《速報》― 新制作『タンホイザー』始動! リハーサル初日、ミュンヘン現地取材
4月11日(火)、ミュンヘン・バイエルン国立歌劇場のリハーサル室では、
5月21日の初演に向け新制作『タンホイザー』が本格的に始動しようとしていました。
これまで、何度もミーティング、テクニカルの打ち合わせが重ねられてきましたが、主要歌手が集まってのリハーサルは今日が初めて。
朝10時、指揮者ペトレンコはあいにくミュンヘン不在でしたが、関係者が集められた《コンセプト・ミーティング》が始まります。
リハーサル室には、演出のロメオ・カステルッチと彼のチーム(助手のSILVIA COSTA、振付のCINDY VAN ACKERほか)、向かい合うように並べられた椅子に、タンホイザー役のフロリアン・フォークト、ヴェーヌス役のエレーナ・パンクラトヴァらの歌手、そして衣裳、メイク、照明、プロンプターから制作、教育プログラム担当者まで、歌劇場のスタッフが勢ぞろい。
最初に歌劇場のバッハラー総裁からにこやかに歓迎の挨拶があり、「この新しいプロダクションが大変注目されているのを感じています。私にもチケットが欲しいという連絡がたくさん来ていて」と最後は場を和ませました。実際、ミュンヘンでの6公演は、既に全公演ソールド・アウトなのです。
そして、ペトレンコ氏からの、今日は残念ながらこの場にいられないが合流するのを楽しみにしている、というメッセージも伝えられました。
チーム全員の自己紹介が終わった所で、今回の『タンホイザー』をどのように読み解いているか、カステルッチが静かに構想を説明していきます。
「僕のひどい英語でうまく説明できるといいけど...」と言いながら、言葉を探りつつ、演出案も含めて訥々と話すカステルッチ。残念ながら詳細はお伝えできませんが、なかにはキャストにとっても驚きを含むアイディアも...。
最後にカステルッチが「何か質問があれば...」と聞き手に水を向けると、「たくさんあるよ!」と朗らかに声をあげたのは、最前列に座るフォークトでした。さっそくタンホイザー役の心境について、「先ほどおっしゃっていたのは、こういう意味でしょうか」「そう、その通り」などと、お互いの理解を確認しあいます。続いてパンクラトヴァからも、「この幕ではどうですか?」と質問が飛びます。
短い休憩をはさみ、中央に座ったカステルッチがじっと見つめるなか、いよいよリハーサルが始まります。
第一幕、ダンサーたちも舞台装置に見立てられた平台の上にスタンバイ。ヴェーヌスベルクを思わせる背景も用意されています。
このリハーサル室、実は新作の稽古のため、まるまるタンホイザー仕様に調えられているのです。演出や動きの確認などもできるように仮のセットが組まれ、天井にも、とある演出用の装置が吊られていました。(それも本番用とは別にリハーサル用にわざわざ作られたものだとか)
壁の一画にはイメージ・ボードのように装置画が貼られ、舞台装置のミニチュアも置かれて、カステルッチの『タンホイザー』のイメージを伝えています。
ピアノ伴奏にのせて、響き渡るパンクラトヴァとフォークトの歌声。
場面が進み、昨日着いたばかりだという独特のプロップを試すパンクラトヴァとカステルッチからは笑い声も溢れ、初日稽古は和やかな雰囲気でスタートしていきました。
これから初日の開幕に向けて、このリハーサル室で新制作『タンホイザー』が作り上げられていきます!
穏やかな語り口が印象的だった演出家のロメオ・カステルッチ氏。リハーサル開始の速報のために、と恐る恐る写真をお願いすると「僕が生きてここにいるって証明するためにだね(笑)」と快くOKしてくださいました。
背後にあるのが舞台装置のミニチュアです!(たぶん初公開!)
photo:NBS