ウィーン国立歌劇場2016年日本公演 記者会見レポート

インタビュー・レポート 2016年10月25日 14:43

 ウィーン国立歌劇場2016年日本公演の開幕記者会見が、開幕を目前に控えた10月24日、東京文化会館の大ホールにて開催された。ウィーン国立歌劇場からドミニク・マイヤー総裁、リヒャルト・シュトラウスの『ナクソス島のアリアドネ』を指揮するマレク・ヤノフスキ、メイン・キャストのグン=ブリット・バークミン(プリマドンナ/アリアドネ)、ダニエラ・ファリー(ツェルビネッタ)、ステファニー・ハウツィール(作曲家)、ステファン・グールド(テノール/バッカス)が登場した会見は、すでに上演準備が整ったステージ上で、この作品にも通じる虚実混然となった雰囲気の中で和やかに行われた。

s_wsopc38.jpgswsopc01.jpg

 4年ぶりの来日公演が実現する喜びを、ドミニク・マイヤー総裁は雄弁に語った。なかでも「今回『フィガロの結婚』をリッカルド・ムーティが、『ワルキューレ』をアダム・フィッシャー、そして『ナクソス島のアリアドネ』をマレク・ヤノフスキと、ウィーン国立歌劇場の中心的なレパートリーを最高のマエストロたちと上演できることは喜ばしいことです」と最高のスタッフに胸を張る。
『ナクソス島のアリアドネ』の演出についても「批評と聴衆の評価は一致しないこともありますが、今回の舞台はどちらからも高く評価されています」として、スヴェン=エリック・ベヒトルフによるエレガントで心理描写の巧みな舞台に自信を見せた。

s_wsopc07.jpg
ドミニク・マイヤー総裁


s_wsopc14.jpg
マレク・ヤノフスキ

 その言葉を受けてコメントしたマレク・ヤノフスキは、長い空白を経て訪れたウィーン国立歌劇場との再びの共演を心から楽しんでいるようだ。『ナクソス島のアリアドネ』について「たとえば『エレクトラ』や『薔薇の騎士』とは違う、非常に洗練された小編成の作品だから彼の"本流"ではないとみなされがちです」とした上でキャスト、そしてウィーン国立歌劇場管弦楽団を賞賛し、「これほどの上演を聴き逃さないでください」と笑顔で語った。

s_wsopc15.jpg
グン=ブリット・バークミン


 総裁、マエストロが口を揃えて絶賛するキャスト陣のコメントも力強い。グン=ブリット・バークミンは「また東京で、違うシュトラウス作品を聴いて貰えることが嬉しい」と語る。もちろん前回の『サロメ』を念頭に置いての発言だ。シュトラウス作品を得意とする彼女だが、今回のプリマドンナ/アリアドネはサロメとはまた違う複雑な役柄だから、新たな彼女の魅力に出会えることだろう。
 「故郷のオペラハウスと来日できるのはとても嬉しい」と語るダニエラ・ファリーは、前回(バイエルン国立歌劇場)も大好評を博したツェビネッタ役での再登場を楽しみにしているという。

s_wsopc18.jpg
ダニエラ・ファリー

 作曲家役のステファニー・ハウツィールは「この作品が描く普遍的な理想、希望が日本の聴衆に届けられれば」と、初来日の気負いもなく語った。
 多忙なステファン・グールドは先日の『ワルキューレ』のあと、台湾で『大地の歌』を歌ってまた東京に来たばかり、今回が10度目の来日となる。代役としての登場について「友人ヨハン・ボータが突然亡くなったことは本当に哀しく、惜しまれます」と悼みながらも、今回のプロダクション初演時のメンバーとしてこの演出を創り上げた自信もうかがわせた。

s_wsopc08.jpg
ステファニー・ハウツィール

s_wsopc21.jpg
ステファン・グールド


 出席者全員が口々に素晴らしい舞台を届けることを約束して、この日の記者会見は終了した。そしてウィーン国立歌劇場の『ナクソス島のアリアドネ』は本日開幕する、それはすなわち三週間にわたるオペラの祝祭の始まりである。


(取材・文/千葉聡)

photo:Naoko Nagasawa




ページトップへ