創立35周年を迎えた1999年の3月、東京バレエ団はモーリス・ベジャールから新たに贈られた「くるみ割り人形」を初演。巨匠自身の幼少時の思い出を独創的なアイデアたっぷりに綴る本作は、古典のワイノーネン版と並ぶ東京バレエ団の冬の風物詩的レパートリーとして人気を誇っています。さらに翌年には、ジョン・ノイマイヤーによる二つ目のオリジナル作品『時節の色』を世界初演、詩情あふれる舞台を披露し、高評を得ました。
 21世紀に突入した2001年には、ついに古典全幕作品「ドン・キホーテ」を初演します。ボリショイ・バレエの往年の大スター、ウラジーミル・ワシーリエフによる新演出版で、4カ月にわたる稽古をとおして、ダンサーたちはエネルギッシュな舞台を創り上げ、初演は大成功。その後も東京バレエ団の重要な古典レパートリーの一つとして上演が重ねられています。
 世界的アーティストとの共演にも積極的に取り組んできました。とくに強烈な印象を残したのは、2003年11月の〈奇跡の響演〉。「春の祭典」「火の鳥」、さらにシルヴィ・ギエム主演の「ボレロ」をダニエル・バレンボイム指揮の名門オーケストラ、シカゴ交響楽団の演奏で上演するという空前絶後のコラボレーションは、大きな話題を呼びました。
 そして2004年、東京バレエ団は創立40周年を迎えます。2月にはベジャール振付「中国の不思議な役人」を初演。5月から7月には第21次海外公演を実施します。フィレンツェ五月音楽祭での「ドン・キホーテ」はそのハイライトともいえる公演で、超満員の客席は大熱狂、地元紙でも絶賛されたのです。帰国後の8月には〈創立40周年記念ガラ〉を開催。ベジャール、ノイマイヤー、キリアンなど縁の深い振付家の作品を上演し、40年の輝かしい実績を振り返りました。
 2005年には、初のフレデリック・アシュトン作品の上演となった「真夏の夜の夢」、翌2006年にはウラジーミル・マラーホフ新演出による「眠れる森の美女」と、次々と新たな作品に取り組み、より多彩で個性的なレパートリーを構築していきます。そんななか、ベジャール逝去という衝撃の報せを受けたのは、2007年11月のこと。翌2008年の5月からは長期にわたるベジャール追悼特別公演シリーズを展開します。「ギリシャの踊り」「火の鳥」を含むミックス・プロを皮切りに、「くるみ割り人形」、「ザ・カブキ」の連続上演、さらにはギエムとの「ボレロ」を携えての全国公演を実施。5月から7月に行われた欧州6カ国をめぐる第23次海外公演でもベジャール作品を上演、その大いなる遺産を受け継ぎ、深めていく決意を内外に示したのでした。

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