神秘のドラマと幻想のダンスでつづる古典バレエの傑作。 大型スター客演、期待の初役と話題満載で初夏に上演!
白鳥の湖全4幕
第1幕
遠くに王宮の見える庭
今日は王子ジークフリートの21歳の誕生日。その成人を祝って宴が催され、王子の友人や領地の若い男女が集い、贈り物を捧げたり、楽しく踊ったりしている。中でも陽気な道化が、あちこちに身軽に出没して愛嬌をふりまき、ひときわ宴を盛り上げている。 そのうち道化は、王子の母君である王妃が貴族たちを従えてこちらに向かってくるのを、いち早く見つけて、人々に告げる。 人々はかしこまって王妃を迎え、王子もまた神妙に王妃の手を取って導く。王妃は微笑を持って出迎えに応え、王子に向かって「明日の晩の王宮の舞踏会には、世界各国の王家からお姫様をお招きしてありますから、その中からおまえの花嫁を選ぶように」と告げる。 やがて王妃は退場し、宴はいっそう賑やかになる。 しかし王子は、王妃の言葉を聞いてから、なぜか心が落ち着かない。まだ王子は女性を愛したことがないからだ。そして、明日の夜への期待と不安が王子の胸を締めつける。 まもなく夕暮れとなり人々が帰ったあと、王子は物思いにふける。そしてふと見上げた空に、夕日の中を飛んでいく白鳥の群れが目に映る。なぜか、その白鳥の群れに心を惹かれた王子は、道化の引きとめるのも聞かず、弓を手に、一人、白鳥が棲むという湖に向かう。 ジークフリート王子:ロベルト・ボッレ
第2幕
月光の冴える静かな湖のほとり
湖にやってきた王子ジークフリートは、そこで世にも不思議な光景を見る。月光に照らし出された静かな湖面を優雅な姿で泳ぐ白鳥たちが、岸にあがると、たちまち若く美しい娘たちの姿になったのである。 王子は妖しい気持ちに駆られ、茂みの中に隠れているが、彼女らの美しさに思わず弓を捨てて近づいていく。娘たちは見知らぬ男の出現に驚き警戒するが、好ましい若者とみて安心する。 その中に、ひときわ気高く、金の冠をつけた乙女が王子の目を惹きつける。乙女の名はオデット姫といい、湖に棲む悪魔ロットバルトの魔法によって白鳥の姿にされてしまったと、悲しい自分たちの身の上を語る。 彼女たちは真夜中だけ人間の姿に戻ることができるが、夜明けとともにまた白鳥の姿になってしまう。この呪いを解くただ一つの方法は、まだ恋をしたことのない若い男性の、いつまでも変わらない愛の誓いだけなのである。 王子は彼女の話を聞くと、ためらわず永遠の愛を誓い、きっと彼女たちを救い出すと約束する。 夜明けになると、醜い悪魔のロットバルトが姿を現わし、乙女たちを湖上へ追い散らす。乙女たちはまた白鳥の姿に変わり、湖に帰っていく。 王子は、それを見て、彼女たちを救う決心をますます固くするのだった。
第3幕
王宮の舞踏会
今夜は、王子ジークフリートの花嫁を選ぶ舞踏会。王妃をはじめ多くの貴族たちの見守る中で、各国の華やかな踊りが繰り広げられる。 そして6人の美しい姫君が花嫁候補として登場するが、王子の心は動かされない。王子の胸には、白鳥姫オデットとの愛の誓いがあるからである。 王子の愛を得られなかった姫君たちの嘆きをよそに、舞踏会はいよいよたけなわ。と、高らかなファンファーレとともに、漆黒の衣裳をまとった艶麗な乙女と、付き添った堂々たる騎士が登場する。悪魔ロットバルトとその娘オディールの二人である。 ロットバルトは、オディールを王妃や王子に紹介し、魔法を使って王子にオディールをオデットと錯覚させる。王子はついにオディールを花嫁として選んでしまう。 そのとき、白鳥姫オデットが庭に姿を現わし、王子の誓いが偽りであったことを嘆く。悪魔ロットバルトはオディールを伴って、王子をあざけりながら意気揚々と去っていく。 王子はすべてを悟り、自分が軽はずみだったことに深い悔恨を覚え、うちひしがれる。舞踏会の混乱をあとに、王子は白鳥姫オデットのいる湖へと急ぐ。 オディール:上野水香
第4幕
もとの湖のほとり
破られた愛の誓いを嘆くオデットと白鳥たちのところへ、王子ジークフリートがやってくる。 王子は、自分のあやまちを詫び、悲運を嘆く。 そうしたところに、悪魔ロットバルトが現われ、白鳥たちを蹴散らし、追い払い、王子をののしって、勝利に酔いしれる。 王子は、かなわぬまでも悪魔と戦い、死をもってオデットたちに詫びようと、ロットバルトに跳びかかる。怒った悪魔は、湖に嵐を呼び起こすが、王子はひるまない。 と、どうしたことか、王子に不思議な力がわき出てとうとうロットバルトの翼をもぎとってしまう。嵐もまた静まる。 悪魔は滅び、白鳥たちは呪いから解き放され、もとの乙女たちに戻ることができた。真実の愛が勝利をもたらしたのである。 折から湖に美しい陽が輝く。永遠の愛を誓いあって、王子ジークフリートとオデット姫は固く抱きあう。 オデット:小出領子、ジークフリート王子:後藤晴雄
Photos: Kiyonori Hasegawa