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2005年2月13日(日)2:00pm
J.S.バッハ:平均律クラヴィーア曲集 第1巻 24の前奏曲とフーガ
2005年2月15日(火)7:00pm
J.S.バッハ:平均律クラヴィーア曲集 第2巻 24の前奏曲とフーガ
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もう15年も日本でリサイタルを開いていないのか、というのが率直な気持ちである。1987年にあの伝説的なベートーヴェン・ピアノ・ソナタ全曲演奏を行って、ピアニストとしての〈完熟〉を強く印象付けたのはつい昨年のことのように思い起こされる。その後、1990年には、バッハ、ベートーヴェン、リストの作曲家ごとの3プロ、それとブラームスの2曲のピアノ協奏曲を演奏している。その後は協奏曲の弾き振りは披露してくれているものの、確かにリサイタルは開いていない。
1990年代からだろうかインタヴューするたびに、マエストロの口から必ずといって良いほどピアニストとしての活躍に重きを置きたいと聞かされてきた。けれども、ベルリンとシカゴのポストを兼任している彼にとって、ピアノ・ソロに割く時間は限られていたというのが実情だろう。2002年、リンデン・オーパーでワーグナーの主要10作品チクルス上演という前人未到の快挙を達成した後、ようやく彼は本格的にリサイタル活動に復帰してきた。
2003年6月にはニューヨーク、2004年4月から5月にはウィーンでベートーヴェンのソナタ全曲演奏を行い、いずれも大成功を収めている。そして、2004年6月末にルール音楽祭で弾いたのがバッハの「平均律クラヴィーア曲集」第1巻全曲である。その後、ライプツィヒ、ベルリン、ブエノス・アイレスでもとりあげたピアニストとしての彼が今もっとも自信を持っているプログラムである。先頃リリースされたディスク(ワーナー・クラシックス)もピアニストとして更なる高みにのぼり詰めたことを実証する真に感動的なものだ。
ピアノの作品において、バッハの「平均律」曲集は「旧約聖書」、ベートーヴェンの32のソナタは「新約聖書」に例えられる。バレンボイムは「旧約聖書」を少年時代から弾きこんできた。けれども、コンサートで演奏したという話は、若い頃については定かではないが少なくとも円熟期以降は聞いたことがない。満を持して「旧約」を世に問うたわけである。
チェンバロでの演奏が一般的となった今日、ピアノでバッハを弾くことに抵抗を感じる人も少なくないだろう。私も並のピアニストが弾くバッハには耐えられないことがしばしば。けれども、バレンボイムは別格だ。指揮者としての深い経験に裏づけされた豊穣な世界、それはピアノという楽器が持つ表現力の極限まで突き詰めたものといえるだろう。また、「第2巻」についてはおそらく東京が彼にとって初めての演奏地になる模様。バレンボイムが好む記念碑的なプロジェクトが東京で全貌をあらわす。
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