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Photo: Silvia Lelli

2021/05/19(水)Vol.422

リッカルド・ムーティ近況
2021/05/19(水)
2021年05月19日号
TOPニュース

Photo: Silvia Lelli

リッカルド・ムーティ近況

ウィーン・フィルを率いてイタリアでの再開コンサート!
トスカニーニの因縁か? 5月11日にスカラ座に登場!

東京における緊急事態宣言の解除と再発出のちょうど中間に、〈東京・春・音楽祭〉でのリッカルド・ムーティ・イタリアオペラ・アカデミーのすべての日程と演奏会を終えたマエストロは帰国後も精力的に活動を続けている。ヨーロッパ各地でロックダウンが続き、多くのコンサートが中止された中でイタリアはいち早く緊急事態が緩和され、4月26日に劇場が再開された。おかげで、ウィーン・フィルのヨーロッパツアーはイタリアの三都市のみ開催することができたのである。このヨーロッパツアーはマエストロの80歳とウィーン・フィルとの初共演から50周年を記念する意義ある公演だったため、実現できたのは幸いだった。

昨年6月21日、イタリアでの演奏会再開第一号としてムーティが10年以上にわたり心血を注ぎ育て上げたルイージ・ケルビーニ・ジョヴァニーレ管弦楽団(ケルビーニ管)と共にその本拠地であるラヴェンナ・フェスティバルでのオープニングを飾ったマエストロだが、去る5月9日にラヴェンナで行われたウィーン・フィルとのコンサートは、今年もまたイタリアにおける演奏会再開第一号になった。ウィーン・フィルにとっても、観客を前に演奏するのは昨年秋の東京での公演以来。観客は250名と制限されたため、ラヴェンナではプログラムを二分して17時からと20時からの2回公演にし、より多くの観客がライヴを楽しめる配慮をした。

翌10日はフィレンツェで、そして11日にはミラノ・スカラ座でこのミニツアーは終わったのだが、5月11日というのは偶然にもスカラ座にとって記念すべき日であった。75年前の1946年5月11日、第二次世界大戦で破壊されたスカラ座が再建され、スカラ座との深い絆を持ち、イタリアの国民的指揮者であるアルトゥーロ・トスカニーニによって再開されたのだ。そして1996年5月11日にマエストロ・ムーティはスカラ座再開50周年を記念して、このトスカニーニの演奏会と同じプログラムで演奏している。「トスカニーニのアシスタントだった(アントニーノ・)ヴォットに師事してトスカニーニの教えを叩きこまれ、尊敬し続ける私に、この偶然が重なったことに感動を覚えます」と語ったマエストロ。スカラ座のマイヤー総裁は是非オペラを振って欲しいと懇願したそうだが、果たして実現するだろうか?

スカラ座はこの前日にシャイー指揮で199日ぶりに劇場を再開した。それまでは無観客でストリーミング配信だったため、プラテア(平土間)の座席を外して、オーケストラを配置していた。マエストロ・ムーティもパルコ席(ボックス席)の観客を前にプラテアに設置された指揮台で演奏した。演奏者も観客も一体になって感動的な一夜となったことは間違いない。このコンサートは7月28日マエストロの80歳の誕生日にイタリア国営放送で放映される。

リッカルド・ムーティ指揮ウィーン・フィル 
(ミラノ・スカラ座での5月11日のコンサートより)
Photo: Silvia Lelli

「コロナ禍で、音楽監督を務めるシカゴ響とは1年以上も顔を合わせていないし、予定していたプログラムもそのままに月日が経っていくことがとても残念。でも、物事をポジティヴに考えることも大事だと思う。長い休みの間に、畏敬の気持ちが強くてなかなか近づけなかったベートーヴェンの『ミサ・ソレムニス』に取り組むことが出来た。今年のザルツブルク音楽祭で初披露するために勉強を続けている」と言うマエストロ。6月にはヴェローナで『アイーダ』(初演から150年)も予定されている。音楽家としての「使命」を全うするマエストロは多忙を極めている。

文 田口道子

客席が取り払われた平土間にオーケストラが配置されている
(リッカルド・ムーティ指揮ウィーン・フィル演奏会/ミラノ・スカラ座 5月11日のコンサートより)
Photo: Silvia Lelli

◾️ ムーティ&ウィーン・フィルのコンサートの模様はミラノ・スカラ座のFacebookページで紹介されていますhttps://www.facebook.com/teatro.alla.scala