【バイエルン国立歌劇場】指揮者アッシャー・フィッシュ インタビュー[2]

インタビュー・レポート 2017年4月15日 12:20



バイエルン国立歌劇場日本公演で『魔笛』の指揮をとるアッシャー・フィッシュ。
この3月、新日本フィルの演奏会のために来日したマエストロにお話をうかがいました。
インタビュー第二弾をおとどけします。



★指揮者フィッシュの目~「『魔笛』にはモーツァルトの気持ちが見えます」



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 指揮者でもありピアニストでもあるマエストロ・フィッシュは、指揮を手がける多くの作曲家のなかでもモーツァルトは特別な存在なのだとか。モーツァルト自身を『魔笛』の登場人物で考えるならパパゲーノ的なキャラクターだったのではないか、と分析。


 「ただ、モーツァルト自身はヒューマニストでもあったので、ザラストロのような人格者の重要性も理解していたのでしょう。ザラストロを好ましい人物にしようとしていることは音楽自体が描いている・・・モーツァルトの気持ちが見えます。」


 指揮者ならではの感性は演出を通したなかにもうかがわれます。


「エヴァーディングは、パミーナ、タミーノ、ザラストロの三重唱<私たちは、もう会えないのですか>(第19曲)を、第2幕の冒頭に移しています。これは音楽的な要素ではなく、ストーリー的に考えられたもので、私もこの方が良いと思っています。モーツァルトがなぜ、19番目にしたのかがわからないくらい(笑)。第19曲の三重唱は、『魔笛』のなかでも一番好きな曲かもしれません。なんともいえない気持ちになって・・ワクワクするんです。」


 "天才的な仕事がされた作品"と惚れ込む『魔笛』、これまでの共演経験をもとに日本公演のキャスティングにも関わったとのこと。歌手たちの魅力を紹介していただきました。


 「ザラストロ役のマッティ・サルミネン! これはもう涙が出るほど嬉しいことです。彼は私に最も影響を与えてくれたバス歌手なんです。つい先日亡くなったクルト・モルとサルミネンの二人は、私にとっては何よりも素晴らしいバス歌手です。経験を重ねたベテラン歌手がステージに立つということは、すごく安心感をもたらすものなんです。サルミネンは別格ですね。彼の場合は、もしかしたらこれで引退ということもあるかもしれないし、特別感はあると思います。
 タミーノ役のダニエル・ベーレは、素晴らしいテノール! フリッツ・ヴンダーリヒ(注1)のような声といわれるベーレの声は、ヴンダーリヒ同様にタミーノにとても合っています。
 パミーナ役のハンナ=エリザベス・ミュラーとは、デビューしたころから知っていて、もう何度も共演しているのですが、共演するたびに大きく成長していることを感じさせられました。素晴らしい声です。
 パパゲーノ役のミヒャエル・ナジは、まさしくグレート・シンガーです。パパゲーノには歌うだけではなく、演技力も要求されますが、彼はとても面白いし声量もとてもあります。今後はもっと大きな役も歌っていくことになるはずです。」
 
 作曲家、演出家、そして歌手たち、すべてに深い愛情を注ぎ込むマエストロのタクトのもと上演される歴史的名プロダクション『魔笛』に、期待が膨らみます。


(取材・文/吉羽尋子)


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(注1)フリッツ・ヴンダーリヒ...1930年生まれのドイツのテノール。2オクターヴを超える声域と輝くような澄んだ声で20世紀最大のテノール・リリコと目されている。故パヴァロッティが歴史上もっとも傑出したテノールとして名を挙げている。



★バイエルン国立歌劇場2017年日本公演 公演の詳細はコチラ>>>



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