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2015/06/15 2015:06:15:21:42:34

NBS制作担当スタッフが語る〈第14回世界バレエフェスティバル〉の見どころ<1>
3年に一度の"バレエのオリンピック"、世界バレエフェスティバルの開幕まで約1カ月半。本フェスティバルならではの充実のラインナップ実現のために日々奔走する、日本舞台芸術振興会の制作担当スタッフに、今回のフェスティバルのプログラム選定の決め手、A、B両プログラムの見どころなどを聞いた。
                                                                                                             
                                                                            (取材・文 加藤智子 フリーライター)

s400-600small_13thWBF[Curtain call]KH2_2240(photo_K.Hasegawa).jpg                                 第13回世界バレエフェスティバルのフィナーレより  photo:Kiyonori Hasegawa


まずは、出演ダンサーの顔ぶれ、作品のラインナップ選定のポイントについて尋ねた。

「いま現在の、世界のバレエの様相をしっかりと反映すべく気を配るとともに、ベテランから各カンパニーの中核を担うダンサー、そしてこれからが楽しみな新世代のスターと、各世代のダンサーを紹介できるよう、配慮しています」

 「上演作品については、基本的にダンサー本人が希望する作品を踊ってもらうのですが、近年の彼らの活躍ぶりや、全体のバランスを見てこちらからリクエストすることも。なかには、このフェスティバルのために、と新たな作品に取り組むダンサーもいます」
  
人気のパリ・オペラ座バレエ団からは、今回も選りすぐりのエトワールたちが参加する予定だ。
 
「この5月にオペラ座を退団したばかりのオレリー・デュポンは観客の方々の期待度も高いと思います。彼女は、その退団公演で踊った『マノン』より、第1幕のパ・ド・ドゥを上演します(Bプロ)。しかも、故障のため引退公演ではかなわなかったエルヴェ・モローとのパートナーシップが実現するのですから、パリの観客は羨ましいでしょうね(笑)。Aプロの『トゥギャザー・アローン』は、オペラ座の新芸術監督、バンジャマン・ミルピエの作品ですから、まさに、オペラ座の現在の姿を伝えるラインナップといえるでしょう。」

「また、マチュー・ガニオとともにロビンズの『アザー・ダンス』を踊るのは、日本公演『ドン・キホーテ』でのドリアードの女王の好演が記憶に新しい、気鋭のエトワール、アマンディーヌ・アルビッソン。今回が初登場です。彼らはバレエフェスで踊るためにわざわざ『アザー・ダンス』を習ってくるそうです。同じく初登場ながら、オペラ座の中心的存在として活躍中のミリアム・ウルド=ブラーム、マチアス・エイマンのペアは、Aプロでヌレエフ版『ロミオとジュリエット』を披露します。オペラ座ダンサーならではのヌレエフ作品を、堪能していただけると思います」
 
いっぽうで、"このダンサーでこの作品を"と、カンパニーの芸術監督から推薦があるケースもあるという。
 
 「とくにハンブルク・バレエのジョン・ノイマイヤー芸術監督は、毎回、様々な趣向の提案を寄せてくれます。今回もノイマイヤーの提案により、シルヴィア・アッツォーニとアレクサンドル・リアブコ、アンナ・ラウデールとエドウィン・レヴァツォフの二組がともに『いにしえの祭り』を踊ります(Aプロ)が、同作の異なる箇所からの抜粋を、二組が続けて上演するという興味深い試みが実現します。作品の魅力をじっくりと味わうことができる、またとない機会となるはずです。Bプロではアッツォーニ&リアブコは『シルヴィア』を、ラウデール&レヴァツォフは『ペール・ギュント』を踊りますが、後者はこの6月に改訂版が初演される予定で、現在ハンブルクでのリハーサルが展開中です。バレエフェスでは、初演直後の抜粋上演となるわけです」

ハンブルク・バレエと同じくドイツの著名カンパニー、シュツットガルト・バレエ団からも実力派プリンシパルたちが揃って参加する。

「アリシア・アマトリアンとフリーデマン・フォーゲルのペアは、『オネーギン』第1幕のパ・ド・ドゥ(Aプロ)、『伝説』(Bプロ)というクランコ作品で、今年11月の同団日本公演への期待感をより高めてくれるでしょう。元プリンシパルのマリア・アイシュヴァルトとマライン・ラドメーカーは、ノイマイヤーの『椿姫』を踊る予定です(Bプロ)。この『椿姫』、および『アザー・ダンス』については、昨年のパリ・オペラ座バレエ団日本公演の『椿姫』で素晴らしい演奏を披露したピアニスト、フレデリック・ヴェス=クニテールがピアノ演奏をすることも決まり、より充実したパフォーマンスが期待されます」


(<2>へ続く。)