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ウィーン国立歌劇場音楽総監督 フランツ・ウェルザー=メスト インタビュー

2012年5月11日 17:34

『サロメ』を選んだのは、
"ウィーン・フィル"によってのみ可能な、最高の上演を確信するから!



取材・文:山崎睦(在ウィーン 音楽評論家)



音楽総監督としての展望、日本で振る"ウィーンの『サロメ』"の魅力など、4月初旬のインタビューでは、フランツ・ウェルザー=メストの自信と確信が語られました。


Q:まずは3月の叙勲おめでとうございます。"勲一等学術芸術栄誉勲章"はオーストリアでは最高位の勲章であって、いま52才でこの勲章が授けられると、次はどうなるのでしょう。

フランツ・ヴェルザー=メスト(以下FWM):ありがとうございます。じつはこの国の叙勲システムをよく知らないので、将来については見当が付きません(笑)。


Q:ウィーン国立歌劇場の音楽総監督(GMD)に就任されて、ほぼ2シーズンとなりますが、事前の期待と、その後の現実とのギャップについて、どのように考えられますか。

12-05.11_WELSER-MOEST.jpgFWM:私が国立歌劇場にデビューしたのは1987年のことだから、当時のことはともかく、2010年のGMD就任前に、06年からR.シュトラウス『アラベラ』、ワーグナー《ニーベルングの指環・四部作》、『タンホイザー』と続けてプレミエで出しているので、様子はすでに良く分かっていて、いまのポストに就いた後も、ことさらギャップはありません。


Q:国立歌劇場でオーストリア人が音楽面のトップに立つのはカラヤン以来、じつに46年ぶりとなります。世界最高の歌劇場の頂点に当たる地位だから、あらゆる指揮者にとっての究極のポストであることに違いはないですが。

FWM:カラヤンの前にはベームがいて、彼らの同国人の後継者として、たいへん栄誉なことであると同時に大きな責任も感じています。ただ、当時といまでは歌劇場を取り巻く環境がまったく異なるわけで、それらを踏まえたうえで21世紀における前進、充実をつねに考えているところです。


Q:ウィーン国立歌劇場の魅力や特徴について、最高責任者としての見解は。

FWM:歴史、伝統、格式といったこととは別に、まず毎晩の上演内容のレベルの高さに注目すればウィーンに匹敵する歌劇場はないでしょう。たとえばこの3月に限っても、私自身がR.シュトラウス『影のない女』、『トスカ』、ヒンデミット『カルディヤック』を、ド・ビリが『タンホイザー』を指揮し、復活祭の『パルジファル』をティーレマンが準備しています。他に『フィガロの結婚』、『ドン・ジョヴァンニ』、『シモン・ボッカネグラ』、『蝶々夫人』、『愛の妙薬』等を、それぞれ第一線級の歌手で提供しているオペラハウスはないですよ。演目数が年間55程度と数が多いだけではなく、フランス・オペラ、スラヴ物などのバランスといい、素晴らしい充実度を誇っています。


*  *  *  *  *



Q:今回、日本で指揮される『サロメ』に話題を移しましょう。国立歌劇場は1980年に一度『サロメ』を日本で客演していますが、再度上演する意味、またバルロク演出のプロダクションの魅力について。

FWM:私がGMDとしての最初の日本ツァーに『サロメ』を決めたのは、"まずオーケストラありき"ですよ。国立歌劇場管弦楽団は周知のようにウィーン・フィルハーモニー管弦楽団(VPO)と重複していて、このオケあってこそのシュトラウスということを強調しておきたいです。カラヤンはウィーンを退出した後、ベルリン・フィルと多数のオペラをレコーディングしていますが、自分が大切にしていたR.シュトラウスの作品、なかでも『サロメ』に限っては、夏のザルツブルク音楽祭もふくめて、VPO以外とは演奏しようとはしなかったですよね。私も彼とまったく同意見であり、作曲家のイメージした世界が、多様な色彩感、自由で即興的な速度と音量の揺れ、そしてなによりも世紀末の雰囲気をこれほど見事に再現できるのはVPOをおいて他にはないでしょう。ウィーンの『サロメ』こそ、稀代の管弦楽法の名人であったシュトラウスの真髄をつたえるものであると確信します。バルロク制作のステージに関しては、世紀末ウィーンのユーゲントシュティールの画家であり、今年生誕150年になるクリムトを大胆に写した舞台美術・衣裳とあわせて作曲当時の世相である爛熟、退廃した空気感が濃厚に伝わってくる素晴らしいステージです。プレミエから40年経っていることなど、まったく超越していて、VPOの演奏と織りなす絶妙のコンビネーションが今回の『サロメ』の見どころ、聴きどころとなります。


Q:ドイツ人ソプラノで題名役に扮するグン=ブリット・バークミンについて。

FWM:バークミンを、私が直接ウィーンでオーディションして起用することにしました。たいへん個性的で演劇的才能があり、なによりもテキストを舞台に反映させる表現力が非常に優れています。私がサロメ役の歌手に求めるものに、まさに該当するからです。


Q:2007年のチューリッヒ歌劇場との『ばらの騎士』以来、日本ではR.シュトラウス指揮者というイメージが強くなりますが。

FWM:そういうふうに見られることに関しては、むしろたいへん名誉なことだと思いますよ。20世紀のオペラ作家として傑出した彼の作品を演奏するのに最適なVPOを擁する歌劇場で、私が指揮できる境遇にあることを感謝したいほどです。来シーズンに『ナクソス島のアリアドネ』、その先に彼の晩年の『ダーナエの愛』、『エジプトのヘレナ』も取り上げるつもりで、私のこの作曲家に対する偏愛は、いっそう強くなっています。


photo:WienerStaatsoper/Michael Poehn


※NBSニュースvol.303より転載


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