東京バレエ団 創立50周年記念プロジェクト

“ウラジーミル・マラーホフが東京バレエ団の
アーティスティック・アドバイザーに就任!”
11月19日に発表されたこのビッグ・ニュースは、
瞬く間に日本のバレエ・ファン、世界のバレエ関係者の間を駆け巡りました。
マラーホフの元にも即日、友人たちからの祝福のメールが殺到したとか。
20年にわたって共演を続けてきた東京バレエ団の、
創立50周年を機に、これまで以上に幅広いコラボレーションに
費やす日々への抱負や近況について、ぞんぶんに語ってもらいました。

――東京バレエ団の「アーティスティック・アドバイザー」就任にあたり、抱負をお聞かせください。

「東京バレエ団と共に歩む機会をいただき、とても光栄です。 私の存在が団員に新たなインスピレーションを与えられるよう、ベストを尽くします。具体的には、レッスンを教え、作品の指導をし、新たな才能を発掘する。つまり私の知識と経験をダンサーに伝え、バレエ団の魅力を最大限に引き出すことを目指しています」

――「くるみ割り人形」「ジゼル」「眠れる森の美女」の指導も予定されています。どのように取り組まれるのでしょうか。

「たとえば、バレエの素材であるステップの細部を鍛錬する機会があると思います。説明し、助言し、誤りを指摘し、修正する。技術だけでなく、感情表現も織り込まなくてはなりません。指導の際には、出し惜しみはしませんよ(笑)。鍵を握るのは、ダンサー自身の受容力と思考力です。私にできるのは、彼らに考えるきっかけを提供すること。何かを学び、自分のものにできるか否かは、本人次第なのです」

――貴公子ダンサーとして名を馳せたマラーホフさんにとって、古典作品の王子役とは?

「完璧さの象徴です。優雅さと純粋さが求められ、なおかつ高度なテクニックも不可欠です。王子を踊るためには、気品と技術を絶妙のバランスで融合させなくてはなりません」

――自ら踊るだけでなく、 ベルリン国立バレエ団の芸術監督として、ダンサーの育成にも携わってきました。

「才能を開花させるには、時間がかかります。ダンサーを見守ることは、芸術監督の重要な仕事です。レッスンで、リハーサルで、公演で彼らの姿を見る。とにかく見る、見る、見る。すると、ある日突然、あるダンサーに目を引きつけられる。何かがダンサーのなかで芽生えるのですね。そのタイミングを見逃さず、チャンスを与え、素質をさらに伸ばす。監督冥利に尽きる体験です」

――今年6月、ベルリン国立バレエ団の芸術監督を退任されます。

「6月に、『カラヴァッジオ』と『チャイコフスキー』に主演して、ベルリンでの任期を締めくくります。色々な思いが胸をよぎりますが、とても前向きな気持ちです。芸術監督に就任した際、私には明確な目標がありました。バレエ団を世界レベルに引き上げ、充実したレパートリーを作り、より多くの皆さんに公演を見て頂くことです。就任から11年が過ぎた今、達成感を感じています。ダンサー達の士気は高く、充実しています。彼らは新たな監督(ナチョ・ドゥアト)の下で成長し続けるでしょう」

――ファンの方々は、マラーホフさんの舞台を心待ちにされていることと思います。「眠れる森の美女」では、魔女カラボスを演じられるそうですね。

「 ひと癖あるキャラクター役は、演じていてとても楽しいですね。カラボスはプロローグからフィナーレまで出番が多く、演じ甲斐があります。でも性格的な役柄だからといって、作品に臨む心構えが変わる訳ではありません。作品と役柄に自分をフィットさせると、何をどう演じるべきなのか、自ずと浮かび上がってきます」

――昨年5月の〈マラーホフの贈り物〉公演で上演され、いま一度、観客の心を揺り動かした「ヴォヤージュ」を披露する予定は?

「 私にとって大切な作品ですが、今の時点では、わかりません。ダンサーとしてデビューして、すでに28年の歳月が流れました。十分に充実した日々だったと思います。東京バレエ団と幾多の舞台で共演し、世界バレエフェスティバルで様々な作品を踊ることができました。今の私は、これまでに築き上げた自分のイメージに固執せず、次のステップを歩み出す心構えができています。挑戦をしたい。発見をしたい。そのために、一年間、アーティスティック・アドバイザーとして日本で過ごす決意をしたのです」

NBSについて | プライバシー・ポリシー | お問い合わせ