夏はめぐろで バレエざんまい！ めぐろバレエ祭り

大人も子どもも、本格的なバレエの魅力を 身近に体感できるチャンス！

「白鳥の湖」＆「ボレロ」／子どものためのバレエ「ねむれる森の美女」

　子どもから大人までがバレエに気軽に親しむ場を設けたい――そんな願いから昨夏企画された〈めぐろバレエ祭り〉。目黒を拠点とする東京バレエ団が中心となり公演、レクチャー、体験イベントなどを展開した。今年はパワー・アップしての開催となる。
　メイン・イベントが東京バレエ団による公演だ。昨年に続く子どものためのバレエ『ねむれる森の美女』はペローのおとぎ話に基づく古典の最高峰を楽しいファンタジーに仕立てた快作。ユニークなのは式典長カタラビュットが語り部として登場すること。昨年の公演ではアドリブも織り交ぜたナビゲートに笑いが起こり、舞台と客席が一体となった。めくるめくファンタジーの世界へと自然に誘う。絵本のような可愛らしいセットからオーロラ姫やデジレ王子、リラの精、青い鳥とフロリナ王子、赤ずきんとおおかみといったキャラクターがあらわれ、チャイコフスキーの名曲にのせて華やかな舞踊絵巻を繰り広げた。
　上演時間は休憩込み1時間40分。コンパクトながらオーロラ姫とデジレ王子の踊るグラン・パ・ド・ドゥなど踊りの見せ場はバッチリおさえている。観易くも妥協を許さない本格的な舞台は全国の家族連れに支持され、各地の劇場からの上演依頼が引きも切らない。今回の会場のめぐろパーシモンホールは同作初演の地であり、ステージと客席が近いアットホームな雰囲気の劇場。沖香菜子＆松野乃知、吉川留衣＆梅澤紘貴というホープ2組が競演するが、ツアーを重ね踊りこんでいるだけに好演が期待できる。納涼バレエにうってつけなのでは。
　さらに今年はなんと『白鳥の湖』第2幕より＆『ボレロ』も上演される。古典と現代の名作を一度に味わえる贅沢な2本立てだ。
　クラシック・バレエの代名詞『白鳥の湖』のなかでも第2幕、月の光に照らされた静かな湖畔の情景は珠玉の名場面である。王子と白鳥に姿を変えられたオデットの運命的な出会い。さまざまに隊形を変化させる白鳥のコール・ド・バレエ(群舞)の透明感のある美しい踊り。初めてご覧になる方でもクラシック・バレエの揺るがぬ様式美を体感できるはず。オデットを渡辺理恵、王子を森川茉央という進境著しいソリストが演じるのも話題。
　20世紀バレエ最大の巨匠の1人モーリス・ベジャールの代表作『ボレロ』は、おなじみラヴェルの同名曲に振付けられている。赤い円卓上の“メロディー”と、その周りを囲む“リズム”が、反復を繰りかえす音楽とともに交感し次第に激しく踊っていく。“メロディー”を踊るのは風格と華やぎを増しているトップ・プリマ上野水香。2004年以降国内外の檜舞台で披露してきた当たり役だ。力強さと繊細さを兼ね備えた踊りから醸し出されるエキゾチックな味わいが魅力的である。高揚感あふれ興奮のるつぼになだれ込む幕切れを体感すると、生でバレエに接する醍醐味の虜になること請け合い。
　この夏、めぐろパーシモンホールが熱い！くれぐれも“祭”に乗り遅れないように!!

（高橋森彦　舞踊評論家）

〈めぐろバレエ祭り〉で公開レッスンを担当する東京バレエ団のプリマ、上野水香。このレッスンに込める思いやプランをうかがいました。

ーー どんなことに重点を置いていますか？

上野：まずいちばん重要に考えているのは、“バレエの基礎”についてです。足のポジションや姿勢、体の動かし方やさまざまな点を厳しく見ます。もし悪いクセがあったり、正しい基礎ができていなかったりしたら、後になって本人がとても苦しむことになる。これは私自身の体験から感じていることなんです。15歳でモナコに留学したとき、徹底的に基礎を叩き込まれました。それまで“踊れる”と思っていたのは、何だったんだろう？っていうくらい…（笑）。でも、やっぱりそれこそがいちばん大切なことなんです。もちろん、今回参加される方がみんなプロのバレリーナを目指しているということではないと思います。でも、それは関係なく、楽しんで踊るためにも、基礎を身につけることは必要なんです。基礎ができていれば、そこから先にはいろいろな選択肢も広がりますから。それに、バレエの動きというのは、日常の動作を美しく見せることにもつながると思うのです。だから、もちろんバレエのレッスンではありますが、それ以外にも、身につけてもらえるものがあるといいな、と思っています。

ーー 実際にはどのように進めていきますか？

上野：まずバー・レッスンをして、そのあと振付を練習して、最後には音楽付きで踊ってみる、という3つのパートになる予定です。90分という時間なので、あれもこれも、と詰め込まずに、「眠れる森の美女」第3幕からの一部ということで。言葉での説明もしますが、私が踊って見せることで伝えられるということが大きいと思います。たとえば、手の動きの表現などでも、プロのダンサーだからできること、ということで、実際に見てもらうことで、納得していただけると思います。参加してくださる方々には楽しく、かつ貴重な体験になるようなレッスンにしたいですね。

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　公開レッスンは8月9日（土）11:00〜12:30 大ホールにて。見学は予約不要、無料。バレエを踊る方はもちろん、踊らない方にとってもレッスン見学は貴重な機会です。