英国ロイヤル・オペラ 2015年日本公演

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英国ロイヤル・オペラ 開幕記者会見 開催

インタビュー・レポート 2015年9月12日 03:16
 英国ロイヤル・オペラの5年ぶり5回目の日本公演の初日を明日に控えて、本日(9/11)開幕記者会見が行われました。登壇したのは、英国ロイヤル・オペラハウス支配人のアレックス・ベアード、英国ロイヤル・オペラ音楽監督のアントニオ・パッパーノ、オペラ・ディレクターのカスパー・ホルテン、そして『マクベス』に主演するサイモン・キーンリサイドとリュドミラ・モナスティルスカ、『ドン・ジョヴァンニ』に主演するイルデブランド・ダルカンジェロ、ジョイス・ディドナート、ローランド・ヴィラゾンと、華やかな顔ぶれを揃えて行われました。

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 挨拶の口火を切ったベアードは、まず「ロイヤル・オペラハウス(ROH)と日本はたいへん良い関係を築いています」と話し、その背景を、「定期的なロイヤル・バレエ団の来日公演や、ロイヤル・オペラの過去4回の来日の実績はもとより、私たちのフェイスブックやYouTubeに関わる数がイギリス、アメリカに次いで多いのが日本です。またツイッターのフォロワーは、ドイツとフランスを足した数よりも日本のほうが多いのです」と実務家らしい根拠をもって説明しました。
 
 前回公演と同様に二つの演目で指揮をする音楽監督パッパーノは「今回、いずれも私自身の心に近い2作品を上演できるのは大きな挑戦であり、喜びです。アイコン的な主人公を中心に展開する官能的な『ドン・ジョヴァンニ』。ヴェルディ、シェイクスピアという二人の天才による『マクベス』。両作品とも超常的なもの─ミステリーや死者との邂逅を描いている点で同じ様相を備えているのです」と独自の視点を語り、「ROHはオーケストラ、合唱、技術スタッフの全員が来日しており、そしてこのテーブルにそろった才能溢れるアーティストたちの顔ぶれを見るにつけ、このような好条件の下で指揮ができる自分は本当に運がよいと実感しています」と公演への自信のほどを示しました。

 いっぽうオペラ・ディレクターのホルテンは、『マクベス』について「英国人演出家フィリダ・ロイドによる演出ですが、そこには日本やアジアの方々にも通じる美的世界が展開されています。物語の核となるのはある夫婦の力関係と葛藤。歌うのは最高の歌手たち─キーンリサイドとモナスティルスカです」と説明した後、自身の演出による『ドン・ジョヴァンニ』について、「中心となる人物像を描きだし、その心理が浮き彫りになるよう心がけました。彼らは何者なのか、何に魅せられているのか、ドン・ジョヴァンニの本質とは何なのかといったことを、新しいテクノロジーを使って表出させようと試みました。しかし仕掛けはドラマの本質や歌手たちを支えるものに過ぎません。優れた歌い手ダルカンジェロが演じるドン・ジョヴァンニは、このプロダクションではある意味において現実味があり悲哀を感じさせる人物です。ディドナートは魅力的で真実味のある女性を表現すると同時に、ドン・ジョヴァンニにとって最後のチャンスともいえる愛の本質を表現します。ローラン・ヴィラゾンが歌うドン・オッターヴィオもまた、物語のリアリティを際立たせるために重要な役割を担っています」と、詳細な解説を加えました。

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 つづいて主演のソリストたちが挨拶。『マクベス』で表題役を歌うキーンリサイドは、「日本の映画監督である黒澤明はシェイクスピアを愛してやまなかったと聞いています。その意味で今回は日本の観客の皆様の趣向にあった舞台をご覧いただけるのではないでしょうか」。マクベス夫人役のモナスティルスカは「5年前に一度来日して日本の温かい歓迎に心を打たれました。今回、ロイヤル・オペラ公演で再び日本を訪れることができて嬉しく思います」。
 
 『ドン・ジョヴァンニ』表題役を演じるダルカンジェロは、「演出家のアイデアをいかに具現化するかが課題。過去に演じた解釈を忘れて取り組むことは簡単ではないが、こうして素晴らしい共演者がいるし、なによりも今回はマエストロ パッパーノが指揮を振ってくださいます」と公演への意欲を見せました。ドンナ・エルヴィーラ役のディドナートは「世界で危機的状況が起こる中、自分には何ができるのかと自問するの。でもアメリカ人の私のほかに、ここにはイタリア、イギリス、メキシコ、ロシアと各国を代表するアーティストが並び、聴衆も含めた多くの人たちが、国を超えて、人類が成し得た最高の芸術であるオペラを分かち合うのだと思いを馳せると、思わずこみ上げてくるものがあるわ」と熱い胸の内を語りました。最後にドン・オッターヴィオ役のヴィラゾンは、「マエストロ パッパーノは音楽を知り尽くしていると同時に、彼の音楽には真実のドラマがある。そこが彼の指揮するオペラの魅力です。ジョイスさんが語った通り、集うべくして集った才能が一つになる場は美しい。そして私自身は常々日本の文化に感銘を覚えています。日本の作家の文学もたくさん読みましたが、何より気に入っているのは『トトロ』です!」とサービス精神たっぷりに会場を盛り上げました。



photo:Rikimaru Hotta





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