〈マラーホフの贈り物〉ファイナルへの想い ウラジーミル・マラーホフ インタビュー

今回のモーリス・ベジャール・バレエ団日本公演では、「ライト」、ジル・ロマン振付「シンコペ」、そして「ボレロ」のメロディを演じるエリザベット・ロス。ベジャールのバレエへの探求をあらわした作品を踊ることに喜びを感じ、傑作「ボレロ」ではあらためて作品の威力に感動すると語ります。ベジャール没後5年を記念する今回の日本公演でも、ベジャールの魂を映す、魅惑的な踊りを見せてくれることでしょう。

 今夏の世界バレエフェスティバルでジル・ロマンと踊った「ブレルとバルバラ」のバルバラのように、ベジャール・バレエ団の中でも独特の存在感を示すエリザベット・ロス。期待が高まる「ライト」でも、すべての始まりとなる重要な役を託されている。
 「というのは、私の役はコンテンポラリー・ダンサーで振付家のカロリン・カールソンをモデルにしたもので、彼女が妊娠しているというところから始まるの。そして生まれて来た女の子こそがライト、“光”なのよ。とは言っても、モーリスのことだから明確なストーリーがあるわけではない(笑)。私とカテリーナ(・シャルキナ)が演じるライトとの物凄く美しいパ・ド・ドゥのように、見どころはたくさんあるんだけど。とにかく私たちバレエ団のダンサーにとっても長らく幻の作品だったから、皆さんと同じぐらいに楽しみにしているわ」
 今回、来日公演で披露されるのは、30年前の初演版より少し短くなったヴァージョン。
 「でも、実は皆さんはその一部をもう観ているかもしれない。モーリスの遺作の「80分間世界一周」のヴェネツィアのパートで、私がソロで踊っているのがそうだから。「ライト」のテーマを一言で表すとしたら“探究”になると思うんだけど、作品全体を通じての探究が、私の踊る一人の女性から始まるのはとっても光栄だわ」
 エリザベットは、「ライト」の特徴として、「すべてがパラレルになっているところも見逃さないでほしい」と言う。
 「たとえば背景となる場所はヴェネツィアとサンフランシスコだし、時代も中世と'70年代、そしてもちろん使われている音楽もヴィヴァルディに70〜80年代に人気を得ていたレジデンツといった具合にパラレルなの。当然振付も異なっているし。でもモーリスがなぜヴェネツィアからサンフランシスコまでポーンと飛んでしまったか、正確なことは知らないわ(笑)。私が思うに、聖フランチェスコを登場させたかったから、その関連なんじゃないか、と。レジデンツもサンフランシスコで活躍していたし。聖フランチェスコについて言えば、彼ほどその生涯を通じて“生きる”ことを探究した人はいない。そしてモーリスは、“踊る”とは何かを探究し続けたのよ」
 今回の来日公演では、ジル・ロマン振付の「シンコペ」でも大切な役を踊るエリザベット。
 「たまたまかもしれないけど、「シンコペ」での私の役はライトで、主人公の男の子と深いかかわりを持つ。シンコペって、私たちはシンコペーションという音楽用語で知っているけど、ジルはそこに“心臓停止”というもう一つの意味も重要視して、主人公の男の子がパタッと倒れてからいろんなことが展開されるのよ」
 ジル・ロマンは「ライト」初演時、ベジャ-ルの側で創作の過程をつぶさに見ているし、舞台にも立っている。ゆえにオリジナル版の振付をダンサーたちに教えつつ、「現代に適応するような手直しをして」(ジル談)作品としてより深く豊かなものに仕立てる作業のかたわら、自分自身の振付作品をクリエイトするのはさぞや大変だったろう。
 「確かに「ライト」に関しては、映像も残ってはいるけれど、やっぱりジルの生の体験を聞く方が頼りになった。モーリスとジルって、作品の内容が、一見シンプルなのに奥深かったり哲学的だったりという点は似ているんだけど、実は振付のスタイルには違いがあるの。モーリスはキチッとしているというか、イメージで表現するとカクッカクッとして四角い感じで、一方のジルは丸いというか、文字のように流れるというか。一度止まっても、そこから再び流れていく。でも「ライト」での私の役は、カロリン・カールソンがモデルであっても、踊り方はコンテンポラリーなものではなかったし。もっともっと自由であることを求められたと感じたわ」
 エリザベットにはもう一つ、BBLのダンサーだけでなく、世界中のダンサーが踊ることを熱望していると言ってもいい「ボレロ」のメロディという持ち役がある。今回は初のメロディ役を見せてくれるジュリアン・ファヴローのようなソリストまで、前回は周りを踊るリズムとして従えていたが、あれってやはり気持ちがいいのでは?
 「それが……もちろんあんな大役を踊れるのは本当にうれしいし、毎回物凄い手応えを覚えてダンサーとしての幸福を感じるんだけど、と同時に毎回不思議な感情にとらわれるの。というのは、自分なりに役を解釈し、全身でそれを表現しようとしていると、音楽の高まりや、観客の期待、周りを踊っているダンサーたちの尋常じゃないエネルギーが渾然一体となってさらっていかれるような気持ちになるというか。そうなると、最早私が踊っているのではない、何か別の力が働いているように感じてしまう。そう、「ボレロ」という作品がひとり歩きしてしまうのよ。踊り手の思いのはるか上を行く──つくづくとんでもない傑作だと感動してしまうわ!」

<モーリス・ベジャール没後5年 記念シリーズ1>
東京バレエ団
ベジャールの「くるみ割り人形」(全2幕)

ベジャール自身の母への思慕とバレエへの憧憬を語った感動の物語

会場:東京文化会館

12月15日(土)3:00p.m.
12月16日(日)3:00p.m.

入場料[税込]

S=¥10,000 A=¥8,000 B=¥6,000
C=¥5,000 D=¥4,000 E=¥3,000

★ペア割引券(S,A席)あり
*エコノミー券/学生券は11月17日(土)より受付
エコノミー券=¥2,000(イープラスのみ)
学生券=¥1,500(NBS WEBチケットのみ)


<モーリス・ベジャール没後5年 記念シリーズ2>
東京バレエ団
ベジャール・ガラ

東京バレエ団ならでは実現できる傑作選!
「中国の不思議な役人」s
「火の鳥」/「ギリシャの踊り」
「ドン・ジョヴァンニ」

会場:東京文化会館

2013年
1月19日(土)3:00p.m.
1月20日(日)3:00p.m.

入場料[税込]

S=¥10,000 A=¥8,000 B=¥6,000
C=¥5,000 D=¥4,000 E=¥3,000

★ペア割引券(S,A席)あり
*エコノミー券/学生券は12月15日(土)より受付
エコノミー券=¥1,500(イープラスのみ)
学生券=¥1,000(NBS WEBチケットのみ)


<モーリス・ベジャール没後5年 記念シリーズ3>
モーリス・ベジャール・バレエ団 2013年日本公演

受け継いだ巨匠の魂を次代へ!
<Aプロ>「ボレロ」「ディオニソス組曲」「シンコペ」
<Bプロ>「ライト」全幕

会場:東京文化会館

<Aプロ>
2013年
3月1日(金) 7:00p.m.
3月2日(土) 3:00p.m.
3月3日(日) 3:00p.m.
3月4日(月) 7:00p.m.
3月5日(火) 7:00p.m.

<Bプロ>
2013年
3月8日(金) 7:00p.m.
3月9日(土) 3:00p.m.
3月10日(日) 3:00p.m.

入場料[税込]

S=¥16,000 A=¥14,000 B=¥12,000
C=¥9,000 D=¥7,000 E=¥5,000

◆Aプロ、Bプロ2演目セット券(S,A,B席)あり
★ペア割引券(S,A,B席)あり
*エコノミー券/学生券は2013年2月1日(金)より受付
エコノミー券=¥3,000(イープラスのみ)
学生券=¥2,000(NBS WEBチケットのみ)


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