G.プッチーニ作曲「マノン・レスコー」全4幕

Photo: Silvia Lelli / TOR
恋に翻弄され、オペラの魅力に溺れたいなら――
2018年、オペラ好きはこれで決まり!

アベ・プレヴォーの長編小説「マノン・レスコー」は、男たちを破滅させる「魔性の女」(ファム・ファタール)を描いた最初の文学作品といわれます。魔性の美少女マノンと駆け落ちした騎士デ・グリューの回想によるこの悲恋物語は、1731年の刊行以来、多くの人々の心を掴んできました。プッチーニにとって3作目になるこのオペラ『マノン・レスコー』は、一躍脚光を浴びる出世作となりました。すでにマスネ作曲による『マノン』がつくられていたため、プッチーニはそれとは一線を画し、よりマノンの性格と絶望的な愛に重きを置きました。キアラ・ムーティは、このプッチーニの思いに着目。18世紀末こそが、マノンのような生き方や人格を生んだ時代であり、奔放に生きるしかなかったマノンの悲劇性を描けるプッチーニの『マノン・レスコー』を表現するにふさわしいと考えたのです。一目でマリー・アントワネットが生きた時代と同じとわかる衣裳や美術を採用し、砂漠のイメージをモチーフとして、舞台装置の中に反映させています。

イタリアを代表する指揮者リッカルド・ムーティを父にもつキアラ・ムーティは、女優や音楽活動を経て、オペラの演出を手がけるようになりました。演出家としての力量はすでに折紙つきです。作品のもつオリジナリティを重視する姿勢は、父親譲りともいえます。彼女が演出家としての優れた資質を持っていることを、誰よりも早くから認めていたのは父リッカルド・ムーティだったようです。

指揮はムーティも高く評価するドナート・レンツェッティ。マノン役はクリスティーネ・オポライス、デ・グリュー役はグレゴリー・クンデ、レスコー役はアレッサンドロ・ルオンゴと実力者をそろえた万全の布陣。キアラ・ムーティによる繊細な舞台は、プッチーニが書いた美しい音楽をさらに際立たせます。海外の一流歌劇場による『マノン・レスコー』の上演は、32年前のウィーン国立歌劇場の日本公演以来。オペラ好きにとっての2018年の1本は、これで決まりです!


スタッフ・キャスト

指揮:
ドナート・レンツェッティ

イタリアのトリノ・ディ・サングロ生まれ。1976年シエナのアカデミア・キジアーナより“レスピーギ賞“受賞。1978年エルネスト・アンセルメ・コンクール第3位、1980年ミラノ・スカラ座主催グィド・カンテルリ指揮コンクール優勝。

1982年~87年国際イタリア管弦楽団首席指揮者、1987年~92年トスカーナ地方管弦楽団首席指揮者、2004年~07年リスボン・サンカルロ歌劇場首席客演指揮者、2007年~13年マルキジアーナ・フィル首席指揮者、2015年よりフィラルモニカ・ロッシーニ音楽監督。このほか、ロンドン交響楽団、ロンドン・フィル、フィルハーモニア管、東京フィル、スカラ座管、サンタ・チェチーリア管、リヨン国立管ほかの著名なオーケストラを指揮している。

オペラでは、パリ・オペラ座、英国ロイヤル・オペラ、ジュネーヴ大劇場、バイエルン国立歌劇場、トゥールーズ・キャピトル劇場、メトロポリタン歌劇場、シカゴ・リリック・オペラ、ダラス・オペラ、サン・フランシスコ・オペラ、ブエノス・アイレスのテアトロ・コロンほか、イタリアの主要な歌劇場およびグラインドボーン、スポレート、ペーザロなどの音楽祭などに招かれている。1987年にはアレーナ・ディ・ヴェローナを率い、エジプトのルクソールで『アイーダ』を指揮した。

ローマ歌劇場での近年の指揮には、『愛の妙薬』、新演出の『トスカ』と『セビリャの理髪師』がある。

演出:
キアラ・ムーティ

ミラノ市立パオロ・グラッシィ演劇学校(前・ピッコロテアトロ演劇学校 ジョルジョ・ストレーレルによって設立)で、学んだ。

演劇および映画女優としてのデビューは、1995年モンテヴェルディの「オルフェオとエウリディーチェ」(Micha van Hoecke演出)。これを機に、キアラ自身は女優として、また作品の制作を手がけることとなった。1997年「pèlerinage」、2008年オスカー・ワイルドの「サロメ」、2009年にエウリピデスの「バッコスの信女」がラヴェンナ・フェスティバルで上演された。

女優としてイタリアで数々の賞を獲得するほか、音楽作品における表現者としても意欲的な活動を経て、2012年にはラヴェンナ・フェスティバルでヒンデミット作曲『聖スザンナ』(指揮:リッカルド・ムーティ)でオペラ演出家としてデビュー。翌2013年には、ローマ歌劇場に招かれ、『ディドとエネアス』を、2014年には『マノン・レスコー』を演出した。このほか、2014年にはモンペリエ歌劇場で『オルフェオとエウリディーチェ』を、2016年にはバーリのペトルッツェリ歌劇場の『フィガロの結婚』の演出を手がけた。

現在は、自身のさまざまな経験が活かせることを実感しながら、オペラ演出への情熱を傾けている。

予定されるキャスト

マノン・レスコー:
クリスティーネ・オポライス

ラトビアのレーゼクネ生まれ。生地の音楽院で学んだ。2001年にラトビア国立歌劇場合唱団のメンバーとなり、2003年にソリストになった。

2006年ベルリン国立歌劇場でオペラ・デビューを果たすと、2008年ミラノ・スカラ座とウィーン国立歌劇場、2010年バイエルン国立歌劇場、2011年英国ロイヤル・オペラ、2014年メトロポリタン歌劇場とデビューし、世界中の舞台で活躍するトップ・ソプラノとなった。

レパートリーのなかで、最も高く評価されているものの一つに『蝶々夫人』のタイトルロールがあるが、彼女の声質と情感が最大に発揮されるものはプッチーニの諸役と認められている。たとえばロンドンでは‟現代最高のプッチーニ歌い“(デイリー・テレグラフ紙)と称されたが、それは、蝶々夫人役に加え、『マノン・レスコー』と『トスカ』のタイトルロールへの高評も含まれている。なお、メトロポリタン歌劇場では、2014年に『蝶々夫人』を歌った翌日のマチネで、『ボエーム』のミミを急遽代役として引き受けた。約18時間のうちに2つの主演を歌ったことは、驚異的なエピソードとして知られている。

『マノン・レスコー』のタイトルロールは、オポライスのレパートリーのなかでも重要な役の一つ。ロンドンのほか、バイエルン国立歌劇場、メトロポリタン歌劇場でも新演出で歌い、大成功をおさめている。

レナート・デ・グリュー:
グレゴリー・クンデ

photo: Chris Gloag

アメリカ合衆国イリノイ州カンカキー生まれ。イリノイ州立大学で合唱指導と声楽を学び、1978年にシカゴ・リリック・オペラ『オテロ』のカッシオでオペラ・デビューを果たした。

以来これまでに、メトロポリタン歌劇場、パリ・オペラ座、シャトレ座、ミラノ・スカラ座、フェニーチェ歌劇場、バルセロナのリセウ劇場ほか、欧米の著名な歌劇場で活躍するキャリアは、すでに40年近い。早くから、フランス、イタリアものの優れたベルカント歌手として認められてきたが、近年ではヴェルディの諸役のような劇的なレパートリーにおいても成功をおさめている。数々の受賞があるが、最近のものとしては、2016年の国際オペラ・アワード最優秀男性歌手として選ばれたことが挙げられる。

『マノン・レスコー』のデ・グリュー役は、2016年にビルバオで初めて歌い、2017年にはトリノ王立劇場でも歌った。さらに、ローマ歌劇場日本公演を控えた2018年6月には、バルセロナのリセウ劇場でも歌うことが予定されている。

ローマ歌劇場では、2017年春には新演出『アンドレア・シェニエ』のタイトルロールで成功をおさめた。

レスコー:
アレッサンドロ・ルオンゴ

photo: Francesco Squeglia

イタリアのピサ生まれ。ルチアーノ・ロベルティに師事。アレッサンドロ・コルベッリ、レナート・ブルゾン、ミレッラ・フレーニらからも指導を受けた。

ピサのオペラスタジオで研鑽を積み、2001年ルッカでニノ・ロータ作曲『フィレンツェの麦わら帽子』がオペラ・デビューとなった。

これまでに、ローマ歌劇場、フェニーチェ歌劇場、マドリッドのテアトロ・レアル、ボローニャ歌劇場、ミラノ・スカラ座のほか、モデナ、ピアチェンツァ、ルッカ、フレンツェ、ナポリの歌劇場およびラヴェンナ・フェスティバル、プッチーニ・フェスティバルなどにも出演。

2016年のウィーン国立歌劇場日本公演では、リッカルド・ムーティ指揮『フィガロの結婚』のフィガロを歌った。

ローマ歌劇場では、これまでに『愛の妙薬』のベルコーレ、『フィガロの結婚』のアルマヴィーヴァ伯爵、『ベンヴェヌート・チェッリーニ』のフィエラモスカ、『マリア・ストゥアルダ』のグリエルモ・セシル卿などを歌っているほか、2018年6月には新演出『ボエーム』のマルチェッロを歌うことが予定されている。


指揮: ドナート・レンツェッティ
演出: キアラ・ムーティ
美術: カルロ・チェントラヴィーニャ
衣裳: アレッサンドロ・ライ
照明: ヴィンセント・ロングエマーレ
合唱監督: ロベルト・ガッビアーニ

[予定されるキャスト]
マノン・レスコー: クリスティーネ・オポライス
レナート・デ・グリュー: グレゴリー・クンデ
レスコー: アレッサンドロ・ルオンゴ


ローマ歌劇場管弦楽団
ローマ歌劇場合唱団

※表記の出演者は2018年1月15日現在の予定です。病気や怪我などのやむを得ない事情により出演者が変更になる場合があります。その場合、指揮者、主役の歌手であっても代役を立てて上演することになっておりますので、あらかじめご了承ください。出演者変更にともなうチケットの払い戻し、公演日・券種の変更はお受けできません。最終出演者は当日発表とさせていただきます。