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2015/06/19 2015:06:19:13:17:49

NBS制作担当スタッフが語る 〈第14回世界バレエフェスティバル〉の見どころ<2>

観客にとっては新たなダンサー、作品との出会いが待ち望まれると同時に、バレエフェス常連ダンサーたちとの再会も、心躍るもの。今年の彼らの登場について尋ねると──。
 
「ベテラン勢といえば、最多出場回数(10回)を誇るマニュエル・ルグリが、長い間引退していたイザベル・ゲランをともなって参加することは、大いに注目されるところでしょう。ローラン・プティの『こうもり』は2012年のウィーン国立バレエ団の日本公演や翌年の自身のグループ公演の抜粋上演で、ルグリのコミカルな演技が絶賛された作品です。長く舞台に立っていなかったゲランですが、もともとずば抜けた身体能力の持ち主ですし、バレエフェス出演のため張り切ってリハーサルにのぞんでいると聞いています」

常連のベテランといえばもう一人、忘れてはならないのが、今回で連続出演8回を達成するウラジーミル・マラーホフ。

「マラーホフは、Aプロではディアナ・ヴィシニョーワとともに、ハンス・ファン・マーネンの『オールド・マン・アンド・ミー』を、Bプロでは自身の振付作品『シンデレラ』をヤーナ・サレンコと踊ります。前者は彼の圧倒的な存在感を、後者は優雅な舞台姿を目に焼き付けてほしいですね。いっぽうのヴィシニョーワは、Bプロでアメリカン・バレエ・シアター、マルセロ・ゴメスとの名パートナーシップを披露します。彼女は一昨年の〈ヴィシニョーワのすべて〉でも披露したように、近年、意欲的にコンテンポラリー作品に取り組んで高く評価されています。そのあたりも見ていただけると思います。」

「英国ロイヤル・バレエ団の人気者、スティーヴン・マックレーは、サレンコとともにAプロでバランシン『チャイコフスキー・パ・ド・ドゥ』を、Bプロでケネス・マクミラン版『ロミオとジュリエット』を踊り、多才ぶりをアピールしてくれます。観客の方々の期待度も高いのではないでしょうか。サレンコはBプロで2度登場することになります」

「また、イングリッシュ・ナショナル・バレエ(ENB)の芸術監督として活躍中のタマラ・ロホは、同カンパニーのゲスト・アーティストのアルバン・レンドルフと組んで、Aプロで"黒鳥のパ・ド・ドゥ"を、Bプロでノイマイヤーの『椿姫』第3幕のパ・ド・ドゥ(通称ブラック・アダージュ)と、"黒"で攻めてきます、というのは冗談ですが(笑)・・・監督になったとはいえ、ロホのあの、息を飲むテクニックやチャーミングで強烈な存在感を観たい観客の方々はまだまだ多いはずですから」

ノイマイヤーの『椿姫』は近年バレエ・ファンの間で人気の高い演目。演じるダンサーの側での人気も高いそうで、舞台と客席の間で相思相愛の幸福な関係にある。今回、Bプロでは元シュツットガルト・バレエ団のマリア・アイシュヴァルト、マライン・ラドメーカーが踊る第1幕のパ・ド・ドゥと、ロホ&レンドルフ組による第3幕のパ・ド・ドゥを一度に観ることができるというわけだ。

「ラドメーカーがノイマイヤー自身によってアルマンに抜擢され、以後、頭角を現したのは有名な話です。アイシュヴァルトの技量も文句がありません。彼らの『椿姫』のパ・ド・ドゥは2年前〈マラーホフの贈り物〉で披露されていますが、ぜひもう一度お見せしたい名演でした」

「また、モーリス・ベジャール・バレエ団からの唯一の参加となるオスカー・シャコンは待望の『ギリシャの踊り』で登場します。1980年代のバレエフェスで、ミシェル・ガスカールが踊って女性客を熱狂させた作品です。これを現在のベジャール・ダンサー、シャコンが、また違った新鮮な雰囲気で魅せてくれると期待しています」

「さらに、第12回の全幕特別プロ『ドン・キホーテ』で強烈なバレエフェスデビューを飾ったマリア・コチェトコワとダニール・シムキンのペアは、今回は『パリの炎』で、あの端正で切れの良い演技を見せてくれるでしょう。サラ・ラム、ワディム・ムンタギロフの英国ロイヤル・バレエ団のカップルは『ジゼル』(Aプロ)と『海賊』(Bプロ)。ロイヤルにはいろんなレパートリーがありますが、今回はあえて純粋な古典作品を担当してもらいます。もちろんウリヤナ・ロパートキナ、イーゴリ・ゼレンスキーらベテラン・ロシア勢の活躍にもぜひご期待ください」

各プログラムの最後は、1985年の第4回以来『ドン・キホーテ』で大いに盛り上がるのが定番となっている。
 
「毎回、"トリ"に相応しいダンサーにお願いしています。今回も、Aプロではキューバ出身のヴィエングセイ・ヴァルデス、オシール・グネーオのペアと、Bプロはボリショイ・バレエのマリーヤ・アレクサンドロワが、若手ホープのウラディスラフ・ラントラートフと組んで『ドン・キホーテ』を踊ります。高度なテクニックと表現力が期待される二組ですから、連日、華やかなフィナーレをご期待ください」


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写真:前回2012年第13回のカーテンコールより


取材・文 加藤智子(フリーライター)

photo: Kiyonori Hasegawa