スペインの鮮やかな光と爽やかな風を感じさせる光景の下、さまざまなダンスが繰り広げられる『ドン・キホーテ』。闘牛士や踊り子、街の人々の陽気な踊り。情熱のスパニッシュやジプシー・ダンス。妖精たちの優美な踊り・・・めくるめくダンスの洪水は、他のバレエにはめったに見られないゴキゲンな楽しさです。東京バレエ団の『ドン・キホーテ』は、かつて本作を十八番としていたロシアの名スター、ウラジーミル・ワシーリエフがボリショイ劇場の伝統に現代的な感覚を絶妙に融合させたヴァージョン。「一人ひとりが存在感ある演技を」と熱く指導してくれたワシーリエフ自身のように、エネルギッシュで豊かな芝居心に溢れた演出も特徴です。

主演するのは、この『ドン・キホーテ』にまさにふさわしい二組。まず、マラーホフがボリショイ・バレエ学校からベルリンに引き抜いた逸材で、早くも“21世紀最強のプリマ”との呼び声高いポリーナ・セミオノワが本作の全幕に初主演!相手役にはボリショイ・バレエ団きってのプリンス、アンドレイ・ウヴァーロフが決定しました。ともに長身からダイナミックかつ緻密な技を繰り出すこのペアの舞台は、バレエファンなら大きな期待を抱くはずです。そして国内でもっともゴージャスなペアといえば、昨年、本作での活躍が記憶に新しく、欧州ツアーでも喝采を浴びている上野水香と高岸直樹。いずれも最高の主演者を迎えてさらにパワーアップが期待される舞台は、観る人々の“血”をも熱く沸きたたせるに違いありません!

<マラーホフの贈り物>では、『白鳥の湖』の堂々としたオデットから、透明感のあるエロスを表現したロビンズ版『牧神の午後』、『アレス・ワルツ』のシャープなソロまで、多彩な面を見せてくれたポリーナ・セミオノワ。マラーホフに続くベルリン国立バレエ団のスターとして多くのレパートリーに挑戦してきた豊かな経験と、この完成度にしていまだ23歳(!)という若さが放つパワーが彼女を輝かせている。意外にも『ドン・キホーテ』全幕は初挑戦。「屈託のないスペイン娘のキトリは、炎のようなパッションにあふれていて、ストレートに人生と若さを楽しんでいる。プライベートの自分に近いところがあります。バレエ学校時代の憧れだったウヴァーロフさんと組めて、一緒に役作りができるのも光栄だし楽しみ。観客のみなさんに喜びをお伝えしたい!」。
ここ数年、来日するたびに私たちを驚嘆させる成長ぶり。その秘訣は?「自分でわかる変化は微細なこと。演技はやりすぎてはよくないということに最近気づいた、とか・・・。それでも一つの場所に留まらずに、つねに進歩することを目指しています。いつも登り坂とは限らないけれど、つまずいても努力をやめないことが大切。人生も愛もバレエも同じことが言えますよね」誰よりも練習好きな“バレエの虫”。その地道な強さを支えに、世紀のプリマへの道のりを爆走中!

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