ナターリヤ・オシポワとイワン・ワシーリエフは、いま、ロシア・バレエ界の先頭集団を疾走する最強コンビだ。観客を圧倒する超絶技巧もさることながら、抜群のパートナーシップで舞台を生き生きと輝かせる。
ワシーリエフ:「もう6年も一緒に踊っています。ナターシャ(ナターリヤ)は才能あふれるバレリーナです。 彼女の踊りを見ているだけで幸せな気分になります。でも、一緒に踊るほうが、もっと楽しいですよ。魔法にかかったような気持ちになりますから」
オシポワ:「レッスンでの彼は、あくまでイワン・ワシーリエフというダンサーなのですが、ステージに立つとイワンという人物は姿を消し、幕が上がって下りるまで、役に没頭している。稀有な存在だと思います」
またたく間にモスクワのボリショイを代表するコンビに成長を遂げた二人は、2011年12月、振付家ナチョ・ドゥアトが芸術監督を務めるサンクトペテルブルクのミハイロフスキー・バレエに移籍し、巷を驚かせた。
オシポワ:「移籍した動機をひと言でいうと、劇場の名前に頼らず、自分たちが興味を感じることにチャレンジしたい、という願いがあったからです。そのために、より自由な場に身を置く決断をしました」
ワシーリエフ:「ナチョとの仕事は、刺激的です。彼はダンサーに振付を押し付けるのではなく、ダンサーと同じ立場に立って、こんなことが可能なんだ!と驚くようなクリエーションをする。今後も彼の様々な作品に挑戦したいです」
ミハイロフスキーを拠点にしつつ、文字通り、世界を駆け巡っている二人は、ニューヨークのアメリカン・バレエ・シアター(ABT)のゲスト・プリンシパルでもある。
オシポワ:「ニューヨークの方たちは、バレエを知り尽くしています。好き嫌いがはっきりしていることも、特徴ですね。盛り上がる時はわっと盛り上がるけれど、逆の場合もあるので、毎回、真剣勝負をしているようです」
ニューヨーク同様、トップクラスのバレエ団やダンサーを恒常的に目にしている東京の観客もまた、“手強い”と二人は異口同音に唱える。とはいえ、昨夏の「世界バレエフェスティバル」で、『ドン・キホーテ』や『海賊』等、美技をちりばめた演目を踊り、その魅力を全開させたことは記憶に新しい。
オシポワ:「ダンサーにとって、「世界バレエフェスティバル」は、学び合う場です。具体的に何かを教え合うわけではないけれど、後になってフラッシュバックのように、印象的な場面が脳裏に浮かび、"バレエフェス”での経験が自分の糧になったことを感じます」
ワシーリエフ:「僕は、今回が初参加でした。誰も彼もが、世界最高峰のダンサー。舞台裏を歩きながら、ワクワクしていました。初めて見たベジャールの作品が印象的。ジル・ロマンの研ぎ澄まされた演技は、ほんとうに凄かった!」
2013年9月には、二人揃って、ミラノ・スカラ座バレエ団の日本公演に参加する。
ワシーリエフ:「マリインスキー劇場で踊っていたワジーエフ氏が芸術監督に就任して以来、スカラ座は確実にレベルアップしました。若々しいバレエ団なので、数年後は、さらに成長を遂げているでしょうね」
日本公演の演目は、マクミラン版『ロミオとジュリエット』。オシポワは、すでにABTで同作に主演したことがある。戯曲や映像のリサーチに加えて、往年のジュリエット・ダンサー、アレッサンドラ・フェリの指導を受けたという。
オシポワ:「フェリはただ振付を踊るのではなく、心の底から湧き出た演技をする女優だと思います。振付に従って形を作るだけではジュリエットは踊れない、自分で感じたままに演じるように、というアドバイスを受けました。彼女は最高のコーチですね」
一昨年にペーター・シャウフス・バレエ団が再演した英国人振付家アシュトン版『ロミオとジュリエット』を共に踊っているが、スカラ座の舞台で、マクミラン版での初共演が実現する。
オシポワ:「主役ダンサーがマクミランのお膝元、英国ロイヤル・バレエ団員であれば、どのような演技になるのか、だいたい予想がつきます。英国人が振付けた作品を、踊り慣れたダンサーが踊るわけですから。でも、他国の他団所属の私たちが踊ると、予想を超えた何かが生まれるチャンスがあるんです」
ワシーリエフ:「僕自身、マクミラン版を踊るのが楽しみで仕方ありません。アシュトン演出では、抑制した動きで情感を醸し出します。ロシアのスタイルでは、対照的に、大きな動きで感情を表現します。マクミランは英国人だけれど、彼の『ロミオとジュリエット』はダイナミックに感情を噴出させる。僕には、マクミラン版のほうがフィットする予感がします。おまけに、ナターシャと共演できるんですよ。彼女のジュリエットは、とても誠実です。心の底から役になりきって、ロミオと恋に落ちる。ナターシャの熱演に応えられるよう、精一杯、準備をして公演に臨みます 。皆さん、ぜひ劇場にいらしてくださいね!」
(インタビュー・文/上野房子 ダンス評論家)
会場:東京文化会館
2013年
9月20日(金) 6:30p.m./
9月21日(土) 12:00p.m.
9月21日(土) 6:00p.m./
9月22日(日) 3:00p.m.
9月23日(月・祝) 1:00p.m.
【予定される主な配役】
ジュリエット:
アリーナ・コジョカル(9/20、9/22)
ナターリヤ・オシポワ(9/21夜、9/23)
ペトラ・コンティ(9/21昼)
ロミオ:
フリーデマン・フォーゲル(9/20、9/22)
イワン・ワシーリエフ(9/21夜、9/23)
クラウディオ・コヴィエッロ(9/21昼)
指揮:デヴィッド・ガーフォース
演奏:東京シティ・フィルハーモニック管弦楽団
【入場料(税込み)】
S=¥18,000 A=¥16,000 B=¥14,000
C=¥11,000 D=¥8,000 E=¥5,000
*エコノミー券、学生券は7月27日(土)より受付
エコノミー券=¥4,000(イープラスのみ)
学生券=¥2,000(NBS WEBチケットのみ)
★ペア割引券(S,A,B席)あり ★親子ペア券(S,A,B席)あり