【バイエルン国立歌劇場】指揮者アッシャー・フィッシュ インタビュー[1]

インタビュー・レポート 2017年4月14日 16:50


バイエルン国立歌劇場日本公演で『魔笛』の指揮をとるアッシャー・フィッシュ。
この3月、新日本フィルの演奏会のために来日したマエストロにお話をうかがいました。
 


★指揮者フィッシュの目 ~  キリル・ペトレンコ、バイエルン国立歌劇場

 「ペトレンコをフォルクスオーパーのカペルマイスターに誘ったのです」




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 今シーズン、バイエルン国立歌劇場で5つのオペラの指揮を任されているアッシャー・フィッシュは、バッハラー総裁、音楽総監督キリル・ペトレンコとは旧知の間柄。バッハラー総裁がウィーンのフォルクスオーパーの監督を務めていたとき、マエストロ・フィッシュは首席指揮者で、学校を卒業したてのキリル・ペトレンコが加わったのでした。


 「キリル(・ペトレンコ)は卒業試験で『ドン・ジョヴァンニ』を振ったんだけど、それを聴いた私は、すぐにカペルマイスター(注1)にならないかと誘ったのです。彼はこのときチェンバロも自分で弾いていたんですけど、彼がやっていることは『ドン・ジョヴァンニ』をすべて正しくやっているのだ、と感じたのを覚えています。だから、彼のキャリアのスタートは私だったということですね(笑)」


 キリル・ペトレンコはほどなくフォルクスオーパーを離れることになりましたが、バッハラー総裁との縁もあり、マエストロ・フィッシュはバイエルン国立歌劇場への登壇を重ねてきました。キリル・ペトレンコが音楽総監督になる前と後でのオーケストラの変化を感じているとのこと。


 「キリルは、演奏の仕方、弾き方にとてもこだわりを持っている人なので、とことんまでオーケストラをリハーサルします、それまで自由に弾かせる感じがあったから、引き締めるという意味で彼は適任だったでしょう。オーケストラのメンバーに若い人たちも増えていますし、トレーニングされるなかで忠実に、彼式の音を鳴らすようになってきているといえます。」

 他の指揮者の話を聞くのは失礼かとも思いながら、「ペトレンコさんは取材をほとんど受けない方なので・・」と言うと、「無いでしょうね」と笑いながら、ご自身とペトレンコについて話を続けてくれました。


 「キリルと私はすごくタイプが違うのだと思います。彼は指揮をするレパートリーに関してもとてもこだわりを持っていて、学ぶことに時間をかけます。一方私はといえば、たとえばウィーンに居たころなどは、ほとんどリハーサルをやらなくても指揮をするということをしました。ある意味旧いスタイルのやり方です。夜劇場に入って、すぐに演奏をする、ということの美学というものも感じていたんです。ペトレンコの場合には、きちんとリハーサルを、かなり真剣なリハーサルを重ねる・・・」


 これを聞いて納得です。そう、マエストロ・フィッシュはダニエル・バレンボイムのアシスタントとしてキャリアをスタートさせたのでした! 
 バレンボイムもまた、非常にタイトなスケジュールで指揮をするタイプ。「バレンボイムさんと同様に、指揮をしていないと死んじゃう、みたいなタイプなんですね?」と言ったら、嬉しそうに「そう、私もフィッシュだからね、泳いでないと」と大笑いした後、真面目な顔に戻ってこう続けました。


 「どう指揮をするか、教えてもらうということはできないんですよ。ダニエル(・バレンボイム)のアシスタントをしていて得たのは、オーケストラのメンバーたちに一番良い演奏をさせる方法すべてを見ることができたことなんです。」


(取材・文/吉羽尋子)


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(注1)カペルマイスターとは?・・・もとは教会で聖歌隊の指導など、音楽的な職務にあたる聖職者のことを指す言葉でしたが、時代、国によって意味合いがかわってきました。現在ドイツでは音楽監督、または主席指揮者につぐ第2、第3の指揮者のことを意味します。



★バイエルン国立歌劇場 2017年日本公演 4月15日(土)10:00より一斉発売開始!


公演の詳細はコチラ >>>





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