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19世紀のパリで、白い妖精ラ・シルフィード役が評判をとり、ロマンティック・バレエの代名詞となった伝説のバレリーナ、マリ・タリオーニ。その穢れなき美しさと神聖な精神性で“天上のバレリーナ”と謳われた彼女のために、父である振付家フィリッポが1836年に創作したのが「ドナウの娘」です。
舞台は15世紀ドイツ、ドナウ川沿いの谷間の村。無垢な村娘フルール・デ・シャン(“野の花”の意味)は、領主の花嫁選びから恋人ルドルフと引き裂かれ、ドナウ川に沈みます。そこで水の精となったフルール・デ・シャンと、彼女の後を追ったルドルフは、困難な愛の試練を乗り越えて地上への帰還をはたします。
現世と異界を行き来する神秘的な物語と、魅惑的なヒロイン像によって、この作品は「ラ・シルフィード」に劣らぬ熱狂を生みました。しかしマリ・タリオーニという稀代のスターの刻印があまりにも深かったのか、踊り手の不在とともに、この美しいバレエもやがて失われていったのです。
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