感動の親子愛
巨匠が贈るもうひとつの『くるみ割り人形』の物語
クリスマスの風物詩『くるみ割り人形』。世界には様々な演出版がありますが、少女クララ(マーシャ) を7歳の男の子、ビムに置き換えたベジャール版『くるみ割り人形』はその中でも特別な輝きを放っています。ベジャールの『くるみ割り人形』は振付家ベジャールが自身の幼年時代を舞台化したもので、亡き母への思慕とクラシック・バレエへのオマージュが舞台という形で見事に結実しました。
ファンタジーとしての幻想的な美しさ、バレエとしての踊りの見せ場を存分に散りばめながらも、ベジャールが本作で描いた親子の愛情は、殺伐としがちな現代社会において胸の奥にしまわれた何か大切なものを思い出させてくれます。
ここではそんな作品の魅力を様々な角度からご紹介します。
出演者からのコメント
柄本 弾(M…)
とてもドラマティックで感動的な作品です。ドロッセルマイヤー的ポジションのM…がいたり、ディヴェルティスマンで各国の踊りがあったりと、古典の『くるみ割り人形』に通じる部分もたくさんあります。ぜひ古典版とベジャール版を見比べて楽しんでいただきたいですし、初めてご覧になる方でもとても楽しめる作品です。
Photo: Koujiro Yoshikawa
宮川 新大
(フェリックス&グラン・パ・ド・ドゥ)
フェリックスって実は純粋なクラシック・バレエの動きがつまっている役なんです。きっちりポーズが決まっているので、動きにはめる難しさはありますが、ストーリーを裏で操っているような感じもあり、演じていて非常に楽しくやりがいのある役です。今回グラン・パ・ド・ドゥも踊りますが、こちらは独立しているパートなのでフェリックスときっちり演じわけて踊りで魅せたいと思います。
Photo: Koujiro Yoshikawa
政本 絵美(母役)
前回演じてみて初めてわかったんですが、母は最後に鏡の前で手を振るんです。これまでも観ていたのに全く気がつきませんでした。お客さまもこの場面はビムをみているので気がついてない方が多いと思います。確かに、最後はビムと母の永遠の別れなんですよね・・・。
Photo: Koujiro Yoshikawa
これを知ればもっと舞台を楽しめる!
ベジャールの『くるみ割り人形』
~5つの鑑賞ポイント~
巨大なヴィーナス像
舞台上手側に設置された巨大なヴィーナス像。このヴィーナスはベジャール=ビムの母の面影を重ねたものであり、さまざまな解釈が成り立ついわば本作のシンボル。このヴィーナス像がある場面でぐるりと回転すると…
クラシック・バレエへのオマージュ
ベジャールが生涯にわたって尊敬していたのが現存するクラシック・バレエの大半を手がけたマリウス・プティパ。本作ではプティパの傑作バレエからの引用がみられる。1幕のボーイスカウトの場面では男性ダンサーたちにより…
東京バレエ団ならではの
登場人物に注目!
ベジャール・バレエ団版にはダンサーではないアコーディオン奏者が登場するが、東京バレエ団版では故・飯田宗孝(元東京バレエ団団長)が演じることを想定したマジック・キューピーという役が生み出され…
ベジャールが愛した『ファウスト』
哲学者だった父の影響か、ベジャールは大変な読書家だった。そんなベジャールの愛読書のひとつがゲーテの『ファウスト』。実際に『ファウスト』にインスピレーションを受けた作品、人物は ベジャールの作品にたびたび登場する。本作においても…
ビムから母へのプレゼント
華やかなディヴェルティスマン
古典の『くるみ割り人形』では、2幕はマーシャ(またはクララ)と王子を歓迎する各国の踊りで構成されている。本作ではビムが母を喜ばせるために…
東京バレエ団
ベジャールの「くるみ割り人形」
振付:モーリス・ベジャール
音楽:ピョートル・チャイコフスキー
2025年
2月7日(金)19:00
2月8日(土)14:00
2月9日(日)14:00
会場:東京文化会館(上野)
上演時間:約2時間10分(休憩1回含む)
*音楽は特別録音の音源を使用します。
5歳以上入場可 ※4歳以下のお子さまはご入場いただけません。