【ウィーン国立歌劇場】もっと知りたい!歌手紹介⑪

インタビュー・レポート 2016年10月19日 15:31


10月25日(火)に初日を迎える「ナクソス島のアリアドネ」。新たなキャストとしてステファン・グールド、ステファニー・ハウツィールが日本公演に臨みます。期待の2人の歌手を音楽評論家・奥田佳道さんの解説でご紹介します。


ステファニー・ハウツィール  Stephanie Houtzeel
(「ナクソス島のアリアドネ」メゾソプラノ/作曲家)


ウィーン国立歌劇場から羽ばたいた新時代のメゾソプラノ


 ウィーン国立歌劇場から羽ばたいた新時代のメゾソプラノに拍手を。
「ナクソス島のアリアドネ」プロローグのキーパーソンである作曲家役は、今回のベヒトルフ演出で2013年に歌っているばかりでなく、前のプロダクションでも2011年の春から秋にかけて歌っている。十八番の十八番だ。ちなみにこの作曲家、今演出ではオペラの後半でも「活躍」しそう。

1916年初演時のロッテ・レーマンに始まり、ゼーフリート、ルートヴィヒ、バルツァ、アン・マレイ、ヒンターマイヤー、オッター、コッシュらによって歌い継がれてきた「ウィーン国立歌劇場の作曲家」は今、アメリカのメゾソプラノ、ハウツィールに委ねられようとしている。


Houtzeel (c) Julia Wesely.jpg

Photo:Julia Wesely


ドイツ・カッセル生れのボストン近郊育ち。ニューイングランド音楽院とジュリアード音楽院で学び、2010/11年のシーズンよりウィーン国立歌劇場と契約。「魔笛」の第2の侍女でデビュー後、ただちにライマンの「メデア」、「ばらの騎士」のオクタヴィアン、「コジ・ファン・トゥッテ」のドラベッラを任された。作曲家も2011年春に歌っている。

同年、フランツ・ウェルザー=メスト指揮のヤナーチェク「カーチャ・カバノヴァ」新演出のヴァルヴァラ役で喝采を博す。そして2013年、ザルツブルク音楽祭にズービン・メータ指揮「ファルスタッフ」のメグ・ペイジ夫人でデビュー。彼女の名前は世界に発信された。

これまでにドレスデン国立歌劇場、チューリヒ歌劇場、パリ・オペラ座(パリ国立歌劇場)、フランス国立リヨン歌劇場、イスラエル歌劇場などに客演。前述のオクタヴィアン、ドラベッラのほか、「セビリャの理髪師」のロジーナ、「ホフマン物語」のニクラウス、「ファウストの劫罰」のマルグリート、「ウェルテル」のシャルロッテ、「こうもり」のオルロフスキーなどで客席を沸かせている。いっぽう「ワルキューレ」「神々の黄昏」「パルジファル」、「影のない女」のアンサンブルにも欠かせない。

CDにテオドール・クルレンツィス指揮のモーツァルト「レクイエム」、ヘンデルのカンタータなど。今年5月、チャールズ・スペンサーのピアノでソロ・アルバム「ノスタルジア」をリリースした。

ハウツィールはこの10月、ウィーン国立歌劇場でグルックの「アルミード」新演出(マルク・ミンコフスキ指揮レ・ミュジシャン・デュ・ルーヴル)の前半日程に出演した後、同歌劇場日本公演の最初の演目であるヤノフスキ指揮の「ナクソス島のアリアドネ」に手を差し伸べることになった。ドミニク・マイヤー総裁たっての要請だ。ヤノフスキとはこの夏、バイロイト音楽祭で顔をあわせている。

舞台は整った。喝采が早くも聞こえるかのよう。


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