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Photo: WIENER STAATSOPER-Michael Poehn

2021/02/03(水)Vol.415

フィリップ・ジョルダンが語る『ばらの騎士』
クラシック音楽の歴史の大きな到達点(後編)
2021/02/03(水)
2021年02月03日号
TOPニュース

Photo: WIENER STAATSOPER-Michael Poehn

フィリップ・ジョルダンが語る『ばらの騎士』
クラシック音楽の歴史の大きな到達点(後編)

シュトラウスのオペラの登場人物のなかで、マルシャリンは偉大な哲学者として解釈されています。しかし、機嫌が悪いことに悩まされる存在であるなら、もっと人間らしくとらえるべきなのでしょうか?

ジョルダン:そのとおりです! そして彼女はまた狡猾さも持ち合わせています。私はこの点に関して持論があります。彼女は第3幕に登場する警部を以前から知っていてこう言います。「あなたは元帥閣下の勇敢な伝令でしたね?」私は彼が第1幕で一度だけ言及された、元帥が彼女の浮気を押さえた事件に関わっていて、そのために郊外の警部に左遷されたと考えています。「勇敢な」伝令とは意味深長な言い方なのです。マルシャリンにとって女性として最高に生き生きとしていた時代の出来事でした。元帥がクロアチアの森で狩りたてたのは、熊やオオヤマネコだけではなかったのです。こうした出来事は現実にもありがちで、いつもそれほど悲劇的に語られることはありません。マルシャリンのすばらしい瞬間は第1幕の二つのモノローグではなく、オペラの終盤、彼女がゾフィーのためにオクタヴィアンを解放する、「彼をそんなに愛しているの」です。音楽もまた強調されています。

『ばらの騎士』第3幕より Photo: WIENER STAATSOPER-Michael Poehn

ホーフマンスタールが述べている「コントラストのハーモニー」とは、そういう意味なのでしょうか?

ジョルダン:そうですね。人間的なものと特別なもの。それは登場人物たちにあらわれます。登場人物たちがとても多彩でコントラストに富んでいるように。

シュトラウスとホーフマンスタールは、『アラベラ』で新しい『ばらの騎士』を作ろうとしたのでしょうか? シュトラウスによれば『ばらの騎士』の「欠点と冗長さ」を抜いて。「欠点」をあげるとしたら、どこにあるのでしょうか?

ジョルダン:私はそこについては、シュトラウスに同意できません。『アラベラ』はすばらしい作品で、私も大好きなのですが、しばしば『ばらの騎士』の焼き直しといった印象を受けることがあります。『アラベラ』はとてもすばらしい。しかし『ばらの騎士』はオペラの歴史のなかでもっとも重要で偉大な到達点であり続けているのです。

聞き手:オリヴァー・ラング(ウィーン国立歌劇場ドラマトゥルク)/翻訳:寺倉正太郎

The interview was made by Oliver Láng, dramaturge at the Wiener Staatsoper, with Philippe Jordan on the occasion of the musical revival of "Der Rosenkavalier" at the Vienna State Opera.

*1回目はこちらから

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