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2011:11:10:10:43:392011/11/10   

<ニジンスキー・ガラ>ウラジーミル・マラーホフ インタビュー

 来年1月、ウラジーミル・マラーホフが、バレエ・リュスの名作「ペトルーシュカ」、「牧神の午後」、「レ・シルフィード」を踊る<ニジンスキー・ガラが東京で開催される(「薔薇の精」はディヌ・タマズラカルが主演)。もともと2007年に企画された公演だったが、彼自身の怪我によって延期となり、4年半ぶりに満を持しての実現となった。特に日本の観客にとっては、マラーホフが悲しげなあやつり人形としてペトルーシュカを踊るのを見る初めての機会となる。ペトルーシュカを「夢の役」と語るマラーホフに、本公演の魅力を電話インタビューした。


―――マラーホフさんはロシアのご出身で、ロシアでバレエを学ばれました。今回のバレエ・リュスの演目に何か思い入れはありますか?

素晴らしいロシアのスタイルを身に付けることができたのは幸運でした。バレエ・リュスの演目は全てロシア的なので、ぼくには親しみがあります。ぼくの魂、ぼくの心に近いのです。だから役の解釈も無理なくできるのです。


―――ニジンスキーに対しては、どんな印象をお持ちですか?

彼は伝説的な人物です。ぼくらは彼が実際にどのように踊ったのか知りません。彼は空中で静止したかのような大きな跳躍が出来たと言われています。彼のように偉大なダンサーの踊った役を踊ることができるのは、本当に嬉しいです。どんなダンサーも彼に近づきたいと思っているのです。ぼくももしかしたら、0.00001%ぐらいは彼に近づけたかなあ(笑)


―――「ペトルーシュカ」は日本では初めて踊られますね。
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この役は一度だけ、2000年にマリインスキーで踊りました。ずいぶんと前のことです。ペトルーシュカはぼくの血に流れているような役柄ですから、自然に演じることができます。きちんと準備して、さらに発展させることができれば、ニジンスキーの物まねでなく自分なりの役の解釈ができると思います。観客の皆さんにも、ぼくがどう感じているか伝わりやすくなるでしょう。ダンサーはみんなこの役を踊りたいと夢見ているのです。でも全員にチャンスが訪れるわけではありません。


―――ペトルーシュカの悲哀を、どのように感じられますか?

全てひとりでに沸き上がって来るものです。この振付の中には、悲しみ、喜び、愛、そして涙があります。芸術家ならば、容易に感じることの出来るものです。ぼくがひとりの人間として感じるもの、それこそが感情です。ストラヴィンスキーの音楽にも、喜びや悲しみといった、全ての想いが込められています。


11-11.10news03.jpg―――「牧神の午後」はいかがですか?

テンポの速いペトルーシュカと比べて、「牧神の午後」はゆったりとした作品です。また、ペトルーシュカはシャイな性格ですが、牧神はそうではありません。以前「マラーホフの贈り物」でこの役を踊りました。しばらく踊っておらず、ぼく自身も年齢を重ねて成熟したので、また新しいニュアンスや細部を発見できると思います。


―――「牧神の午後」にはドビュッシーの曲が使われています。

この音楽からは、そのときの気分によって、たくさんの異なる感情を感じます。いつも新鮮な発見があります。時には、とても官能的に聞こえます。この音楽には伸ばす音が多いのですが、ニジンスキーの振付にも伸びをするような動作があります。


11-11.10news02.jpg―――マラーホフさんにとって「レ・シルフィード」はどんな作品ですか?

よく知っている作品です。何度もいろいろな場所で、様々なバレリーナと踊りました。吉岡美佳さんとは今までもたくさんの公演を一緒にしてきたので、今回も彼女と踊るのをとても楽しみにしています。音楽はショパンです。ポーランド出身の、ぼくの大好きな作曲家です。ニジンスキーにもポーランドの血が流れていました。バレエの世界は狭いですから、全ては互いに繋がっているのです。


―――「薔薇の精」を踊るディヌ・タマズラカル(ベルリン国立バレエ・ソリスト)について教えてください。

ぼくがオーストリアの学校から採用したダンサーです。まだとても若く、輝かしい未来の控えたダンサーだと思います。だから彼には様々な役を与えようと思っているのです。「薔薇の精」に関しては、ぼくが自分の師であるアレックス・ウスリャクから習ったことを、彼にも伝えたいと思っています。


―――タマズラカルにとって「薔薇の精」は今回が初役と聞いています。どんなアドバイスをされますか?

作品の心を伝えたいです。この役柄は現実には存在しません。まるで風のように、夢のように、目に見えずに訪れるのです。目を閉じているとき誰かがあなたに触れ、しかし目を開けたら誰もいなかったかのような、そんな雰囲気が必要です。


―――最後に、日本の観客の皆さんへメッセージをお願いします。

来日は本当に嬉しいですし、日本が一番大変だった時期に行くことが出来なくて申し訳なく思っています。この公演より、もっともっと早く行きたかったのですが、スケジュールが全て決まってしまっていたのです。でもこの公演は、実現することができました。日本の観客の皆さんとファンの方々に「ぼくは皆さんのために、ここにいる」と示すことがやっと出来ます。ぼくは、自分の芸術で皆さんを少しでも支えるために日本へ行きます。喜びをプレゼントし、素晴らしい演技をお見せするために行くのです。


インタビュー・文:尾崎瑠衣

photo:Nina Alovert(「ペトルーシュカ」「レ・シルフィード」)、Kiyonori Hasegawa(「牧神の午後」)


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