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  東京バレエ団 ドン・キホーテ
 
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「ドン・キホーテ」

東京バレエ団 フィレンツェ五月音楽祭「ドン・キホーテ」

 東京バレエ団の第21次海外公演が5月7日(金)イタリア・モデナ公演でスタートしました。5月13日からは、今回のツアーのメインともいえる“フィレンツェ五月音楽祭”での公演が行なわれました。“フィレンツェ五月音楽祭”は、バイロイト音楽祭やザルツブルグ音楽祭と並ぶ最古の音楽祭で、今年67回目を迎えます。東京バレエ団がこの由緒ある音楽祭に参加するのは、1996年、1999年に次いで3回目。今回上演したのは、ウラジーミル・ワシーリエフ振付の「ドン・キホーテ」全幕と、「ギリシャの踊り」「ドン・ジョヴァンニ」「中国の不思議な役人」からなる《ベジャール・プロ》のふたつのプログラムです。
 観光都市フィレンツェの最高の季節、また上野水香の東京バレエ団移籍後初公演ということもあり、今回特別に組まれた旅行会社のツアーなどを利用して、日本から60人を越すサポーターがこの公演を観るためにフィレンツェを訪れました。
フィレンツェ公演が行なわれたのは、“フィレンツェ歌劇場”として日本でもおなじみのオペラハウス、テアトロ・コムナーレ。初日を飾ったのは、吉岡美佳(キトリ)と木村和夫(バジル)による「ドン・キホーテ」。フィレンツェではあまりバレエの公演は行なわれておらず、またテアトロ・コムナーレで全幕物が上演されることが滅多にないためか、最初は反応が鈍かった観客たちでしたが、ワシーリエフ版の特徴であるスピーディな展開と、打ち上げ花火のように炸裂するダンスの洪水に次第に引き込まれていき、客席は熱気を帯びていきます。2幕になると一緒に“お祭り”を楽しむかのように一気に盛り上がり、フィナーレでは手拍子が湧き起り、劇場全体が拍手と歓声に包まれ無事初日の幕が下りました。
 翌14日は「ドン・キホーテ」二日目。前日の大成功の評判とRAI(イタリア国営放送)ニュースで紹介されたこともあり、客席は超満員となりました。この日が東京バレエ団移籍後の初公演となった上野水香は、緊張しながらも伸びやかな肢体を活かし、華やかにキトリを演じ、フィレンツェ&東京バレエ団デビューを果たしました。バジルの高岸直樹はそんな上野を優しくサポートし、堂々たる舞台で客席を魅了。またこの日がエスパーダ初役となった後藤晴雄も見事に踊りきり、一糸乱れぬアンサンブルにも大きな拍手が贈られました。前日同様、フィナーレでは客席と舞台が一体となり、幕が下りた後もしばらく拍手が鳴り止まないほどの盛り上がりとなりました。
■ il Corriere di Firenze 紙(イル・コリエデーレ・ディ・フィレンツェ)記事  (2004/05/15)
東京バレエ団、ほぼ完璧。 「ドン・キホーテ」の非凡な解釈
リタ・サンヴィンチェンティ

 精密きわまりない、ほぼ完璧なテクニックを誇る東京バレエ団のダンサーたちが、おとといと昨日、フィレンツェ市立歌劇場で「ドン・キホーテ」公演を行った。
 第67回五月音楽祭の一環であるこの公演は、今年設立40周年を迎え、いまや絶大な人気を誇る日本のバレエ団による二つの催しのうちの一つ。二つ目の催しは「ベジャールの夕べ」で、明日の晩と火曜に行われる。これによって、「ドン・キホーテ」に代表されるクラシックのレパートリーだけでなく、モダンバレエにおいても、東京バレエ団の技量の高さが証明されることになるだろう。
 「古風な」おもむきの19世紀の傑作バレエのひとつ、「ドン・キホーテ」は、1869年、オーストリアの作曲家レオン・ミンクスと偉大な振付家マリウス・プティパによって生みだされた。この作品は、プティパの振付だけでなく、ロシア人のアレクサンドル・ゴルスキーやロスティスラフ・ザクハーロフによる演出版も作られている。モスクワのボリショイ歌劇場の芸術監督を務める名ダンサー/振付家のウラジーミル・ワシーリエフによる今回の演出は、このロシア版をもとに——舞台言語の面というよりも、テイストの面において——さらに現代的な解釈をほどこしたものである。
 五月音楽祭管弦楽団(指揮:アレクサンドル・ソトニコフ)が奏でるミンクスの楽譜に乗せて、また、ラファイル・ヴォルスキーの衣裳デザインの——ときとして、洗練をきわめた——魅力もあいまって、東京バレエ団はすばらしい舞台を作りあげた。
 この「ドン・キホーテ」においては、セルバンテスが創造したタイトルロール(芝岡紀斗が好演)が、サンチョ・パンサ(飯田宗孝)とともに、話の導き手となり、絵はがきのように美しいスペインの精彩に富む風景のなかで、禁じられた恋のちょっとやんちゃな駆け引きの狂言回しとして奮闘する。それを表現するのは、超人的なバレエの大技と、随所で「コロッサルな(巨大な)」スケールに達した、きわめてカラフルで壮大な舞台のシークエンスであるが、そこにはまた、ドン・キホーテの夢を描いた長大な場面に見られるように、詩情とロマンティシズムにあふれた一幕も忘れずに加えられた。
 基礎的技術、見せ場、アクロバティックな技のクオリティー、どれをとっても超一流の日本のダンサーたちであるが、おそらく、強烈な表現力やカリスマ性には欠けるところがあるかもしれない。といっても、このようなフラメンコ、ジプシー、闘牛士の雰囲気に日本の人たちが完全になじめないというのもよくわかる。超一流のダンサーの中でも、エスパーダとメルセデスのカップルを演じる後藤晴雄と井脇幸江、さらにひときわ抜きん出ていたのが、キトリとバジル役の上野水香と高岸直樹だった。終了後、客席は熱狂につつまれた。しかし、舞台のさなかにも、各場の幕があくたびに喝采が起きたこともつけくわえておく。





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