7月27日(土)10:00a.m.より 一斉前売開始

 シルヴィ・ギエムはどこまで上昇していくのだろう。たえず進化し続けるギエム。2年前の〈シルヴィ・ギエム・オン・ステージ2011〉で踊ったマッツ・エック振付『アジュー』の自由奔放なソロに衝撃を受けた観客は皆同じような思いを抱いたに違いない。そのギエムが、今度は、エックの代表作『カルメン』で、今秋再び日本の観客の前に登場する。既に40回もの来日を数え、お得意のレパートリーはほとんど踊りつくしているかに見えるギエムだが、この『カルメン』を演じるのは今回が初めて。その見どころをご紹介しよう。
 エック版『カルメン』は、プリセツカヤやザハロワらの名演で知られるアロンソ版と同じビゼー/シチェドリン編曲の組曲に振付けられ、92年5月にストックホルムのクルベリ・バレエ団で初演。コロンブスの新大陸発見500周年を記念したスペイン特集の一環であった。主役のカルメンは、公私ともにエックのミューズであったアナ・ラグーナである。  この作品は、初演から一ヶ月後の6月には、パリの市立劇場にもお目見えし大評判になった。カルメンはラグーナ、ホセはマルク・ウォン。エック版の面白さは、まずアロンソ版とは全く趣を異にすることだ。少々種明かしすると、舞台は、ホセの処刑シーンに始まり、カルメンとの出会いから破局に至るまでの過程がホセの回想として生々しく描かれていく。舞台に充満する煙草の煙も恋の行方を占うのに実に効果的だった。そして何と言ってもラグーナ演じる男勝りの奔放なカルメンが衝撃的で、その魅力が作品の全てと言ってよかった。
 それから13年後の2005年、今度は市立劇場の向かいのシャトレ座の舞台に、ギエムのカルメンが登場した。共演はリヨン・オペラ座バレエ団。ラグーナのカルメンのイメージがあまりに強烈だったので、ギエムがいかにそのイメージを突き崩してくれるかワクワクしながら開幕を迎えたものである。最初の登場から驚かせたのは、真紅の衣裳の色を一層輝かせるようなあでやかさだった。「ル・フィガロ」紙(2005年2月)は「炎の女」という見出しでギエムのカルメンを讃えた。あらゆる束縛から逃れるように自在に舞台を駆け巡るギエム。その官能的魅力と情熱の炎が、エック版『カルメン』のイメージを一新させたのである。ホセ役のマッシモ・ムッルもナイーブな役作りで、カルメンに翻弄される青年をストレートに演じたのが印象に残る。
 90年代は古巣のオペラ座にしばしば客演し、ヌレエフ版をはじめとした古典バレエの女王として君臨してきたギエムにとって、「ファム・ファタル(宿命の女)」の典型を演じることは、2000年にフォンテーンとヌレエフの黄金ペアの代名詞的バレエ『椿姫』を踊ったことに続く大胆な挑戦であった。ギエムが初めてカルメンを演じたのは、2002年4月、英国ロイヤル・バレエ団における初演の際。当時の批評では、「焼けつくようなパフォーマンスを見せ、真紅のドレスで舞台を縦横無尽に支配した」(「ダンス・マガジン」2002年7月号)と絶賛された。
 その後、ギエムは、リヨン・オペラ座バレエ団に何回か客演し、『カルメン』を踊っている。2003年のカンヌ・フェスティバルの公演を前にした「ル・モンド」紙(2003年11月)のインタビューで、「確かにスペインの血を引いている(父方の祖母がスペイン人)が、まず自分自身あるがままのカルメンを踊りたい」と語っているのが、いかにもギエムらしい。初めてカルメンを演じてから12年。『ウェット・ウーマン』『スモーク』『アパルトマン』『アジュー』などエック作品を数々踊り、年輪を重ねてきたギエム。気心の知れたパートナーのムッルと東京バレエ団との共演は、これまで以上にエキサイティングなステージを創造してくれるに違いない。


シルヴィ・ギエム オン・ステージ2013
シルヴィ・ギエムの「カルメン」

会場:東京文化会館

2013年
11月14日(木)7:00p.m./ 11月15日(金)7:00p.m.
11月16日(土)3:00p.m./ 11月17日(日)3:00p.m.

【予定される演目】
「カルメン」
振付:マッツ・エック
音楽:ジョルジュ・ビゼー/ロディオン・シチェドリン
「エチュード」
振付:ハラルド・ランダー
音楽:カール・チェルニー、クヌドーゲ・リーサゲル

【主な出演】
「カルメン」 カルメン:シルヴィ・ギエム / ホセ:マッシモ・ムッル 東京バレエ団
「エチュード」 東京バレエ団

入場料[税込]
S=¥17,000 A=¥15,000 B=¥13,000 C=¥9,000 D=¥6,000 E=¥4,000



シルヴィ・ギエム&アクラム・カーン・カンパニー
〈聖なる怪物たち〉

会場:ゆうぽうとホール

2013年
11月28日(木)7:00p.m. / 11月29日(金)7:00p.m.
11月30日(土)3:00p.m. / 12月1日(日)3:00p.m.

【主な出演】
シルヴィ・ギエム、アクラム・カーン

入場料[税込]
S=¥15,000 A=¥13,000 B=¥9,000 C=¥6,000 D=¥4,000

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