ローマ歌劇場 2014年日本公演

来月に迫ったローマ歌劇場日本公演。『シモン・ボッカネグラ』では、バルバラ・フリットリがアメーリアを演じます。 実はフリットリはこれまでローマ歌劇場に出演する機会は一度もなく、日本公演での共演は、ローマっ子たちからも羨ましがられるというもの。 フリットリにとって“大切にしているレパートリー”というアメーリア役についてのインタビューをご紹介します。

――すでに『シモン・ボッカネグラ』のアメーリア役はレパートリーとしていらっしゃいますが、初めて演じられたのはいつですか?

フリットリ:初めてこの役を歌ったのはもう20年くらい前、ボローニャの市立歌劇場でダニエレ・ガッティの指揮でした。

――アメーリア役はあなたのレパートリーの中で、どのような位置にありますか?

フリットリ:アメーリアはソプラノ・リリコの役なのでヴェルディの作品の中でも私のレパートリーとして大切にしています。本当に素晴らしい作品で、アリアはもちろんですけれど、デュエットも美しくて、歌っていてもうっとりしてしまいます。

――政略や策略が渦巻くこのオペラの中で、紅一点、アメーリアには一服の清涼剤的な役目が与えられていますよね?

フリットリ:そうですね。ヴェルディのオペラのヒロインは政治的な物語の中にあっても、政治や策略は別として、ドラマの進行において重要な役を果たしていることが多いと思います。アメーリアの場合は本当の父であるシモンと25年後に偶然再会するというドラマティックな場面があります。

――たしかに、シモンとの二重唱はとても素晴らしい聴きどころですよね。フリットリさんの舞台では、演技という点でもいつも大きな魅力を感じます。アメーリア役を演じるうえで重要に考えられていることは?

フリットリ:このオペラでは社会的な身分の違いに関しても焦点が当てられていると思います。アメーリアは自分が平民に生まれ、孤児だったということを常に意識しています。

――暗いプロローグの後、開けた海を臨む穏やかな庭園でアメーリアは自分の身の上を美しく歌いますね。愛する人を得た喜びも。

フリットリ:そうです。彼女はガブリエーレ・アドルノという貴族の恋人と愛し合っていますが、(もともとは平民で、シモンの腹心となっている)パオロからも言い寄られています。アメーリアは、自分の望みが叶わなくなったパオロから恨みをかう立場になります。

――すでにマエストロ・ムーティの指揮では、数々の作品で共演されていますが、フリットリさんからご覧になったマエストロのヴェルディへの取り組みで、最も印象的なことは何ですか?

フリットリ:マエストロとはヴェルディやモーツァルトなど多くの作品でご一緒させていただいています。マエストロは常に音楽の中にある真実を求めて、作曲家がどのように演奏することを望んだかというところまで追求されています。ですから、歌手も表面的ではない表現で演奏することができるようになるのです。特にマエストロはヴェルディに関しては造詣が深いので歌手にとっては大変勉強になります。作品の内容や役を理解することへの大きな助けになって、自然に役になりきれるようになります。まるで耳が変わったかと思うほど、作品を再発見することができるのです。私は昨年、ローマ歌劇場『エルナーニ』のリハーサルを見学させていただいたのですが、エルヴィーラは絶対に私のレパートリーにはならないでしょうけれど、とても勉強になりました。今まで私が思っていたのとは違って、本当に素晴らしい作品なのだと改めて感じました。

――マエストロ指揮の『シモン・ボッカネグラ』には初めてのご出演となります。何か特別な思いはありますか?

フリットリ:マエストロの指揮でアメーリアが歌えて幸せでたまりません。きっと新しい扉を開くことができると思います。とても待ち遠しく感じています。

――日本のファンも、大いに楽しみにしています。

          



 気象庁から発表されたこの冬の“世界的な異常気象”。日本には大雪、ヨーロッパには大雨をもたらしました。ローマも、例年にないほど雨が降ったようですが、2月末のローマ歌劇場には、別の“大嵐”に見舞われました。
 2月27日、リッカルド・ムーティ指揮による新演出『マノン・レスコー』の初日は、当日まで、公演中止の気配が高まっていたのです。午前中には、警官が見守る劇場前に、ストライキも辞さないという組合員たちが集まり、騒然とする場面も。歌劇場の努力の末、正午過ぎに、ようやくストライキが回避され、上演実施の決定が発表となったのです。
 この『マノン・レスコー』は、マエストロ・ムーティの娘キアーラ・ムーティが演出を手がけ、主役のアンナ・ネトレプコがローマ・デビューを飾るというもので、オペラ・ファンが大きく注目するものでもありました。
 開演にこぎつけるまでの騒動について、「心配はしていたけれど、作品の仕上がりには自信をもって臨んでいるよ」と、マエストロと常に行動を共にしている弟さん。ムーティは、スカラと座時代にもこのオペラを手がけていますが、ローマ歌劇場でもプッチーニの美しい旋律を上品に響かせ、この作品がもつ悲劇性を存分に聴かせました。終演後のカーテンコールで、ネトレプコとキアーラと両手を繋いで笑顔を見せるムーティの姿には、臨席の大統領をはじめとしたすべての観客から大喝采が贈られました。


ローマ歌劇場 2014年日本公演
『ナブッコ』

【公演日】
2014年
5月20日(火)6:30p.m. 東京文化会館
5月30日(金)3:00p.m. NHKホール
6月 1日 (日)3:00p.m. NHKホール

【入場料(税込み)】
S=¥54,000 A=¥47,000 B=¥40,000
C=¥33,000 D=¥26,000 E=¥19,000 F=¥12,000

【予定される主な配役】
ナブッコ:ルカ・サルシ
イズマエーレ:アントニオ・ポーリ
ザッカーリア:ドミトリー・ベロセルスキー
アビガイッレ:タチアナ・セルジャン
フェネーナ:ソニア・ガナッシ


ローマ歌劇場 2014年日本公演
『シモン・ボッカネグラ』

【公演日】
2014年
5月25日(日)3:00p.m. 東京文化会館
5月27日(火)6:30p.m. 東京文化会館
5月31日(土)3:00p.m. 東京文化会館

【入場料(税込み)】
S=¥54,000 A=¥47,000 B=¥40,000
C=¥33,000 D=¥26,000 E=¥19,000 F=¥12,000

【予定される主な配役】
シモン:ジョルジョ・ペテアン
アメーリア:バルバラ・フリットリ
ガブリエーレ・アドルノ:フランチェスコ・メーリ
フィエスコ:ドミトリー・ベロセルスキー 
パオロ・アルビアー二:マルコ・カリア

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