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  ワルトラウト・マイヤー  
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ワーグナー歌手、ワルトラウト・マイヤーが繰り広げる、繊細なミクロコスモス(小宇宙)
 近年、オペラ歌唱のあり方に様々な変化が見られ、ワーグナーの舞台作品においても同様のことが指摘されるだろう。大管弦楽に拮抗しうる強く大きい声、そして長丁場を切り抜けるための持久力が要求されるのは言わずもがなであっても、そのうえに細やかな表現力を備えた歌手が出て来ているのだ。ワルトラウト・マイヤーがその代表的な存在であり、歌い口が往年の歌手のように仰々(ぎょうぎょう)しくなく、現代感覚にあふれた、自然で親しみやすいところが特徴だ。
 知的で深いテキスト理解、それを音楽に乗せて、悲しみであれ、喜びであれ、彼女が歌う音たちが生命を得たように息づく。そのような表現力に長けたマイヤーだからこそ、オペラの舞台で鋭い感性を羽ばたかせることが可能なのだ。今回、ミュンヘン・オペラで歌うヴェーヌス(「タンホイザー」)にしろ、他のイゾルデ、クンドリ(「パルシファル」)、ジークリンデ(「ワルキューレ」)にしろ、世界的に絶賛されている所以(ゆえん)である。また一方でマーラーなどの交響曲やオラトリオ等でも定評のあるマイヤーだ。
 マイヤーのテキストと音楽への緻密なアプローチ、それに基づく多彩な表現力が、さらに高い次元で生かされるのがドイツ・リートの世界であることは疑う余地がない。リートと言うミクロコスモス(小宇宙)が、一晩のリサイタルで、たとえば20曲とすれば、20種類の変化に次々と的確に対応する、驚くべき柔軟性を備えたマイヤーならではの世界だ。
 彼女自身のリートに対する意欲も並々ならぬものがあるが、オペラに拘束される年月が長く、なかなか集中出来ないのが悩みであった。そこで2003/2004年のシーズンをメリートの年モと決め、ヨーロッパはもとより、ロシア、アメリカと世界ツアーを実施して、ここでも高い評価を得ていることは記憶に新しい。その締めくくりとして昨年6月末のメミュンヘン・オペラフェストモと8月のメザルツブルク音楽祭モで、今回とほぼ同一のプログラムを歌い大成功を収めている。その集大成としての日本でのリーダーアーベント(リートの夕べ)だ。
 ワーグナーというスケールの大きなマクロの世界と、繊細なリートのミクロの世界。一見、相反する組み合わせを統合するのがワルトラウト・マイヤーなのだ。
(山崎 睦/音楽ジャーナリスト、在ウィーン)

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