シルヴィア

“ロイヤル・スタイル”と呼ばれる独特の優美な様式を生み出し、英国バレエ界でもっとも尊敬されている振付家、フレデリック・アシュトン。英国ロイヤル・バレエ団の創設時から活躍し、洗練された秀作を次々と送り出した彼は、全幕バレエを作るにあたって、尊敬する古典バレエの巨匠プティパの調和美やロマンティシズムの精神を自作に生かしました。
 『シルヴィア』は1952年、マーゴ・フォンテイン主演で初演された、アシュトンの2作目の全幕バレエです。もとは19世紀パリで初演されたロマンティック・バレエ。エレガントで心浮き立つドリーブの音楽にのせて、ギリシャ神話の世界の中に、女神ディアナに仕えるニンフのシルヴィアと牧童のアミンタの恋と試練が描かれます。狩の女神のニンフそのままに弓矢を手に踊る、美しく男勝りなシルヴィアと、彼女を慕うアミンタ。恋人たちの運命を左右する邪悪な狩人オリオン。対立する愛の神エロスと女神ダイアナ。個性的な登場人物たちを中心に、ニンフたちの颯爽とした舞いや幻影の場面、そして最終場の優雅なパ・ド・ドゥまで、華麗な舞台が繰り広げられます。
 長く埋もれていたこの作品は、2004年、アシュトン生誕百年シリーズに際して改訂を施されながら復元され、40年ぶりにそのヴェールを脱いだのです。英国のバレエ界が期待した、英国独自の魅力を称えた美しい舞台が、もうすぐ日本でもお目見えします!