【ミラノ・スカラ座】『ファルスタッフ』アンブロージュ・マエストリ インタビュー

2013年4月 9日 11:25

ミラノ・スカラ座日本公演『ファルスタッフ』で、自身最高の当たり役、ファルスタッフを演じるアンブロージュ・マエストリ。これまで実に150回もこの役を演じてきたマエストリのインタビューをお届けします。



13-04.09Scala01.jpgアンブロージュ・マエストリ

ファルスタッフを演じることは
私にとって人生を教えられること。
ファルスタッフの奥にある人生の教訓を
私自身が楽しんで演じることで、
お客さんにも楽しんでもらえると感じています。





――現在、世界中でファルスタッフ役を演じられ、最高の当たり役と評されていますが、ご自身にとって、ファルスタッフを演じるとは?

マエストリ:この役でデビューしたのは2001 年のスカラ座でした。指揮はマエストロ・ムーティで、大変勉強させてもらえましたが、自分自身は必死で、役作りに大変苦労しました。それから12 年、150 回もの公演を経験して、今ではファルスタッフを演じることが楽しくなってきました。私が楽しんで演じていると、お客さんにも楽しんでもらえると実感するようになりました。ファルスタッフの人生は酒好き、女好き、大食漢とばかり考えられてしまいますが、その奥には人生に対する教訓が示されていると思います。ファルスタッフを何度も演じることによって、私自身の人生にも重ねてみて、色々な考え方をするようになりました。ヴェルディが望んだように音色を考えながら演じるのは大変難しいことですが、オペラ歌手としての冥利に尽きる役でもあります。特に私の場合、衣裳の下に肉布団をつける必要もないし、体型は全て本物ですからね(笑)。

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――あなたにとってスカラ座でのファルスタッフは特別な意味を持つものですか?

マエストリ:スカラ座の『ファルスタッフ』、今回の2013 年はヴェルディの生誕200 年祭での公演ですが、私がデビューした2001 年は没後100年の催しの公演でした。このような記念の年に、ほかでもないスカラ座で、ヴェルディの最後の作品で主役を歌えることを光栄に思っています。


――ロバート・カーセン演出の魅力は、どのような点にあると思われますか?

マエストリ:今回のカーセンの演出はロンドンで最初に公演されています。この役について随分と話し合いました。私は私なりのファルスタッフ像を持っていたのですが、カーセンの演出ではファルスタッフをイタリアンではなく、ブリティッシュとしてとらえているという点で随分と考え方の違いがあったのです。でも、カーセン演出はコミックでありながら、マリンコニック(哀愁)なところも大変意識していて、とても詩的に仕上がっていることを納得しました。特に第3 幕第1 場で馬と対話するところなどは大変感動的です。それまでやりたい放題行動してきたファルスタッフがコミカルな表現からマリンコニックな表現に変わるところは人生を省みるようで、ヴェルディ自身の人生にも重ねているように感じます。ヴェルディが「オテロまでのこれまでの作品は観客のために作曲してきたけれど、ファルスタッフは私自身のための作品だ」と言っているように、この演出は奥深いものがあると思います。

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――ファルスタッフを演じる上で、特に難しいことは?

マエストリ:音楽的には声をフルに使うことからファルセットやピアニッシモまで音色の使い分けをすることが要求されています。ほかの作品のように朗々とアリアを歌うのではなくテクニックをフルに活用して感情の表現をしなくてはなりません。演技に関しても、老齢でありながら軽やかに動くこと、孤独を感じ、孤独を恐れる感情をいかに表現したらよいかなど難しいことはたくさんあります。最近、以前にはうまく表現できなかったことがだんだんできるようになってきたと感じています。


――堂々たるファルスタッフの来日を楽しみにしています。


[インタビュー:田口道子/2013年1月20日 スカラ座楽屋にて]




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