英国ロイヤル・バレエ団 2008年日本公演 最新情報

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ルパート・ペネファーザー(英国ロイヤル・バレエ団)インタビュー

演劇・舞踊ライター、岩城京子さんによる、インタビュー最終回は、『シルヴィア』でアミンタを演じる、ファースト・ソリストのルパート・ペネファーザーです。長身と端正な容姿を兼ね備えたペネファーザーは、日本でも人気を集めること間違いありません。


ルパート・ペネファーザー インタビュー
岩城京子(演劇・舞踊ライター)

ジョナサン・コープが去り、ダーシー・バッセルが引退したいま、英国ロイヤル・バレエ団はまさに喉から手が出るほど"地元育ち"のローカルヒーローの誕生を待ち望んでいる。そんな期待を一身に背負い、現在ファースト・ソリストとして次々に大役をまかされているのが27歳のルパート・ペネファーザー。金髪長身のノーブルな風貌に、穏やかで包容力のあるダンススタイルで『くるみ割り人形』『眠れる森の美女』といった古典作で王子役をふられる機会の多い彼。取材場所でも「アフター・ユー(あなたのあとに)」といってこちらにまず席をすすめ、私が着座したことを確認してからゆったりと腰を落ちつけるという王子ぶりを披露。かと思えば「いまの僕の趣味はガールフレンド!」なんて照れながらも素直に答えちゃう普通の男の子ぶりも愛らしく、ここ日本でもますます人気が上昇しそうだ。


―――子供のころはまるで映画『リトルダンサー』状態で、多くの女の子に混ざってひとり稽古をしていたと聞きました。


ハハ、まさにそのとおりです。僕とは双子の姉妹の影響でバレエを7歳のときに始めたんですけど、12歳でホワイトロッジ(英国ロイヤル・バレエ学校のロウワースクールの呼称)に行くまでは、ただ単に踊りながらまわりの子と遊んでいるという感覚だったので、さほどその状況に違和感を持つこともなかったんです。けど14歳のときにトリン・アーツ・エデュケーション・スクールという場所で気持ちも新たにバレエを学びはじめたときに、僕はバレエという芸術表現と「真実の恋に」落ちてしまった。それでそのみずからの心に従うかたちで、遊びではなく、プロフェッショナルなキャリアを目指そうと思い、16歳のときに英国ロイヤル・バレエ学校のアッパースクールに入学したんです。

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『シルヴィア』アミンタ(photo:Bill Cooper)

―――その頃のロイヤル・バレエ団には綺羅星のごき男性スターたちがひしめいていましたよね。


本当にそうでしたね。イレク・ムハメドフがいて、ジョナサン・コープがいて、テディ(熊川哲也)が信じられないトリックを日々披露していて......。だから僕は本当に食い入るように彼らの公演やリハーサルを毎日見ていた記憶があります。


―――あなたはわりと古典的な王子役をふられることが多いですが、実は『ロミオとジュリエット』や『マノン』といったドラマティックな役柄もお好きだと伺いました。


もちろん古典作を踊っているときも非常に楽しいのですが、僕はそれと同じぐらいドラマ性のあるバレエも好きです。それこそがこのカンパニーの誇るべき特性のひとつだとも思いますし。だから今シーズンのはじめにロミオを踊れたことは、僕にとって大きな出来事でした。あとは、とりあえずいつの日か『マノン』のデ・グリューを踊りたい。というか、絶対にあの役は引退する前に一度は踊ってやる(笑)! もちろん、もっと精神的にマチュアになる必要があるのは自分でも分かっていますけど。でも心のなかではもう、いつか踊ると決めているんです。偶然にも隣の家に住んでいるベストフレンドのヘンリー・セント・クレア(ファースト・アーティスト)とも、たまにそんな話を熱くするんですよ。

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『シルヴィア』アミンタ(photo:Bill Cooper)

―――今回日本でも踊られる『シルヴィア』のアミンタ役は、あなたが初めて挑んだ全幕物主役でしたね。

そうです。4年前の初演のときは、正直、あの下半身がスースーする衣装で舞台にあがるのが多少照れくさかった覚えがあります(笑)。でもアミンタはそんなことに照れる間もなく、いきなり難しいソロを幕開きに踊らなくてはならないので、今考えるとあのころは少し踊りに十分に対応しきれていない部分もあったように思います。けど少し余裕が生まれてきて役に自然と入り込めるようになってからは、衣装のことも気にならなくなりましたし、主席レペティトゥールのドナルド・マクレアリーにつきっきりで教えてもらった踊りに完全に集中することができるようになった。アシュトン・スタイル特有のポール・ド・ブラ、美しく優雅な身体のそらせ方、とても素早いフットワーク。しかもそのすべてを適確にマスターしたうえで、テクニック至上主義に陥ることなく、きちんと物語性を観客に伝える。そう考えるとこれは本当に難しい役柄で、今でも僕は研鑽を積んでいる最中なんですけど、でも日本でまたアミンタを踊れることは心から楽しみにしています。これはリップサービスでもなんでもなく、僕は本当に日本が大好きなんです。友達の何人かは東京で英語教師をしてますしね。だから僕もいつか本気で東京に住もうと思っているんですよ。

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