バイエルン国立歌劇場『魔笛』舞台裏からのビデオメッセージ



 いよいよ9月23日よりバイエルン国立歌劇場『魔笛』の幕があきます。
 すでに公式ホームページでは何度も演出の素晴らしさについて紹介してまいりましたが、今回の上演ではソリストをつとめる歌手にも要注目です。なんと、オペラ界の重鎮マッティ・サルミネン、タミーノ役をつとめるダニエル・ベーレ、パパゲーノ役のミヒャエル・ナジ以外はほとんどが初来日!
 すでにスカラ座、ウィーン国立歌劇場をはじめとする主要な劇場に次々とデビューを重ねているハンナ=エリザベス・ミュラー、次世代のコロラトゥーラ・ソプラノとして評価を高めつつあるブレンダ・ラエなど、若手実力派の歌手が出演するという点に期待されているファンの方も多いのではないでしょうか?
 舞台総稽古(ゲネプロ)の舞台裏から、日本のお客様に主な出演者からのビデオメッセージをお贈りいたします。歌手たちもこの美しいプロダクションを日本のお客様に披露できることを心から楽しみにしているようです。ぜひご覧ください。


■3人の侍女



■タミーノ&パパゲーノ



■パミーナ、夜の女王、パパゲーナ






バイエルン国立歌劇場「魔笛」 9月23日(土祝)のキャスト

キャスト表 | 公演関連情報 2017年9月23日 10:00

ウォルフガング・アマデウス・モーツァルト作曲「魔笛」2幕のジングシュピール
Wolfgang Amadeus Mozart Die Zauberflöte Deutsche Oper in zwei Aufzügen


指揮:アッシャー・フィッシュ
Musikalische Leitung:Asher Fisch

演出:アウグスト・エヴァーディング
Inszenierung:August Everding

改訂演出:ヘルムート・レーベルガー
Neueinstudierung:Helmut Lehberger

美術・衣裳:ユルゲン・ローゼ
Bühne und Kostüme:Jürgen Rose

照明:ミヒャエル・バウアー
Light design:Michael Bauer

振付:ベアーテ・ヴォラック
Choreographie:Beate Vollack

合唱監督:ゼーレン・エックホフ
Chor:Sören Eckhoff



ザラストロ:マッティ・サルミネン
Sarastro:Matti Salminen

タミーノ:ダニエル・ベーレ
Tamino:Daniel Behle

弁者:ヨハン・ロイター
Sprecher:Johan Reuter

夜の女王:ブレンダ・ラエ
Königin der Nacht:Brenda Rae

パミーナ :ハンナ=エリザベス・ミュラー
Pamina:Hanna-Elisabeth Müller

第1の侍女:ヨハンニ・フォン・オオストラム
Erste Dame:Johanni van Oostrum

第2の侍女:ラハエル・ウィルソン
Zweite Dame:Rachael Wilson

第3の侍女:アンナ・ラプコフスカヤ
Dritte Dame:Anna Lapkovskaja

3人の童子:テルツ少年合唱団
Drei Knaben:Solisten des Tölzer Knabenchors 

パパゲーノ:ミヒャエル・ナジ
Papageno:Michael Nagy

パパゲーナ:エルザ・ベノワ
Papagena:Elsa Benoit

モノスタトス:ウルリッヒ・レス
Monostatos:Ulrich Reß 

バイエルン国立管弦楽団:Bayerisches Staatsorchester

バイエルン国立歌劇場合唱団:Chor der Bayerischen Staatsoper

協力:東京バレエ学校





◆上演時間◆

第1幕   Act1    15:00~16:20
 
休憩     Pause   30min
 
第2幕   Act2    16:50~18:15


バイエルン国立歌劇場「タンホイザー」 9月21日(木)のキャスト

キャスト表 | 公演関連情報 2017年9月21日 10:00

リヒャルト・ワーグナー作曲「タンホイザー」全3幕
Richard Wagner Tannhäuser Oper in drei Aufzügen


指揮:キリル・ペトレンコ
Musikalische Leitung:Kirill Petrenko

演出・美術・衣裳・照明: ロメオ・カステルッチ
Inszenierung, Bühne, Kostüme, Licht:Romeo Castellucci

振付:シンディー・ヴァン・アッカー
Choreographie:Cindy van Acker

演出補:シルヴィア・コスタ
Regiemitarbeit:Silvia Costa

ドラマトゥルグ:ピエルサドラ・ディ・マッテオ、マルテ・クラスティング
Dramaturgie:Piersandra di Matteo,  Malte Krasting

映像デザイン:マルコ・ジュスティ
Videodesign und Lichtassistenz:Marco Giusti

合唱監督:ゼーレン・エックホフ
Chor:Sören Eckhoff



領主ヘルマン:ゲオルク・ツェッペンフェルト
Hermann, Landgraf von Thüringen:Georg Zeppenfeld

タンホイザー:クラウス・フロリアン・フォークト
Tannhäuser:Klaus Florian Vogt

 ヴォルフラム・フォン・エッシェンバッハ:マティアス・ゲルネ
Wolfram von Eschenbach:Matthias Goerne

ヴァルター・フォン・フォーゲルヴァイデ:ディーン・パワー
Walther von der Vogelweide:Dean Power

ビッテロルフ:ペーター・ロベルト
Biterolf:Peter Lobert

ハインリッヒ・デア・シュライバー:ウルリッヒ・レス
Heinrich der Schreiber:Ulrich Reß

ラインマル・フォン・ツヴェーター:ラルフ・ルーカス
Reinmar von Zweter:Ralf Lukas

エリーザベト、領主の姪:アンネッテ・ダッシュ
Elisabeth, Nichte des Landgrafen:Annette Dasch

ヴェーヌス:エレーナ・パンクラトヴァ
Venus:Elena Pankratova

羊飼い(声):エルザ・ベノワ
Ein junger Hirt (Stimme):Elsa Benoit

羊飼い(少年):カレ・フォークト
Ein junger Hirt (Szene):Kalle Vogt

4人の小姓:テルツ少年合唱団
Vier Edelknaben:Solisten des Tölzer Knabenchors


バイエルン国立管弦楽団:Bayerisches Staatsorchester

バイエルン国立歌劇場合唱団:Chor der Bayerischen Staatsoper





◆上映時間◆

第1幕   Act1    15:00~16:15
 
休憩     Pause   40min
 
第2幕   Act2    16:55~18:05

休憩     Pause   40min

第3幕   Act3    18:45~19:45


バイエルン国立歌劇場2017年日本公演 開幕記者会見レポート




 9月17日、バイエルン国立歌劇場2017年日本公演開幕記者会見が開催され、ニコラウス・バッハラー総裁はじめ、『タンホイザー』を指揮するキリル・ペトレンコ音楽総監督、さらに『タンホイザー』のメインキャスト、クラウス・フロリアン・フォークト、アンネッテ・ダッシュ、エレーナ・パンクラトヴァ、マティアス・ゲルネらが出席、公演への抱負を語りました。


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 会見が行われたのはペトレンコ指揮、バイエルン国立管弦楽団による特別演奏会の終演直後のこと。「たった今、演奏会を終えたところです」とバッハラー総裁は興奮気味に挨拶し、「前回の日本公演は6年前、2011年のことでしたが、東日本大震災直後の大変な状況の中でも、皆さんは理性的に、集中して、音楽に感動してくださった。音楽が人間にとっていかにポジティブな力を持つかということを、日本の方々と一緒に体験することができたのです」と力強く語りました。


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ニコラウス・バッハラー (バイエルン国立歌劇場総裁)


 ついで、「日本中の皆さんが、彼の来日を楽しみにしていたと聞いています」と、ペトレンコを紹介。通常、インタビューを一切受けないことで知られるだけに、その第一声が注目される中、「人生初の日本ですが、本当に素晴らしい。特に食事が最高に美味しい(笑)」とマエストロは満面の笑み。「今回はモーツァルト、ワーグナーと、私たちが主軸にする作曲家の作品を聴いていただきますが、そこに超一流の歌手たちが加わる。期待を裏切らない公演になると、確信しています」。


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キリル・ペトレンコ (バイエルン国立歌劇場 音楽総監督)


  続いてマイクを渡されたフォークトは、今年5月、本プロダクションでタンホイザー役デビューを飾ったばかり。「私のこの役の日本デビューを体験していただけることを、楽しみにしています」。ダッシュも、日本でエリーザベト役を歌うのは今回が初めて。「日本で、これまでと全く違った役柄を歌えるのが楽しみです」。ヴェーヌス役、エレーナ・パンクラトヴァも「私は今回が3度目の来日。日本の皆さんに、私の新しい役をぜひ聴いていただきたい」。ヴォルフラム役で登場のゲルネは「日本でこのプロダクションのヴォルフラムを歌うことは、自分自身も楽しみ」と、それぞれに公演への思いを語りました。


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クラウス・フロリアン・フォークト (『タンホイザー』タンホイザー役)

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アンネッテ・ダッシュ (『タンホイザー』エリーザベト役)


 質疑応答の場では、この機会に、とペトレンコへ質問が集中。音楽における信条は、と問われると「いちばん大切なのはリハーサル」と回答。「大事にしていることは、リハーサルの段階でオーケストラと一つになること」。また、録音の数が極めて少ないことについて、「ライヴでの演奏のほうがより重要であり、価値があると思うのです」とも。また、なぜインタビューを受けないのか、という質問には、少しはにかむような笑顔を見せ、「理由はいろいろとあるんですが、自分の仕事については語らないほうがいいでしょう。指揮者は、指揮台から音楽を通じて皆さんに語りかけるもの。それに、私の仕事については、なるべく秘密があったほうがいいと思うんです」と、終始穏やかな口調で応じていました。


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マティアス・ゲルネ (『タンホイザー』ヴォルフラム役)

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エレーナ・パンクラトヴァ (『タンホイザー』ヴェーヌス役)


「彼のリハーサルは本当に多くを学ぶことができる」とフォークト。ゲルネも、「ここまで楽譜を精確に読み取り、テキストを読み解く指揮者はいません。『タンホイザー』ではアンサンブルとソリストが一緒に歌う場面が多いけれど、それを実に素晴らしくコーディネートするのです」と賞賛の言葉を寄せていました。


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 ペトレンコ指揮の『タンホイザー』は、いよいよ9月21日(水)に初日を迎えます(NHKホール)。9月23日からは『魔笛』が開幕(アッシャー・フィッシュ指揮、東京文化会館)、いずれも見逃せない舞台です。
(取材・文:加藤智子)





バイエルン国立歌劇場総裁 ニコラウス・バッハラーに聞く!②




いよいよ、6年ぶりとなる日本公演の開幕も近づいてきました!
本拠地ミュンヘンでは98%という、ヨーロッパの他都市と比べても高い観客動員率を誇るバイエルン国立歌劇場。
ニコラウス・バッハラー総裁に、作品や観客へのアプローチ、上演作品の見どころなど、興味深いお話を伺いました。

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--大観光都市と比べても98%は驚くべき集客率ですが、その秘訣はなんだとお考えですか?

 ひとつは、最高水準のオペラを上演してきたという長い伝統。そしてもうひとつは、歌手や指揮者を含めた最高の陣容によって、とても現代的なアプローチをとっている点と言えるでしょう。
 実際に、バイエルン国立歌劇場の観客はすべての年齢層にわたっており、素晴らしい"ミックス"になっています。そして、この観客と特別な絆を築けていていると感じます。彼らは特定の歌手、特定の演目を観に来るのではなく、自分たちの生活の一部になっているから、繰り返し劇場に足を運んでくれているのです。
 マーラーは"伝統とは火を守ることで、灰を崇拝することではない"という言葉を残しましたが、まさにその通りです。ユニークな点は、我々の活動が、ミュンヘン市民の生活の一部になっているのだということでしょう。ミュンヘンは決して大きな都市ではありませんが、劇場はロンドンやパリと同規模です。けれども、彼らのおかげで、いつも劇場は大入りなのです。


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--2008年から総裁を務めていらっしゃいますが、ご自分が変革されたことというと?

 自分が何かを変えたというより、人生というのは発展していくものです。同じように、芸術も少しずつ前に進んでいきます。芸術は感情であり、何かを伝えたい、という欲求です。間違ったアプローチがあるとしたら、芸術というものをただのイベントや飾りものだととらえることでしょう。芸術とは、人間性であり、エトスであり、モラルであり、社会にまつわるものです。何を社会に回帰するのかであって、現実逃避のためにあるのではないのです。
 例えば今回上演する『タンホイザー』は、人間のアイデンティティについての作品です。ワーグナーには哲学的なアプローチがあります。すべてのことが意味をもっていて、我々はその意味についてよく考えねばなりません。美しさのためだけではないのです。そして、それは現在を生きる人々に結びつかなくてはいけないのです。人々はそれが自分の問題とリンクしたときに、心を動かされるのです。


劇場において大事なのは観客です。そして、観客はモーツァルトの時代からやってくるのではないのです


--先ほど"現代的(コンテンポラリー)なアプローチ"、と仰っていましたが、具体的にはどういうことでしょうか。

 これは、何をするかという問題ではなく、むしろ必然と考えています。なぜなら我々は現代に生きているからです。
 劇場は博物館とは違います。(劇場でお見せするのは)いま現在、舞台上でおこっていることなのです。
 望むと望まざるとに関わらず、我々がモーツァルトやモンテヴェルディといったオペラを観に行くとしたら、21世紀の人間としてアプローチします。それを、モーツァルトの時代のやりかたで上演しようというのは、私にとっては完全に無駄で、ばかばかしいことのように思えるのです。

 劇場において大事なのは観客です。そして、観客はモーツァルトの時代からやってくるのではないのです。馬車に乗る代わりに、電気を使い、現代的な思考を持っています。家ではコンピューターを使っています。ですから、『ドン・ジョヴァンニ』や『魔笛』の持っている本質的な意味をとらえて、今日の人々に何を語るべきか考え直さなくてはいけないのです。
 私の考えでは、現代化を避けるということは、単純に不可能なことだと思うのです。なぜなら、その結果、例え美しい舞台ができたとしても、それは空虚なもの...何かの"額縁"に過ぎないからです。
 クラシックか、コンテンポラリーか、という選択肢はないのです。クラシック音楽を奏でたとしても、あなたは現代にいるのですから。時代から転げ落ちることはできないでしょう?

 モーツァルトが作品を作っていた時、彼の音楽はまさにその時代をあらわすものでした。モーツァルトは当時のポップ・スターのような存在だったのです。彼の時代において、彼は非常に「現代的」でした
 『魔笛』はそんな彼の人生そのもののようです。彼はフリーメイソンの一員でした。そして、社会の倫理や色々なことを描いています。我々はこういった点をとらえ、作品自体が虚ろなものにならないようにしなくてはいけません。
 もちろん、作曲家の精神や意図していることを考える時は、題材である名作を台無しにするようなことはできません。『魔笛』の設定を火星にはできないでしょう?
 やらなくてはいけないのは、今日に通じるポイントを探しあてることです。どういったことが現在も重要なのか、まだ解き明かされていない事柄はなにか...。私の仕事は、意味を保ちつつ、18世紀と今日を繋げるコネクションを探すことなのです。


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『魔笛』において最も重要なテーマは、イニシエーションのプロセスなのです


--『魔笛』のお話がでましたが、今回日本で上演されるエヴァーディング版は1978年初演の"決定版"と称されるレパートリー、対してタンホイザーは4か月前に初演したばかりの最新作です。また、歌劇場に最も縁の深いモーツァルトとワーグナーの作品ですが、この2本の見どころをそれぞれお聞かせいただけますか?

 もちろん、見どころはプロダクションすべて、と思っていただけるといいですね!(笑)例えば、一人の歌手が見どころ、というようなことは、我々のコンセプトではないのです。劇場の全体像をお見せしなくては。

 当歌劇場が誇るエヴァーディング版の『魔笛』は長い間上演され続けていますが、今なお、とても"生きた"プロダクションなのです。本当に美しい作品ですので、是非お楽しみいただきたいです。
 『魔笛』という作品では、無邪気な純粋さが、まるで子供のような考え方、自然、それから精神世界と共に、18世紀らしい精神のもとに描かれています。しかしながら、この作品において最も重要なテーマは、イニシエーションのプロセスなのです。2人の若者が自分たちの人生の扉を開いていく。これが『魔笛』の主題なのです。

 そして、今回一緒に『タンホイザー』をご披露できるのを大変うれしく思っているのは、二作品とも同様の主題を持っているからです。『タンホイザー』もまた、一人の人間が自身を見つめる "旅"を描いています。もちろん、今回のタンホイザーでは、ペトレンコとカステルッチのコラボレーションを素晴らしいキャストでお贈りできるのも見どころです。


まるで家に帰ってきたような気持ちにさせてくれる、日本を訪れるのが大好きです


 日本はヨーロッパのオペラに対して、もっとも進んだ国だと思います。この2作品は、特に観客がオペラについて高い見識を持っていらっしゃる国でご披露するのに、もっともふさわしいと思っています。
 ミュンヘンでの公演が多くありますし、オペラのツアーとなると本当に大所帯になりますので、引っ越し公演はなかなか実現しづらいのです。香港、そして今度アメリカに行く予定もありますが、訪れる場所は多くはありません。そのなかで、日本公演は我々にとって長い伝統となっています。
 歌劇場一同、まるで家に帰ってきたような気持にさせてくれる、日本を訪れるのが大好きです。
 前回、2011年のツアーは(東日本大震災の後で)難しい時期の来日となりましたが、この経験は実に心の琴線に触れるものでした。私たちは、いい時だけに訪れるのではなく、日本の皆さまが困難に直面されている時に日本を訪れる、ということが大事だと思ったのです。そして、日本の皆さまに、我々の感謝の気持ちと、絆をお見せしたい、と。
 ですから、多くのカンパニーが日本公演をキャンセルしたあの時期に、絶対に日本に行かなくてはならない、と考えていました。

 今回の来日では、すっかり落ち着きを取り戻された日本を訪れることを、心より楽しみにしております。
 我々の舞台が、日本の皆さまのご期待に沿えることを願っています。


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