ロメオ・カステルッチの語る 新『タンホイザー』~エピソード3「肉欲」


 バイエルン国立歌劇場『タンホイザー』プレミエ、現地での公演は残すところ7月9日のオペラフェスティバルでの上演を残すのみとなりました!日本に上陸するまであと3か月です。


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~ 『タンホイザー』 リハーサル風景 ~


 ミュンヘン現地では全7公演が即完売してしまい、チケットが全く手に入らない状況が続いているとのこと。来シーズンは『タンホイザー』の上演がないため、ペトレンコ指揮の『タンホイザー』を聴けるのは日本公演が最後になってしまう可能性があります!


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~ 『タンホイザー』第1幕より タンホイザー役のフォークト(写真左)、ヴェーヌス役のパンクラトヴァ(写真右) ~


 そんな貴重な『タンホイザー』をよりお楽しみいただけるようにお贈りしております、演出家ロメオ・カステルッチの語る演出コンセプト第3弾!今回は「肉欲」をテーマに語っています(なんだかドキドキするタイトルです)。






(翻訳)
ロメオ・カステルッチの新演出におけるシンボル ~ エピソード3  「肉欲」  

台本を注意深く読めば、ヴェーヌスが象徴しているのは、美や喜びではなく肉欲に対する嫌悪であることはお分かりになるでしょう。
皆さんが舞台上で見つけるのは、皮膚だけ、つまり表層です。
そこに肉体はなく、あるのは皮膚のみ、被覆、窒息。
それは子供時代の窒息のトラウマ。
タンホイザーはこの皮膚から自らを解放し、なにか本質を見つけだそうとします。
タンホイザーの最初の台詞、「もう十分だ!」がキーワード。
つまり彼の肉欲の恐るべき経験を意味しています。
私にはこの糸がワーグナーの中にどのように貫通しているのかが見えます。
美はヴェーヌスの中には存在しないのです。美とは理想であり、実在しないのです。
ワーグナーにとって、美とは手の届かない、到達不可能なものなのです。
一方、エリーザベトは、世俗ではない、神聖な愛のシンボル。
だからこそエリーザベトは、真にエロティックな誘惑を描き出すのです。
エリーザベトが唯一の欲望の対象であるからこそ、彼女は到達不可能な、触れることすらできない人物なのです。
つまりエリーザベトは並外れた、エロティックな欲望の対象なのです。



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