【ウィーン国立歌劇場】もっと知りたい!歌手紹介⑤

インタビュー・レポート 2016年9月26日 20:19



 今秋の来日公演で歌う選りすぐりの歌手たちを音楽評論家の奥田佳道さんの解説でご紹介します。
 今回から5回にわたってお送りするのは「ワルキューレ」に出演する5人の歌手です。


現代最高峰のドラマティック・ソプラノがワーグナーオペラ日本初登場



ニーナ・シュテンメ Nina Stemme
(「ワルキューレ」ソプラノ/ブリュンヒルデ)


Stemme_2(c) Neda Navaee.jpg

Photo: Neda Navaee


 現代最高峰のドラマティック・ソプラノで、2006年に母国スウェーデンの宮廷歌手、2012年にはウィーン国立歌劇場から宮廷歌手に叙せられている。レパートリーは広く、ワーグナーやリヒャルト・シュトラウスの主役は申すに及ばず、「フィガロの結婚」の伯爵夫人、「フィデリオ」のレオノーレ、「運命の力」のレオノーラ、「仮面舞踏会」のアメーリア、プッチーニの「西部の娘」のミニーに「トスカ」「トゥーランドット」、グノー「ファウスト」のマルグリート、チャイコフスキー「エフゲニ・オネーギン」のタチアーナ、それに「こうもり」のロザリンデも素晴らしい。


 ストックホルム出身。王立オペラのスタジオと王立音楽大学で学ぶ。1989年、イタリアはトスカーナ州のコルトーナでケルビーノ(メゾソプラノ)でデビュー。相前後してプラシド・ドミンゴ主催のコンクールとBBCのカーディフ国際声楽コンクールに入賞した。
2000年、「さまよえるオランダ人」のゼンタを歌ってメトロポリタン・オペラにデビュー。2003年にはグラインドボーン音楽祭で「トリスタンとイゾルデ」のイゾルデを歌い、いずれもセンセーションを巻き起こす。2004、5年に行なわれた同曲のCD録音──サー・アントニオ・パッパーノ指揮ロイヤル・オペラハウス管弦楽団、ドミンゴ、藤村実穂子、ルネ・パーペ、オラフ・ベーア、イアン・ボストリッジが出演──にも参加した。イゾルデは、2005年のバイロイト音楽祭へのデビューでも歌っている。2010年、クラウディオ・アバド指揮のルツェルン音楽祭で「フィデリオ」のレオノーレを歌い、こちらもレコーディングされた。ヨナス・カウフマンとの共演だった。
 ウィーン国立歌劇場へのデビューは2003年のゼンタで、「指環」の要ブリュンヒルデはもちろん最重要レパートリーのひとつだ。メトロポリタン・オペラでのエサ=ペッカ・サロネン指揮のエレクトラと、サー・サイモン・ラトル指揮のイゾルデも彼女に託された。



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