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公演概要 ファルスタッフ トゥーランドット フィレンツェ歌劇団 ニュース
フィレンツェ歌劇場
2006.08.24 フィレンツェ歌劇場『ファルスタッフ』キャスト変更のお知らせ
2006.06.09 フィレンツェ五月音楽祭『ファルスタッフ』公演評
2006.06.01 フィレンツェ五月音楽祭『ファルスタッフ』速報!
2005.12.03 『トゥーランドット』演出 チャン・イーモウ インタビュー
 
フィレンツェ歌劇場『ファルスタッフ』のナンネッタ役で出演が予定されておりましたマリオラ・カンタレーロは、健康上の理由により今回の日本公演に参加することができなくなりました。カンタレーロに代わり、ナンネッタ役は、ステファニア・ボンファデッリ(9/11,13,16)ジェンマ・ベルタニョッリ(9/18)が演じます。何卒ご了承ください。
ステファニア・ボンファデッリは、当初「ファルスタッフ」のナンネッタ役で出演を予定しておりましたが、体調を崩して本年5月のフィレンツェでの「ファルスタッフ」初演に参加できなかったことから、日本公演への参加も見送られておりました。その後、順調に回復して参加できる状態となり、今回の出演が決定いたしました。
フィレンツェ歌劇場『ファルスタッフ』予定されるキャスト
ファルスタッフ: ルッジェーロ・ライモンディ(9/11,13,18)
ジョルジョ・スリアン(9/16)
フォード: マニュエル・ランサ
フェントン: ダニール・シュトーダ
医師カイウス: カルロ・ボージ
バルドルフォ: ジャンルーカ・フローリス
ピストラ: ルイジ・ローニ
アリーチェ: バルバラ・フリットリ(9/11,13,16)
セレーナ・ファルノッキア(9/18)
ナンネッタ: ステファニア・ボンファデッリ(9/11,13,16)
ジェンマ・ベルタニョッリ(9/18)
クイックリー夫人: エレナ・ジーリョ
ページ夫人メグ: ラウラ・ポルヴェレッリ
※表記の配役は2006年8月24日現在のものです。病気等やむを得ない事情により、さらに配役に変更が生じることもありますので、あらかじめご了承ください。尚、出演者および配役の変更にともなう払戻し、公演日の変更はできません。正式な配役はすべて当日発表となります。
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2006年5月15日付
LA STAMPA(ラ・スタンパ) ジョルジョ・ペステッリ
 白日夢のようなポエジーが随所に光る、才気にあふれた、一級品の《ファルスタッフ》。
 笑劇(ファルス)じみたところは微塵もなく、それでいて少しも気取らない娯楽性に満ちたコメディーをルカ・ロンコーニは作りあげた。
 熟練の作曲術がいたるところにうかがえるヴェルディのスコアを読み解くメータの音楽の優美さは、あいかわらずみごとなものだ。そこには、一歩先をゆくヴィジョンのもとで喜劇性と抒情性が溶け合った、最も高度な意味における喜劇が出現する。そして、それはロンコーニのヴィジョンとも絶妙に調和する。
 その白眉となるのが最終幕。ロンコーニの演出により、マルゲリータ・パッリの舞台美術は、ベッドで眠るファルスタッフ一人を残して、一瞬のうちにかき消え、自然の風景が現れる。秋の森の魔法にかかったかのように、樫の木の上で眠りつづけるファルスタッフ。じつに美しい演出だった。 
 
2006年5月15日付
IL TEMPO(イル・テンポ) ピッロ・ドナーティ
 舞台のすべてが、アリゴ・ボイートの台本の喜劇性をさらに際だたせるロンコーニの繊細な演出を生かしていた。ロンコーニは登場人物たちの関係を彼特有の緻密な心理分析と軽やかさによって描き出す。ロンコーニの喜劇センスが最も巧みに表現されていたのが、ファルスタッフが汚い衣裳のままテームズ川に放り込まれる、秩序あるカオスともいうべきあの崇高な場面である。
 第3幕は、マルゲリータ・パッリの美術の力も加わり、インパクト満点。ファルスタッフの部屋は見るまに解体され、ウインザーの森に早変わりする。ベッドに眠るファルスタッフの姿は、最後のどたばた騒ぎが彼の夢の中のできごとだったと匂わせる演出だろう。 
 
2006年5月14日付
il Corriere di Firenze(イル・コッリエーレ・ディ・フィレンツェ) ドナテッラ・リギーニ
 40年のヴェルディの作曲歴のなかでただ一度だけ書かれた喜劇のタイトルロールを演じたルッジェーロ・ライモンディは、現在求めうる最高のファルスタッフを見せてくれた。大ベテランでありながら、ビロードのように滑らかな声は今なお健在であり、この役柄がまさにライモンディのはまり役であることを実感させた。「人生はみな芝居だ」と喝破する零落の騎士ファルスタッフのユーモアを、ライモンディはあますところなく表現した。 フィレンツェ五月音楽祭との共演30周年を迎えたルカ・ロンコーニのエレガントで知的な演出にはひときわ大きな拍手が巻き起こった。
 
2006年5月14日付
il Giornale(イル・ジョルナーレ) マルチェッロ・デ・アンジェリス
 フィレンツェ五月音楽祭管弦楽団の演奏は、ヴェルディの究極のメッセージのなかに含まれたまぎれもなく本物の音楽的発想を、これ以上望めない形で現実のものにした。メータは単に音を磨きあげただけでなく、鋭利な音の構造をさらに際だたせることに成功した。音の響きにおいてもリズムにおいても、五月音楽祭管弦楽団は、あくまでも澄みきったフレージングによって、ヴェルディの意図をよみがえらせた。
 ルッジェーロ・ライモンディは伝説的ともいうべき舞台演技の能力を最大限に発揮し、「太鼓腹」ファルスタッフをあますところなく描き出した。
 
2006年5月14日付
il manifesto(イル・マニフェスト) アッリーゴ・クワットロッキ
 今回の舞台で特に説得力があったのは、行き過ぎた悪ふざけが一切なかった点、そして、背後に常に人生の苦さや不実を隠しながらも、コミカルでアイロニカルな喜劇のリズムを追求した点である。
 最終幕の宙に浮かんだベッドは、まさにポエティックかつ魅惑的で、夢幻の世界をかいま見せるアイデアであり、それと同時に、周囲から浮いたファルスタッフの孤立ぶりをみごとに形象化している。
 メータはヴェルディのスコアの中に、ほとんど弦楽室内アンサンブルのような音のからみ合いや、管楽器の陰影に満ちた色彩によって、繊細きわまりない器楽のテキスチャーをみごとに浮き彫りにする。
 圧倒的な存在感のルッジェーロ・ライモンディ以外では、アイロニーをたっぷり盛り込んだバルバラ・フリットリの演技が出色のできばえ。カルロ・ボージ、ジャンルカ・フローリス、ルイージ・ローニの3人も大健闘。
 
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 フィレンツェの一年のうちで、最も美しい時期に開催されるのがフィレンツェ五月音楽祭。その美しき町で5月12日、日本公演にやって来る『ファルスタッフ』が初日を迎えました。初日にはテアトロ・コムナーレの入り口にいくつもの大きなつつじの花の鉢が置かれ、オペラを愛する人々を華やかに迎えます。
さて、では早速、ズービン・メータが五月音楽祭で初めて取り組んだ『ファルスタッフ』について、ご紹介しましょう。
 『ファルスタッフ』はシェイクスピアの戯曲をもとにつくられたことはよく知られています。また、このオペラは音楽の魅力だけではなく、芝居としての魅力も発揮されなければ「完成」されないものであるといわれるのも事実。今回演出を手がけたルカ・ロンコーニは、イタリア演劇界の大御所といわれる人だけに、ヴェルディが描いた「滑稽さ」や「人間味」をドタバタではない、上質の喜劇としてつくりあげています。
 幕が上がって一番に目にするのは大きな酒樽の山。ファルスタッフが根城としている居酒屋ガーター亭はこの酒樽の階段を上がったところにあるという設定です。ちなみに、この舞台装置の位置は、フォード家の庭でも、アリーチェの部屋、そして最後にテムズ川から上がったびしょ濡れのファルスタッフがぶるぶる震えながら戻る寝室まで、そのままの高さで展開されるのですが、実はそれは第3幕に用意されているカタルシスのため。またも懲らしめられるとも知らずに真夜中にファルスタッフは約束の木の下へと出かけていくのですが、12時の鐘が鳴ったそのとき、ファルスタッフが居るのは・・・? もともとこの場面は、音楽的にもお伽話の幻想的な世界へ誘われることになりますが、今回の舞台は視覚的にも現実から不思議な世界への転換が体感できるものとなっていて、聴衆も自然に幻想的な世界へと引き込まれていきます。
 トレードマークの太鼓腹は欠かせないファルスタッフですが、アリーチェを口説くときには一目でわかる“若作り”! 格好だけではなく、身軽に踊るは歌うはで、アリーチェに迫ります。今回ファルスタッフを演じるライモンディとスリアンは、いずれも芸達者なだけに、その演技が大いに笑いを誘うところ。また、モヒカン頭とロン毛、鎖じゃらじゃらのパンク・ファッションで登場する従者のバルドルフォとピストラはファルスタッフとは違う意味での喜劇的な役回りで楽しませてくれます。
 一方、カラフルな花模様のドレスに身を包んだアリーチェとメグに、ロンコーニは彼女たちの密かな「ライバル心」をも表現します。言い寄られたのは大酒呑みで年老いた落ちぶれ騎士ですから、どんなことがあっても心ときめくはずなどないのに、同じように扱われたことに対して、「プライドが許さない」といったことなのでしょう、彼女たちは笑顔をたたえながら痛くなるほど手を握りあったりして・・・。
 アリーチェ役のフリットリは、これまでにも数多くこの役を演じ、高い評価を得ていますが、今回はその総決算となる舞台と語るとおり、練り上げた演技と歌を披露。ちなみに、アリーチェばかりでなく、メグ、クイックリー夫人、ナンネッタと、ブルジョワ階級の彼女たちが身につけているのはフェラガモ製というのも、フェラガモの本拠地があるフィレンツェならではでしょう。
 近年では、オペラを観るにあたって、演出が意図するメッセージとは? と考え込む風潮が強まっている感があります。そうした見方が必要な場合もありますが、ロンコーニが意図しているのは、作品のもつ魅力をシンプルに、そしてナチュラルに描き出すこと。ここで描かれるのは、“英国淑女”と老騎士が織り成す心情のドラマです。たとえば、堂々として従者たちを叱り飛ばすファルスタッフ、何の疑いもなく自分には女性を虜にする魅力があると浮かれるファルスタッフ、一瞬、我が身の現実に立ち返りながらも、再び夢を膨らませるファルスタッフ、そして最後に全部がわかった後でも、人生を笑い飛ばすファルスタッフ・・そのときどきのファルスタッフの心情を自然に、微笑みながら受け取れるというのがロンコーニ演出です。また、ファルスタッフの周りで起こる夫の妻への本気の嫉妬心や、女たちの男たちへの懲らしめも、単なる笑いごとではなく、このオペラのテーマである「老いること、衰えること」の意味を浮き上がらせることへと結びついています。難しく考えず、構えることなく、観て聴いているうちに自然にドラマに入り込んでいけるというのは、ロンコーニ演出の最大の魅力といえるでしょう。
 こうしたロンコーニの演出、この演出を愛する歌手たち、そして作品と関わる人々すべてを大きく包み込むようにして上演をつくりあげる指揮者メータ。すべての条件が揃って生み出された上質の喜劇『ファルスタッフ』は、テアトロ・コムナーレの聴衆をたっぷりと満足させ、そのまま日本へとやって来ます!
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—『トゥーランドット』の演出アイディアは、どのようなところから生まれたのでしょう?
「以前に西洋の演出家によるものをいくつか観たとき、そのいずれもが全体に色彩トーンが暗いという印象をもちました。おそらくそれは、西洋の方から見た東洋の神秘的な部分の表現のためだったのでしょうけれど。私の映画をご覧いただいてもわかるとおり、私は鮮やかな色、鮮烈な色、そういう濃厚なものが好きなのです。ですから、まず、そうしたところから、自分の演出を作っていこうと考えました。それから、もうひとつの考え方として、オペラと中国の京劇の通じる部分というものを考えました。人間の心情が音楽とともに描き出されるということでの共通性ですね。そして、京劇もまた、とても色鮮やかな世界だということ。これが最初のアイディアといえますね」

—『トゥーランドット』というオペラのテーマはどこに?
「愛ですね。最後には愛の力が勝利を得るという。人の憎しみとか、復讐心も、愛をもって克服することができるというこのテーマは、現代社会のなかでも重要なことだと思っています。政治的な問題やさまざまなことがありますが、愛をもってこそ、それらを克服していかなければならないのではないかと思うのです」

—演出をされた後、オペラに対しての見方や考え方は変わりましたか?
「オペラは400年以上の歴史をもっていて、西洋の芸術の最高の結晶といわれます。もちろん学問的にも意義深い面をもっているとも思います。ただ、一般的なオペラのあり方というものについて、たとえば、高尚なもの、お高いところにあるもの、というイメージがあることがちょっと心配です。これは中国でいえば京劇、日本における能などとも共通することだと思いますが、若い世代にも親しみやすい環境をつくることが必要だと考えるようになりました。実は私が演出した『トゥーランドット』は、これまでにソウルのオリンピック・スタジアム、パリとミュンヘンのスタジアムでも上演され、それぞれの場所で8万人の観客を集めました。こうしたことは、伝統あるものを脈々と、自然なかたちで、川の流れのように受け継がせていくという意味において、少し役だったかもしれないですね」

—今後もオペラ演出はされますか。
「2006年12月20日を初日に、ニューヨークのメトロポリタン歌劇場でタン・ドゥン作曲の『ファースト・エンペラー』という作品を演出することになっています。この舞台は、衣裳をワダ・エミさんが担当するほか、舞台デザインなどもすべて東洋人がやります。私が聞いたところでは、メトの歴史のなかでもオリジナル作品は5、6本しかないということで、そこに加わる1本がさらに東洋人によるもの、とういうところが特徴的といえますね」

—監督の映画ファンの方にひとこと。
「私が初めて演出したオペラですから、同様に、映画は観ているけれど、オペラは初めて観るという方にも是非ご覧いただきたいですね。私のモットーは、ともかく観て楽しい、そういう舞台ですから」
 
(2005年10月28日 東京にてインタビュー)
 
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