アリーナ・コジョカル ドリーム・プロジェクト2014

 「アリーナ・コジョカル ドリーム・プロジェクト2014」の開幕まで、あとわずか。そこで今回は、この公演の見どころを探ってみよう。
 まずなによりも、コジョカルの演目が魅力的だ。
 ここ数年、コジョカルは世界的な振付家ジョン・ノイマイヤーに招かれ、彼の本拠地ハンブルク・バレエで踊る機会が増えている。繊細な心理描写を積み重ね、ドラマティックに物語を描き出すノイマイヤーは、確かにいまのコジョカルの美点を最も際立たせる振付家のひとりである。前回公演で踊ったノイマイヤー振付の「椿姫」。抑えようとしても抑えきれないアルマンへの思い。そのあまりの切なさに涙した方も多いのではないだろうか。
 今回コジョカルが踊るノイマイヤーの作品は二つ。まず「リリオム」である。回転木馬の呼び込みをしているリリオムが恋をするジュリーがコジョカルの役。けれど二人の未来は幸せなことばかりではなく… 純真可憐なコジョカルの姿は観る者の胸を打つに違いない。もう一演目は「真夏の夜の夢」。コジョカルは以前、日本でもアシュトン版を踊っているが、それとは全く異なる作風である。人間の世界と妖精の世界が、衣裳、音楽、ダンススタイルで踊り分けられる、洗練されたモダンな作品だ。ガラ公演などでは、終幕の結婚式の場面が上演されることが多いのだが、ここは全身総タイツの、凛々しくも詩情あふれるタイターニア、妖精の女王を見てみたいものだがどうだろう。
 ノイマイヤー作品に負けず劣らず興味深いのが、スロベニアの振付家エドワード・クルグの「レディオとジュリエット」だ。イギリスのロックバンド、レディオヘッドの音楽に乗せて描かれるロミオとジュリエットである。だが、女性一人男性六人で踊られるこの作品は、シェイクスピアの物語のようには進まない。六人の中には、ロミオやマキューシオを思わせるダンサーもいるが、一方で、誰もがロミオであり、誰もがマキューシオであり、誰もがティボルトであり、誰もが名もなきの青年であるようにも思える。死を間際にしたジュリエットの記憶の断片なのかもしれない。そして「白鳥の湖」と聞いて思いだすのが、昨年の英国ロイヤル・バレエ団来日公演。コジョカルとバレエ団との最後の共演になるはずだったが、怪我の回復が遅れ降板。あれから一年、やっとコジョカルのオデットに出会える時が来た。
 嬉しい驚きは吉田都の出演だろう。Aプロのみの参加だが、ロイヤル・バレエ団に別れを告げた公演でパートナーを務めたスティーヴン・マックレーと再び組んで、「ラプソディー」を踊る。難技満載のステップを小粋にこなすマックレー。豊かな情感が、会場を暖かく包み込むような吉田都の踊り。いまこの作品を踊って、当代最高のカップルではなかろうか。マックレーはBプロでは、ヤーナ・サレンコと「白鳥の湖」から黒鳥のパ・ド・ドゥを踊る。高度なテクニックと確かな演技力を備えた二人だけに、まるで全幕作品を見るかのようなスリリングな舞台が期待できるだろう。
 ローレン・カスバートソンと、前回のこの公演で多くの観客の心をがっちり掴んだワディム・ムンタギロフの「コッぺリア」「パリの炎」も見逃せない。大らかで天真爛漫、生き生きと踊るカスバートソン。ノーブルで朗らか、包容力を感じさせるムンタギロフ。このペアがどんな奇跡を生み出すのか。期待しないバレエファンはいないだろう。
 また、当初予定されていたオシール・グネーオが怪我で降板。代わってオランダ国立バレエ団のイサック・エルナンデスが出演する。ジャクソン国際コンクールの金メダリストで、まだ24歳という若さながら、古典の王子から新進気鋭の振付家作品まで踊りこなすという。現時点では、彼が「ドン・キホーテ」を踊るということしかわかっていないが、新たな才能を目にする幸せな時間が待ち遠しい。
 コジョカルと共に本公演の企画を担うであろうヨハン・コボーが今シーズンから芸術監督に就任したルーマニア国立バレエ団から、フレッシュな顔ぶれが来日するのも楽しみだ。

          

アリーナ・コジョカル
<ドリーム・プロジェクト2014>

会場:ゆうぽうとホール(五反田)

2014年
Aプロ
7月20日(日)3:00p.m. / 7月21日(月・祝)3:00p.m. / 7月22日(火)6:30p.m.
Bプロ
7月25日(金)6:30p.m. / 7月26日(土)3:00p.m. / 7月27日(日)3:00p.m.

【出演】
アリーナ・コジョカル / 吉田 都 / ローレン・カスバートソン / ユルギータ・ドロニナ / ヤーナ・サレンコ / ヨハン・コボー / スティーヴン・マックレー / ワディム・ムンタギロフ / カースティン・ユング/ イサック・エルナンデス / ダヴィッド・チェンツェミエック / 日高世菜 / ロベルト・エナシェ / 堀内尚平 / オヴィデュー・マテイ・ヤンク / クリスティアン・プレダ/ ルカス・キャンベル / 東京バレエ団

【入場料[税込]

S=¥16,000 A=¥14,000  B=¥12,000 C=¥9,000 D=¥7,000
学生券¥ 3,000
*学生券はNBS WEBチケットのみで6/20(金)より発売。
◆ペア割引券[S, A席]あり

【福岡公演】 7/29(火)福岡シンフォニーホール [092-751-8257]

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