躍進する東京バレエ団 vol.9 The Tokyo Ballet

念願の由良之助、注目の新鋭

森川茉央 Mao Morikawa

　由良之助を踊りたくて東京バレエ団に入った――そう語る。12月公演『ザ・カブキ』の主演に決まり念願を叶える注目の新鋭だ。「忠臣蔵」の世界を描くベジャールの名作のヒーローであり主君への義を貫くサムライ役の6代目となる。
　22歳と若いが、同期・同年齢であり由良之助役の先輩でもある柄本弾らと切磋琢磨し力をつけてきた。体格が良く踊りも切れ味鋭い。加えて役柄を理解し、みせどころを心得た演技力が身上。
　ことにベジャール作品での活躍が目立つ。柄本とコンビを組んだ『くるみ割り人形』光の天使では、長身の彼らが厚底の靴を履き、金と赤の派手な衣裳を着けてノリよく踊り舞台を盛りあげた。『中国の不思議な役人』無頼漢の首領では、暗黒街のボスをクールかつ存在感十分に演じ凄みすら感じさせた。
　『ザ・カブキ』に向けては、由良之助役の大先輩・高岸直樹の指導を得て意欲的に役作りに取り組んでいるという。新たな由良之助のお披露目が待ち遠しい！

（高橋森彦　舞踊評論家）