「若手に大役を任せるときには技術や 人間的魅力だけでなく、 過程で自分を成長させていくことができるかも見ます」
「くるみ割り人形」で全幕王子役に初めてのぞんだ梅澤紘貴を指導するマラーホフ。世紀のプリンス、マラーホフ自らが見せる手本は圧倒的! 王子役における感情表現の重要性を指摘しながら、その手の上げ下げ、角度にいたるまで、実に細やかな指導が繰り返される。
――マラーホフさんが演出・振付を行った『眠れる森の美女』は評判の高いプロダクションです。
マラーホフ:1度観た人がその後に何度も観たくなるような作品にしたかったのです。通常版は上演時間がとても長くて、お客様は「終電に間に合うだろうか」とか「明日も仕事があるのに」とか考えて舞台に集中できないものでした。だからプティパ版を元にしながらも、様々な箇所をカットし、それに僕の振付を足しました。通常2度の休憩は1度だけにしました。自分を振付家だとは思いませんが、バレエ作品を再構成するのは得意なのだと思います。
――今回は悪役のカラボス役で出演されますね。
マラーホフ:もともと僕の内側にある役ではありません。僕が普段踊るのは温かみがあってポジティブな役柄ですが、カラボスは意地悪ですからね。自分の身体条件や精神的な安全圏を越えなければなりません。何が自分に合うのか、お客様からどのように見えるのかを探る必要があります。それが充分に出来ると、役柄を通して僕の言いたいことがお客様に理解して頂けるのです。
――『眠れる森の美女』を2月8日に踊る川島&岸本ペアをはじめ、若手ダンサーの登用にも積極的です。
マラーホフ:若いダンサーは将来を担う可能性があるわけですから、潜在能力があると思ったらチャンスを与えてみます。若手に大役を任せるときにはすべてを見ます。技術や人間的魅力だけでなく、過程で自分を成長させていくことができるか、いかに舞台上で振る舞うかも見ます。川島&岸本ペアには光るものがありました。彼らが与えられた機会をモノにできるか見てみようと思ったのです。彼らなら出来ると思いますよ。僕もベストを尽くします。
――マラーホフさんは当代屈指のアルブレヒトと謳われ、『ジゼル』は細部まで知り尽くした作品かと思います。どうやって指導をされますか?
マラーホフ:ダンサーを悩み苦しめるつもりです(笑)。なぜならダンサーはパートナーの痛みを理解し、雰囲気を作り上げることが重要だからです。お客様のほとんどは当然バレエのプロではないですが、技術は分からなくても、雰囲気は伝わります。劇場全体を適切な雰囲気で満たすことができれば、お客様は「わあ」と驚いて下さるのです。
パートナーとのやり取りが最も重要です。特に2幕ではジゼルが幽霊になったことをお客様に理解してもらう必要があります。ジゼルが透けて見えるようにしなければいけません。お客様が理解してくだされば、それは魔法が起こる瞬間です。
――アルブレヒトは典型的な貴公子の役ですが、近年、そういった役柄をこなせるダンサーの数が減ってきているように思います。
マラーホフ:どの業界にも波はあり、いい時とそうでない時があるものです。スターが引退し始めた時に、まだ新しいダンサーが充分に育っていない場合もあります。しかしまた新しい波は必ずやって来ると確信しています。
――2014年には恵まれない境遇のダンサーや振付家を支えるため、マラーホフ財団を設立されたそうですね。
マラーホフ:僕の誕生日である1月7日に設立しました。設立して間もない財団で資金集めには苦労していますが、すでに色々なプロジェクトが始動しています。「タリオーニ アワード−第1回ヨーロッパバレエ賞」という名前の賞を開設し、13部門で賞を授与しました。またキューバのオルギンでは僕の名前でコンクールを始めました。南米の人々は踊りが好きですし、振付家の才能は高いです。しかし全体的な所得は低く、ダンサーは仕事を3つもかけ持ちしている状態です。また子ども向けの教育プログラムの計画もあります。
――東京での新生活はいかがですか?
マラーホフ:水槽を買って鯉を5匹飼い始めました。1匹は金で、1匹はプラチナ色です。僕自身は、バレエ公演やコンサートにもよく顔を出しています。日曜に料理をして、月曜に作ったものを職場に持って来てふるまうこともあります。このあいだはレバーパテを持ってきたのですが、今度は茄子のキャビア風を作ろうと思っています。
――東京を歩いているとファンの方に声をかけられることも多いとか。
マラーホフ:ええ、何度もあります。例えばこのあいだ地下鉄では、後ろに立っていた女性が僕に気づいたのです。僕の周りを左右に動いて、それから意を決したように「あなたは…?」とおっしゃるので「はい、僕です」と答えました。その女性は緊張して僕の名前が思い出せなかったのです!
(インタビュー・文:尾崎瑠衣 バレエジャーナリスト)
会場:東京文化会館
【公演日】
2015年
2月7日(土)2:00p.m.
2月8日(日)2:00p.m.
【予定される主な配役】
オーロラ姫:上野水香(2/7)、 川島麻実子(2/8)
王子:柄本弾(2/7)、 岸本秀雄(2/8)
カラボス:ウラジーミル・マラーホフほか
振付・演出:マリウス・プティパ/ウラジーミル・マラーホフ
指揮:ワレリー・オブジャニコフ
演奏:東京シティ・フィルハーモニック管弦楽団
【入場料(税込み)】
S=¥12,000 A=¥10,000 B=¥8,000 C=¥6,000 D=¥4,000 E=¥3,000
エコノミー券=¥1,500 学生券=¥1,000
*エコノミー券はイープラスのみで、学生券はNBS WEBチケットのみで2015年1月9日(金)より受付。
ペア割引券(S,A,B席)あり。
親子ペア券割引(S,A,B席)あり。
会場:ゆうぽうとホール
【公演日】
2015年
3月12日(木)7:00p.m. [追加公演]
3月13日(金)7:00p.m.
3月14日(土)2:00p.m.
3月15日(日)2:00p.m.
【予定される配役】
ジゼル:スヴェトラーナ・ザハロワ(3/12、3/13、3/15)、 渡辺理恵(3/14)
アルブレヒト:ロベルト・ボッレ(3/12、3/13、3/15)、 柄本弾(3/14)
振付:J.コラーリ/J.ペロー/M.プティパ/L.ラヴロフスキー
指揮:ワレリー・オブジャニコフ
演奏:東京シティ・フィルハーモニック管弦楽団
【入場料(税込み)】
[3/12、3/13、3/15公演]
S=¥14,000 A=¥12,000 B=¥10,000 C=¥7,000 D=¥5,000 学生券=¥2,500
[3/14公演]
S=¥10,000 A=¥8,000 B=¥6,000 C=¥4,000 D=¥3,000 学生券=¥1,500
*学生券はNBS WEBチケットのみで2015年2月13日(金)より発売
★ペア割引 [S,A席] あり
★親子ペア割引 [3/14のみS,A席] あり
[その他の公演]
3月21日(土・祝) 妙高市文化ホール
ジゼル : 渡辺理恵 アルブレヒト : 柄本弾
(演奏は特別編集による音源を使用)
■入場料(税込み)
大人 : ¥5,000 子ども : ¥2,500