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[フィレンツェ]『運命の力』現地最新レポート

[フィレンツェ]『運命の力』現地最新レポート


フィレンツェ五月音楽祭では、日本公演に先駆けて、11月23、26、28日に『運命の力』が。そして12月7、9、10、12、14日に『トスカ』が上演されました。
現地から最新レポートと舞台写真が到着しましたので、2回に分けてお届けします。

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 去る11月末、フィレンツェ歌劇場の『運命の力』は全公演チケット完売という盛況だった。
ニコラ・ジョエル演出によるこのプロダクションはチューリッヒ歌劇場で誕生し、フィレンツェでは2007年に上演されているが、ズービン・メータの指揮ということで更にチケット入手が困難になったようだ。ヴェルディが1869年のスカラ座での上演のために書き直した改訂版に加えられた序曲は単独で演奏されることが多くあまりにも有名だがズービン・メータ指揮のフィレンツェ五月音楽祭オーケストラは音色豊かに、透明感のある響きで観客を作品に引き込んでいった。 

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 2011年はイタリア国家統一150年という記念すべき年だが、このプロダクションは原作の時代背景(1700年代半ば)より100年ほど時を進めて舞台をイタリア国家統一運動時に設定している。エツィオ・フリジェリオの装置は簡潔でありながら場面を美しく象徴的にまた心理的に表現して、複雑なドラマのストーリーを分かりやすくしてくれる。 
運命はレオノーラとアルヴァーロが恋に落ちた時からその力を現わしてくる。結婚を父に反対され駆け落ちを決心するレオノーラ。恋人との密会。そこに不意に現れる父。そして誤って彼女の父を殺してしまうアルヴァーロ。逃げた二人ははぐれてしまい、見捨てられたと絶望したレオノーラは男装して修道院へ。父の仇を討とうとアルヴァーロを探すレオノーラの兄カルロ。偶然にカルロの命を救うアルヴァーロ。お互いの名前を明かさずに兄弟の契りを結ぶカルロとアルヴァーロ。戦場で瀕死の重傷を負うアルヴァーロ。アルヴァーロの秘密を知って決闘を申し入れるカルロ。決闘はさえぎられこの世を捨てて修道院に入るアルヴァーロ。年月をかけてアルヴァーロを探し出すカルロ。決闘の場所は何とレオノーラが身を隠す洞窟のすぐ傍。アルヴァーロの剣に倒れるカルロ。レオノーラとアルヴァーロの再会。最後の力を振り絞って妹を殺すカルロ。運命に翻弄されるストーリーはまるで韓国流ドラマのような内容だ。

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 上演は、ベテランのロベルト・スカンディウッツィ演じるグァルティアーノ神父が朗々とした慈悲深さで胸を打つ存在感をみせる一方、プレツィオシッラ役のエレーナ・マクシモワは、若手らしいフレッシュな動きで暗いドラマに一瞬の風を吹かせた。アルヴァーロとの間に、憎しみと友情の両方の関係をもつドン・カルロ役のロベルト・フロンターリは、アルヴァーロと同様に、その葛藤する心情表現で聴衆に迫った。また、この複雑で重厚なドラマにヴェルディは時にユーモラスな場面を挿入しているが、僧侶メリトーネを演じたロベルト・デ・カンディアは計算された演技でフィレンツェの観客を笑わせ大喝采を浴びていた。 音楽を決して邪魔しない演出のおかげで難解なドラマの内容を良く理解することが出来る。
来年75歳になるマエストロ・メータは若々しく精力的でオーケストラと合唱から絶大な信頼を得ている。その信頼関係がうかがえる安定した演奏は聴いていて心地がよい。 東京での公演が今からとても楽しみだ。

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田口 道子[在イタリア]

photo:Teatro del Maggio Muisicale Fiolentino

2010年12月16日 13:06 公演関連情報

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