〈マラーホフの贈り物〉ファイナルへの想い ウラジーミル・マラーホフ インタビュー

今年12月から来年3月にかけて開催される《モーリス・ベジャール没後5年記念シリーズ》。本紙では、元モーリス・ベジャール・バレエ団ソリストで、振付指導も行う小林十市と、東京バレエ団プリンシパルの木村和夫に、これまでの経験をもとに、今回公演への想いを語り合っていただきました。

「古典と同じ音楽なのに、こういう振りになるのか!? というインパクトで、存分に楽しんでもらえるはず」(小林)

──今回、《モーリス・ベジャール没後5年記念シリーズ》の一環で上演されるベジャールの『くるみ割り人形』。木村さんは初めてのM...役を踊られます。

木村 とても楽しみです。しゃべったり、狂言回しのような役割を担ったりと、これまでやったことのないタイプの役柄ですから。まだ稽古が始まっていないので何とも言えませんが、この役に関しては、自分が必死になって動くよりは、周りをうまく操っていくほうがいいのかな、と思っているところです。

小林 それは経験値のあるダンサーでないとできないことだから、木村君は適役です。僕が踊っていた猫のフェリックスはといえば、M...の使いっ走り(笑)。絶えず動き回って、M...のやりたいことを手助けする存在です。静と動、という対照的なこの二人が、舞台を引っ張っていくというわけです。

木村 M...は父親であり、マリウス(・プティパ)であり、メフィストフェレスであり、といろんなキャラクターを演じますが、例えば父親の、大きな愛情、優しさのようなものをこの役の中に表現できたら、とは思っているんですよ。

小林 重要なのは、中心にいるビムとの関係性ですね。お客さんは、そこからベジャールさんのお母さんへの愛、思いを、たっぷりと感じ取っていただけるはずです。古典の『くるみ』と比べると、ベジャールさんならではの捉え方、振りの面白さが際立つ作品でもあります。例えば、"スペイン"や"中国"などは、古典と同じ音楽でありながら、こういう振りになるのか!? と。視覚的にインパクトのある演出なので、存分に楽しんでいただけるかと思います。

「強いメッセージを込めて、ぶっ倒れるまで思い切り踊りたい」(木村)

──いっぽうの〈ベジャール・ガラ〉。木村さんの『火の鳥』は、これが見納めとなりますね。

木村 最後、というのはあまり気にしていません。『火の鳥』という作品は、革命家が現れ、大きなものに戦いを挑んで倒れるも、最後は皆に助けられ、大きな鳥となって飛んで行く……、という内容ですが、これは、昨年の東日本大震災以降の日本人の状況と、いろんな意味で合致していると思うんです。皆で助け合ったり、原発事故による目に見えない恐怖と戦ったり……。

小林 そういう意味では、とても生命力に溢れた作品だといえますね。

木村 そこに、いろんなメッセージをこめて踊りたいんです。例えば、怒りを抱えながら何もできない、でも、最終的には皆が手を取り合って復活していかなければ、という強いメッセージを。今までは自分のためだけに踊ってきたかもしれないけれど、今回は、これが自分の最後の『火の鳥』だということはあまり重要でなくて、もっと深いところに意味をもたせて、力いっぱい、本当にぶっ倒れるまで思い切り踊りたい。僕はダンサーで、踊ることしかできないから。振り返ると、最初に踊った当時(1993年)は、踊ることに必死で内容まではなかなか……。

小林 わかる!

木村 ハードな振付なので、年を取ったらキツくて踊れないと思っていたけれど、逆に年を重ねて、内容に傾倒していけばいくほど、楽に踊れるようになってきた。

小林 そう! お客さんの反応も、そのほうがいい。そういえば以前、モーリス・ベジャール・バレエ団の那須野(圭右)君のインタビューを読んだら、ベジャールさんに「最初のソロは若々しい20歳、中盤は40歳、最後のソロは60歳」というように衰えていく、と教えてもらったというんです。ああ、俺も同じこと言われたなあと……。

木村 ……それ、僕も言われた(笑)。

小林 ええっ? 言われた(笑)!? それは面白いね……。たぶん、みんな20代の時に言われたんだな。若い頃はそう言って考えさせてくれたんだと思います。でも30代に入ったら、とくに何も言われなくなる。その後は、それぞれのダンサーの生き方が役柄に反映される、ということなんでしょうね。

「燃え尽きる覚悟でこの1日に挑みます!」(小林)

──今回、小林さんはベジャール作品の指導に携わるだけでなく、『中国の不思議な役人』に出演。ダンサーとして1日限りの復活ですね。

小林 僕にとって最後の"役人"。この1日にすべてをぶつけます。「あしたのジョー」のように燃え尽きる覚悟で(笑)。

木村 この役大好きなんですよね。2004年の東京バレエ団初演では、緊張感から首の"しな"が作れなくなっちゃって(笑)。でも、それが逆によかった。機械みたいに感情のない、不気味で面白い演技ができたんです。そうすると、後半での感情の爆発がより出せるようになる。

小林 ベジャールさんがバレエ団を縮小して最初に創った作品(1992年初演)なので、創作時の力の入れ方が尋常でなかったのを覚えています。相当研究して振付けしていました。バルトークはこの音楽をパントマイムにあてて作曲していますが、ベジャールさんは実に音楽に忠実な振付けをしている。1920年代のハリウッド映画の色を出している点も特徴としてあるけれど、まず何よりも、すべてが音に忠実にできている、といえますね。お客さんも、音楽を聴く感覚で観ていただいてもいいかと思います。音が立体化している感じです。

木村 だから余計なことはしちゃいけない。ベジャールさんの作品は、振りを踊るだけで十分に伝えることができますからね。

小林 東京バレエ団で指導するにあたって、ジル(・ロマン=モーリス・ベジャール・バレエ団芸術監督)にも強く言われています。このバレエは音楽に忠実に創られた繊細な作品なんだからしっかりやれ、と。

木村 初めてベジャール作品を踊った時は、なかなかベジャール・ダンサーたちのようにはできなかった。十市君のように、ベジャールさんのもとでいろんな経験をして踊りこんできた人に伝えてもらうというのは、すごく助けになります。

小林 責任を感じます。今回、アンサンブルには若手を起用しているんですが、時間をかけて、じっくり身体になじませていけたらと思います。


<モーリス・ベジャール没後5年 記念シリーズ1>
東京バレエ団
ベジャールの「くるみ割り人形」(全2幕)

ベジャール自身の母への思慕とバレエへの憧憬を語った感動の物語

会場:東京文化会館

12月15日(土)3:00p.m.
12月16日(日)3:00p.m.

入場料[税込]

S=¥10,000 A=¥8,000 B=¥6,000
C=¥5,000 D=¥4,000 E=¥3,000

★ペア割引券(S,A席)あり
*エコノミー券/学生券は11月17日(土)より受付
エコノミー券=¥2,000(イープラスのみ)
学生券=¥1,500(NBS WEBチケットのみ)


<モーリス・ベジャール没後5年 記念シリーズ2>
東京バレエ団
ベジャール・ガラ

東京バレエ団ならでは実現できる傑作選!
「中国の不思議な役人」s
「火の鳥」/「ギリシャの踊り」
「ドン・ジョヴァンニ」

会場:東京文化会館

2013年
1月19日(土)3:00p.m.
1月20日(日)3:00p.m.

入場料[税込]

S=¥10,000 A=¥8,000 B=¥6,000
C=¥5,000 D=¥4,000 E=¥3,000

★ペア割引券(S,A席)あり
*エコノミー券/学生券は12月15日(土)より受付
エコノミー券=¥1,500(イープラスのみ)
学生券=¥1,000(NBS WEBチケットのみ)


<モーリス・ベジャール没後5年 記念シリーズ3>
モーリス・ベジャール・バレエ団 2013年日本公演

受け継いだ巨匠の魂を次代へ!
<Aプロ>「ボレロ」「ディオニソス組曲」「シンコペ」
<Bプロ>「ライト」全幕

会場:東京文化会館

<Aプロ>
2013年
3月1日(金) 7:00p.m.
3月2日(土) 3:00p.m.
3月3日(日) 3:00p.m.
3月4日(月) 7:00p.m.
3月5日(火) 7:00p.m.

<Bプロ>
2013年
3月8日(金) 7:00p.m.
3月9日(土) 3:00p.m.
3月10日(日) 3:00p.m.

入場料[税込]

S=¥16,000 A=¥14,000 B=¥12,000
C=¥9,000 D=¥7,000 E=¥5,000

◆Aプロ、Bプロ2演目セット券(S,A,B席)あり
★ペア割引券(S,A,B席)あり
*エコノミー券/学生券は2013年2月1日(金)より受付
エコノミー券=¥3,000(イープラスのみ)
学生券=¥2,000(NBS WEBチケットのみ)


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