2020年の東京オリンピックも決まり、なんとなく明るい兆しを感じている人も多いのではないでしょうか。オリンピックはスポーツの祭典であるとともに、文化の祭典でもあることを知っている人は少ないかもしれません。オリンピック憲章にも第5章で「複数の文化イベントのプログラムを計画しなければならない」と明記されているのです。実際、先のロンドン・オリンピックではオリンピック前後の12週間の間に600件の文化事業がおこなわれています。われわれ舞台芸術に携わるものにとっても、2020年の東京オリンピックは斯界活性化のための大きなきっかけになるのではないかと期待しています。
 日本独自の伝統文化を保持することは重要ですが、オペラやバレエ、コンサートは世界共通の芸術文化ですので、スポーツと同様、国際的な競争力が問われることになります。例えて言えば世界中で盛んにおこなわれているサッカーのようなもので、強いか弱いかで、その国の文化度が測られてしまう面があります。そのグローバルな芸術文化であるオペラやバレエなどの舞台芸術活動が、わが国においては近年だんだん元気がなくなってきていると感じています。
 経済と文化は車の両輪といわれます。中国や韓国など経済が好調なアジアの国々は、いまオペラやバレエ、オーケストラなどの舞台芸術の振興に力を入れています。逆に経済がどんどん冷え込んでくると、真っ先に影響を受けるのが芸術文化です。これまで日本は世界最大の音楽市場の一つと言われていましたが、近年は海外の芸術団体が日本を素通りして、中国や韓国に行く現象が顕著になってきています。中国や韓国は日本と違って国が招聘事業にもお金を出しているのです。
 2020年に東京オリンピックが決まり、スポーツの方は国を挙げてメダルの獲れる選手や団体を育てることに躍起になるかと思いますが、前述したとおり、オリンピックは文化の祭典でもあることを忘れないでいただきたいと思います。2020年の東京オリンピックに向けて、日本はさらに気品ある成熟した文化国家をめざさなければなりません。欧米ではオペラやバレエの公演は寄付金で成り立っています。残念ながら、わが国には欧米と違って芸術文化をサポートするために寄付をしなければならないという文化が育っていないように思います。オペラやバレエのようなグローバルな芸術を育てるためには、グローバルな寄付文化が必要なのです。このことをぜひともオペラやバレエ愛好家の皆さまに、ご理解をいただき、支援体制を整える活動をすることも弊財団に課せられた使命かと考えています。
 弊財団は2011年4月より公益財団法人として新たにスタートを切りましたが、弊財団が舞台芸術の振興という所期の目的に向かって活発な活動を続けるためには、どうしても皆さまからのご寄付が欠かせないことをご理解いただき、なにとぞご支援のほどを切にお願い申し上げます。

◆詳しくはNBS支援業務室  Tel. 03-5721-8000 まで。

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