モーリス・ベジャール振付「ザ・カブキ」を携え、欧州の一流オペラハウスを制覇した東京バレエ団。その後も、ベジャールを含む巨匠振付家の作品を次々とレパートリーに加えていき、そこで新たに抜擢された若手ダンサーたちが脚光を浴びます。
 まずは、89年7月初演の「月に寄せる七つの俳句」。ハンブルク・バレエの芸術監督、ジョン・ノイマイヤーが東京バレエ団のために創作した、俳句に題材を得たこの独創的な作品で、主役の木村和夫をはじめ、斎藤友佳理、高岸直樹ら、後にバレエ団の中核を担うダンサーたちが重要な役を任され、舞台を成功へと導きました。92年の第13次海外公演(ロシア・ウクライナ)では、ボリショイ劇場、マリインスキー劇場に出演、各地で高評を獲得。「ラ・シルフィード」を踊った斎藤友佳理が、「日本のタリオーニ」と絶賛されたことも話題に。
 翌93年7月には、ベジャールが東京バレエ団のために創作した2作目のオリジナル作品「M」を初演します。三島由紀夫へのオマージュとして知られるこの作品では、三島の分身、"IV-シ(死)"役にモーリス・ベジャール・バレエ団の小林十市が客演。また、生命と再生の源の象徴である"女"に吉岡美佳が選ばれ、大役を果たします。「M」初演期間中には、ベジャールから「春の祭典」、「ボレロ」の上演を東京バレエ団だけに許可するとの重大発表があり、巨匠振付家との絆はより強固なものに。そして同年9月から11月に実施された第14次海外公演では、ベルリン・ドイツ・オペラ、ミラノ・スカラ座、パリ・オペラ座、ローザンヌ・ボーリュー劇場などで、「M」のほかこの2作品を含むミックスプログラムを上演、各地でベジャールのお気に入りバレエ団としての評価を獲得します。
 また、創立30周年を迎えた94年には、コンテンポラリーダンスの巨匠として存在感を強めていたイリ・キリアンが、東京バレエ団のためのオリジナル作品「パーフェクト・コンセプション」を創作。キリアン独特の先鋭的な動きに果敢に挑戦した東京バレエ団は、その表現の幅、可能性を着実に広げていきます。
 その後も、95年にシルヴィ・ギエムとの全国縦断公演〈シルヴィ・ギエム オン・ステージ〉、96年にベジャールの「ペトルーシュカ」初演、96年にはアレッサンドラ・フェリ、マニュエル・ルグリをゲストに迎えての15年振りの「ジゼル」復活上演と、多彩な活動を展開。98年8月〜9月の第17次海外公演ではついに南米上陸を果たし、南半球随一のオペラハウス、テアトロ・コロンに出演。よりいっそうグローバルに、活躍の場を広げていったのでした。

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