2015年はどんな年 東京五輪を視野に舞台芸術も活動活発化?

 あけましておめでとうございます。みなさまにとって、2015年が幸多い年でありますように願っております。
 昨年はNBSが運営する東京バレエ団が創立50周年を迎えたことから東京バレエ団の公演が多くなりましたが、2015年は3月モンテカルロ・バレエ団、5月バーミンガム・ロイヤル・バレエ団、8月世界バレエフェスティバル、9月英国ロイヤル・オペラ、11月シュツットガルト・バレエ団の招聘公演に加え、東京バレエ団は別ページのようにベジャールの「第九交響曲」をもってのヨーロッパ公演、シルヴィ・ギエムのさよなら公演などがあって、今年も忙しい1年になりそうです。
 2015年の年頭にあたって、今年がどんな年になるか思いを巡らせてみると、2020年の東京オリンピック・パラリンピックを控え、文化プログラムが2016年から始まると言われておりますので、われわれ舞台芸術の分野でもきっと大きな動きがあると予測されます。オリンピック憲章にスポーツと文化と教育の融合が謳われているとおり、オリンピックはスポーツの祭典であるとともに文化の祭典でもあるのです。ロンドン・オリンピックでは4年前から文化プログラムが始まり、オリンピックが終わるまでに18万にも及ぶさまざまな文化イベントに4,300万人が参加したといわれています。オリンピックの年には〈LONDON 2012 FESTIVAL〉と名付けられた大規模な芸術祭がオリンピック開催前の1か月前にスタートし、パラリンピックが終わるまでの12週間にわたって行われました。
 去る11月13日「五輪の年には文化省」と題するシンポジウムが文化芸術振興議員連盟と文化推進フォーラムの主催で開催されました。2020年の東京オリンピック・パラリンピック開催にむけ、文化省をつくって文化芸術基盤を飛躍的に充実させようというわけです。席上、下村文科大臣が2015年にはスポーツ庁ができるので、スポーツと一緒にして文化スポーツ省にしたらすぐにでもできるのではないかと発言されていましたが、オリンピックがスポーツと文化の祭典であることを考えれば、一刻も早く文化スポーツ省をつくってもらい、東京オリンピックをきっかけにスポーツととともに文化にも力を入れてもらいたいと切に願っています。わが国の文化関連予算は国家予算の0.11%にすぎません。フランスの1.06%、韓国の0.87%、ドイツの0.39に比べてもいかに少ないかわかります。
 東京オリンピック・パラリンピックの文化プログラムが、われわれ舞台芸術に携わる者にとって、業界活性化の起爆剤になることを期待しています。ただ文化イベントをやれと言われたからといって、特にオペラやバレエ、クラシック・コンサートのような舞台芸術は資金的な根拠がなければできるものではありません。国や東京都から助成金がでるとか、オリンピック・パラリンピックが終わるまでの4年間だけでも税制を変えて芸術団体が活動しやすくするとか仕組みづくりが必要なのではないでしょうか。われわれ舞台芸術に携わる者にとっても、これから東京オリンピックが終わるまでが勝負の時のような気がしています。反面、この文化プログラムをジャンピング・ボードに活動基盤を強化しなければ、オリンピックの宴の後が悲惨なことになってしまいます。
 文化プログラムに期待が高まる一方で、舞台芸術を上演する場である東京の劇場不足が深刻な問題になっています。年間約150日間バレエの公演やリハーサルで使われていた五反田のゆうぽうとが今年の9月いっぱいでの閉館が予定され、まもなく青山劇場も閉館、日本青年館も4月から休館。渋谷公会堂も18年ごろをめどに建て替えられると聞きますし、中野サンプラザも建て替え構想があるようです。東京文化会館も数年のうちに工事休館することが取りざたされています。とりわけ、オペラやバレエが上演できる規模の劇場が不足しています。われわれの業種は劇場がなければ何もできません。活動の場がなければ衰退するのみです。劇場の老朽化による閉館や建て替えの時期と東京オリンピック・パラリンピックの文化プログラムの時期が重なってしまったのは偶然なのでしょうか。これなど広い視野に立った総合的な文化政策が欠けている最たる例かもしれません。
 2016年の文化プログラム開始を控え、この深刻な劇場不足は国や東京都が取り組まなければならない問題なのではないでしょうか。東京オリンピックまであと5年。なんとかこの機にオペラやバレエが上演できる劇場建設の機運が巻き起こってくれることを願ってやみません。

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