デヴィッド・ホールバーグ インタビュー 私は、アルブレヒトがジゼルを 心から愛していた、と解釈しています。 彼女を失った悲しみや罪悪感は 消えることはありません。

バレエを始めたきっかけがフレッド・アステアとは、いかにもアメリカ人。
しかしデヴィッド・ホールバーグは今やアメリカン・バレエ・シアターとボリショイ・バレエ、東西の2大バレエ団のプリンシパルとして活躍する、世界でもきわめて稀なダンスール・ノーブルだ。
おりしもモスクワ滞在中の彼に、これまでのバレエ人生や近況、 そして10月の東京バレエ団「ジゼル」への客演について語ってもらった。

――バレエを始めたきっかけは何ですか。

「ミュージカルの大スター、フレッド・アステアを見て踊りに開眼し、ダンスのレッスンを始めました。バレエに夢中になったのは、『くるみ割り人形』に出演したことが契機ですね。おもちゃの兵隊に扮して舞台に立ち、バレエの魅力に取りつかれました」

――フェニックス州のアリゾナ・バレエ・スクールを経て、パリ・オペラ座バレエ学校に入学されました。

「アリゾナでは、ワガノワ・スタイルの訓練を受けました。やがて恩師のキー・ホワン・ハンから、君には才能がある、次のステップに進むようにと背中を押されました。それなら世界一のバレエ学校で勉強したい、世界一のバレエ学校はどこだろう、パリ・オペラ座しかない、という答えにたどり着きました。とにかく挑戦してみようと思い、オーディション用映像を送ったら、なんと合格!」

――世界最高峰のバレエ学校に学んだ感想は?

「驚きの連続でした。目を疑うほどの猛スピードで、細部まで正確に踊らなくてはならない。足の細かな動きから腕のポジションにいたるまで、目指している完璧さの度合いが違う。高いレベルに身を置き、自分を鍛えることができました」

――端整なテクニックに加えて、しなやかな身のこなしもホールバーグさんの特長です。

「柔軟性に恵まれていますが、でも体をキープするのが難しい。アリゾナで勉強していた頃から筋トレを続けています。足を鍛え、腹筋を鍛え、体幹を鍛え、深層筋を鍛える。柔軟性と筋力のバランスを取る努力は終ることがありません」

――2001年に入団したABTでは、わずか4年でプリンシパルに昇進しましたが、11年にはアメリカ人としては初めて、ボリショイ・バレエのプリンシパルになりました。

「芸術監督セルゲイ・フィーリンから入団の要請を受け、千載一遇の好機だと思いました。これまでアメリカ人ダンサーが誰一人として経験したことのない場で、新たなレパートリーを踊り、ボリショイの伝統を学ぶことができる。断る理由は、何もありませんでした」

――どなたの個人指導を受けていますか。

「ボリショイ・スタイルの生き字引のようなアレクサンドル・ヴェトロフから、手取り足取り指導を受けています。ジャンプをする時に胴体と腕をどう保つのか、脚をどのように打ち合わせるのか、どのように脚を後ろに上げるのか。些細な事柄が蓄積されて、あのボリショイ特有の、伸びやかで何物にも束縛されない、ゆったりと大きなスタイルが出来上がるのです」

――モスクワ生活の様子を教えてください。

「劇場の近くにアパートを借りて、歩いて出勤しています。料理は……苦手なんです。近所にある、美味しいデリカテッセンが頼みの綱です(笑)。野菜や肉やポテト、ごく普通の食べ物を食べていますが、時々、ボルシチも味わいますよ」

――美術がお好きだそうですね。お気に入りの美術館は?

「 モスクワ現代美術センターです。地元のアーティストと交流する機会もあります。印象的だった美術展は、ルドルフ・ヌレエフ展ですね。舞台だけでなく、パリやニューヨークの邸宅の写真を通して、ヌレエフのキャリアと人生の一端に触れることができました」

――今回の「ジゼル」で、ホールバーグさんと東京バレエ団の初共演が実現します。ロマンティック・バレエのこの不朽の名作は、あなたにとって、どのような作品ですか。

「とても人間らしい感情が描かれていることに魅力を感じます。最初にこの役をコーチしてくれたケヴィン・マッケンジーに助言されました。1幕でアルブレヒトが何者であるのかを観客に見せなくてはいけない」

――では、ホールバーグさんが演じるアルブレヒトとは何者ですか。

「私は、アルブレヒトがジゼルを心から愛していた、と解釈しています。彼は貴族として、幸せな人生を手に入れられたはずです。でも、別の生き方があるのではないかという思いを抱いてとある村を訪れ、ジゼルと恋に落ちる。ところが彼女を失ってしまい、彼は今まで経験したことのない悲しみや罪悪感にさいなまれる。アルブレヒトは、幾つもの側面を持った複雑なキャラクターです」

――第2幕の幕が降りた時、アルブレヒトの心にはどのような想いがあるのでしょうか。

「彼は一生、罪の意識と後悔の念を消し去ることはできないでしょう。けれども精霊になったジゼルが自分を守ってくれた。彼はジゼルに赦されることによって、新しい人生を踏み出すことができるのです」

――細やかな役柄ゆえ、パートナーとの演技のやりとりも見どころです。

「幸いなことに、私は素晴らしいダンサーと共演する機会に恵まれてきました。今回の上野水香さんと吉岡美佳さんとの初共演も楽しみです。日本の皆さんは、とにかくバレエに対して貪欲ですから、ぜひ素晴らしい舞台をお届けしたいと思っています」

          

東京バレエ団50周年プレ企画 バレエ・ブラン・シリーズ2
「ジゼル」全2幕

会場:東京文化会館

2013年
10月12日(土)3:00p.m. / 10月14日(月・祝)3:00p.m.

【予定される主な配役】
ジゼル:上野水香(10/12)、吉岡美佳(10/14)
アルブレヒト:デヴィッド・ホールバーグ

指揮:ワレリー・オブジャニコフ
演奏:東京シティ・フィルハーモニック管弦楽団

【入場料(税込み)】
S=¥11,000 A=¥9,000 B=¥7,000 C=¥5,000  D=¥4,000 E=¥3,000

*エコノミー券、学生券は9月20日(金)より受付
 エコノミー券=¥2,000(イープラスのみ)
 学生券=¥1,000(NBS WEBチケットのみ)
★ペア割引券(S,A,B席)あり 
★ファミリー券(S,A席)あり

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