訪れるので、今からとても楽しみにしているんです。これが最後にならなければいいのですけど(笑)。


askepot_03.ashx.jpg
"ASKEPOT"より photo:Martin Mydtskov Rønnep

お待たせしました!
デンマーク・ロイヤル・バレエ団日本公演で主演する8人のダンサーのメール・インタビュー連載をスタートします!
第1回は「ロミオとジュリエット」でロミオを演じるセバスティアン・クロボー。
両親がデンマーク・ロイヤル・バレエ団の前芸術監督フランク・アナセンとバレエ・ミストレスのエヴァ・クロボーという、バレエ界のサラブレットとして生まれたセバスティアンは、入団1年目で振付家ジョン・ノイマイヤーによってロミオに指名されました。その後も着実にキャリアを重ね、階級はコール・ド・バレエながらソリストの役を任されているセバスティアン。今回の日本公演でもっとも注目を集める22歳(!)の新進スターです。


------------------------------------------------------------------------

セバスティアン・クロボー(「ロミオとジュリエット」5/22,24主演)


09-01.26.jpg

◇生年月日 1986年6月23日

◇出身地 デンマーク・コペンハーゲン

◇身長 186cm


◇ロミオの役作りについて。
僕自身をロミオの立場に置き、彼の最後の4日間を生ききるつもりでいます。ロミオはとても若く、僕にとって一番大事なことは観客の皆さんにその若いロミオを理解し、共感していただくことです。2つ目に大事なことは、ロミオとジュリエットが経験する愛と感情の高まりを異なるパ・ド・ドゥで表現することです。そして3つ目は、観客の皆さんに思いがけない方法で感動を与えることです。それは笑っていただくことでもあり、そしてもちろん泣いていただくことでもあります。もし客席からすすり泣きの声を聞くことが出来たのなら、僕の役作りはあっていたのだと思います。

◇ノイマイヤー版「ロミオとジュリエット」の魅力。
僕にとってジョン・ノイマイヤーの『ロミオとジュリエット』は"イチバン"なんです。ストーリーはもちろんのこと、振付からそのドラマ、ユルゲン・ローゼによる舞台セット、衣裳に至るまで、すべて信じられないくらい素晴らしい! ですから、多くの皆さんにこのバレエを観ていただきたいと思っています。

◇デンマーク・ロイヤル・バレエ団の魅力。
素朴さ、気楽さ、そして愛があるカンパニーです。

◇日本公演への抱負と日本のバレエ・ファンへのメッセージ。
僕は何度か日本を訪れたことがあるので、今度のバレエ団の日本ツアーが素晴らしいものになることはわかっています。日本のバレエ・ファンや観客の皆さんのバレエへの愛情や期待がとても高いと知っています。ですから、日本に戻るのが今から待ちきれません!!


NBSについて | プライバシー・ポリシー | お問い合わせ