バイエルン国立歌劇場2017年日本公演 開幕記者会見レポート



 9月17日、バイエルン国立歌劇場2017年日本公演開幕記者会見が開催され、ニコラウス・バッハラー総裁はじめ、『タンホイザー』を指揮するキリル・ペトレンコ音楽総監督、さらに『タンホイザー』のメインキャスト、クラウス・フロリアン・フォークト、アンネッテ・ダッシュ、エレーナ・パンクラトヴァ、マティアス・ゲルネらが出席、公演への抱負を語りました。


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 会見が行われたのはペトレンコ指揮、バイエルン国立管弦楽団による特別演奏会の終演直後のこと。「たった今、演奏会を終えたところです」とバッハラー総裁は興奮気味に挨拶し、「前回の日本公演は6年前、2011年のことでしたが、東日本大震災直後の大変な状況の中でも、皆さんは理性的に、集中して、音楽に感動してくださった。音楽が人間にとっていかにポジティブな力を持つかということを、日本の方々と一緒に体験することができたのです」と力強く語りました。


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ニコラウス・バッハラー (バイエルン国立歌劇場総裁)


 ついで、「日本中の皆さんが、彼の来日を楽しみにしていたと聞いています」と、ペトレンコを紹介。通常、インタビューを一切受けないことで知られるだけに、その第一声が注目される中、「人生初の日本ですが、本当に素晴らしい。特に食事が最高に美味しい(笑)」とマエストロは満面の笑み。「今回はモーツァルト、ワーグナーと、私たちが主軸にする作曲家の作品を聴いていただきますが、そこに超一流の歌手たちが加わる。期待を裏切らない公演になると、確信しています」。


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キリル・ペトレンコ (バイエルン国立歌劇場 音楽総監督)


  続いてマイクを渡されたフォークトは、今年5月、本プロダクションでタンホイザー役デビューを飾ったばかり。「私のこの役の日本デビューを体験していただけることを、楽しみにしています」。ダッシュも、日本でエリーザベト役を歌うのは今回が初めて。「日本で、これまでと全く違った役柄を歌えるのが楽しみです」。ヴェーヌス役、エレーナ・パンクラトヴァも「私は今回が3度目の来日。日本の皆さんに、私の新しい役をぜひ聴いていただきたい」。ヴォルフラム役で登場のゲルネは「日本でこのプロダクションのヴォルフラムを歌うことは、自分自身も楽しみ」と、それぞれに公演への思いを語りました。


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クラウス・フロリアン・フォークト (『タンホイザー』タンホイザー役)

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アンネッテ・ダッシュ (『タンホイザー』エリーザベト役)


 質疑応答の場では、この機会に、とペトレンコへ質問が集中。音楽における信条は、と問われると「いちばん大切なのはリハーサル」と回答。「大事にしていることは、リハーサルの段階でオーケストラと一つになること」。また、録音の数が極めて少ないことについて、「ライヴでの演奏のほうがより重要であり、価値があると思うのです」とも。また、なぜインタビューを受けないのか、という質問には、少しはにかむような笑顔を見せ、「理由はいろいろとあるんですが、自分の仕事については語らないほうがいいでしょう。指揮者は、指揮台から音楽を通じて皆さんに語りかけるもの。それに、私の仕事については、なるべく秘密があったほうがいいと思うんです」と、終始穏やかな口調で応じていました。


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マティアス・ゲルネ (『タンホイザー』ヴォルフラム役)

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エレーナ・パンクラトヴァ (『タンホイザー』ヴェーヌス役)


「彼のリハーサルは本当に多くを学ぶことができる」とフォークト。ゲルネも、「ここまで楽譜を精確に読み取り、テキストを読み解く指揮者はいません。『タンホイザー』ではアンサンブルとソリストが一緒に歌う場面が多いけれど、それを実に素晴らしくコーディネートするのです」と賞賛の言葉を寄せていました。


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 ペトレンコ指揮の『タンホイザー』は、いよいよ9月21日(水)に初日を迎えます(NHKホール)。9月23日からは『魔笛』が開幕(アッシャー・フィッシュ指揮、東京文化会館)、いずれも見逃せない舞台です。
(取材・文:加藤智子)





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