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2016/05/31 2016:05:31:17:42:00

英国ロイヤル・バレエ団2016年日本公演 マリアネラ・ヌニェスインタビュー

人を疑うことを知らないジゼルだからこそ、傷つくけれど愛を貫けた


 1997年の世界バレエフェスティバルにおいて、15歳という若さで華々しい日本デビューを飾り、その後20歳で英国ロイヤル・バレエ団のプリンシパルに上り詰め、天才バレリーナの名前をほしいままにしたマリアネラ・ヌニェス。大輪の花のような陽のオーラを全開にして踊る姿が世界中のバレエ・ファンを虜にしてきたが、長年トップを走り続ける中、ここ数年はその演技に幾層もの深みが加わり、真のアーティストとして、これまでとは別次元の扉を開いたような印象がある。


 『ジゼル』においては、長年ミルタ役を得意としてきたヌニェス。2009年に待望のジゼル役でデビューし、日本で披露するのは今回が初めてになる。「ジゼルを演じる際にまず思い浮かぶのは、彼女はどこまでもピュアな魂の持ち主だということです。1幕のジゼルは、人を疑うことを知りません。彼女自身が善い行いしかしないから、全てを信じることができるんです。だからこそ、恋人の嘘がわかった時、彼女の世界の全てがガタガタと崩れ落ちます。それは彼女の心を打ち砕き、正気を失わせ、しまいには自ら命を絶ってしまう。そして私は、そんなジゼルだからこそ、2幕でウィリとなったあとも、その純粋さを保ち続けることができるのだと解釈しています。彼女は何があっても、心から人を愛することができる、善良な魂なのです」


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 今回の『ジゼル』の相手役は、2014年に英国ロイヤル・バレエ団に入団した若きロシア人スター、ワディム・ムンタギロフ。今年3月の『ジゼル』公演では、長年英国ロイヤル・バレエ団を牽引してきたヌニェスと新進気鋭の若手プリンシパルというフレッシュな組み合わせに、ロンドン中のバレエ・ファンの注目が集まり、その模様は映画館で生中継もされた。ヌニェスも「彼はパーフェクトなアルブレヒト役」とムンタギロフを大絶賛する。


ティアゴとは、今、かつてないほど良いパートナーシップを築けている


 一方で『ロミオとジュリエット』のジュリエット役は、早熟なヌニェスのキャリアを考えると、意外にもロールデビューは遅く、長い間待ち焦がれた役だったという。「今は、ドラマ、愛、情熱、そういったことが全て理解できるようになった20代後半というベストなタイミングでこの役を踊れたことに感謝しています。特にマクミラン版の『ロミオとジュリエット』は踊るたびに本当に素晴らしいプロダクションだと感じますね。ティアゴ(・ソアレス)とは、もう何度も何度も一緒に踊ってきた作品です。我々はずっと良き友人同士で、お互いを尊敬しあっているからこそ、今、かつてないほど良いパートナーシップを築けています。また私たち二人の『ロミオとジュリエット』を日本のお客様にお見せできるのを、本当に楽しみにしています」


取材・文:實川絢子(ライター)


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