東京バレエ団<スペシャル・プロ>
「エチュード」ÉTUDES
振付:ハラルド・ランダー
音楽:カール・チェルニー、クヌドーゲ・リーサゲル
東京バレエ団初演:1977年05月04日 東京文化会館
『エチュード』は振付家ハラルド・ランダーの代表作のひとつであり、その題名どおりバレエの練習風景を描いたもので、チェルニーの練習曲によってバレエ・ダンサーの訓練とその進歩のさまざまな段階がつぎつぎに展開される。
特別なストーリーはもたないが、バレエ・ダンサーが毎日、技術向上のためにおこなうレッスンを描いたものである。まず5人の少女が教師の前で、つぎつぎに 足の五つのポジションをとり、プリエをする。ついでバーが置かれ、バーによる目常訓練になり、めざましいテクニックを織りまぜたソロやパ・ド・ドゥ、パ・ ド・トロワやアンサンブルの踊りが加速度的に展開され、息つく間もなく緊張感が高まり、華やかなフィナーレに終わる。練習風景を通して古典バレエのテク ニックを存分に披露する瀟洒な作品である。
『エチュード』はデンマークのバレエ作品中、国際的レパートリーとして最も広く知られた作品で、1948年1月15日、デンマーク王立バレエ団で初演さ れ、1951年、1962年、1970年と3度ハラルド・ランダーによって改訂演出された。デンマーク以外では、1952年にパリ・オペラ座が上演して以来、欧米の主要バレエ団の多くがレパートリーに加えている。
東京バレエ団では1977年に初演。1982年に行った第8次海外公演において、パリ国際ダンスフェスティバル(シャトレ座)で上演し、最大級の賛辞が寄せられた。
東京バレエ団はその厳密さ、統一性、ダイナミズムで深い印象を与えた。彼らの基礎テクニックの確実さをどうして賞嘆せずにいられようか?この点で「エチュード」はまったく模範的だった。何という正確さと揃い方であろう。列のそろい方は完璧で、リズムは規則正しくしかも生き生きととられている
コティディアン・ド・パリ紙/ジェラール・マノニ
1982年10月23日
MOVIE
ゲスト出演
フリーデマン・フォーゲル(シュツットガルト・バレエ団)
甘い容姿と端整なテクニックをもつ、シュツットガルト・バレエ団のプリンス。古典の王子役、クランコ作品など数々のドラマティックな作品で活躍する。2008年のシュツットガルト・バレエ団日本公演では「眠れる森の美女」のデジレ王子と「オネーギン」のレンスキーを演じ、輝かしいばかりのダンスール・ノーブルぶりで、観客を魅了した。今回初めて「エチュード」に挑む。
レオニード・サラファーノフ(マリインスキー・バレエ団)
切れ味のあるテクニックと躍動感が持ち味のマリインスキー・バレエ団のプリンシパル。2007年のミラノ・スカラ座バレエ団日本公演では、東京バレエ団の上野水香とともに「ドン・キホーテ」に主演。抜群のテクニックではずむようなバジルを演じ、会場を沸かせた。超絶技巧の連続に目が離せない「エチュード」はサラファーノフの十八番。
CAST
4月18日(土)
エトワール:上野水香 エトワール:フリーデマン・フォーゲル エトワール:レオニード・サラファーノフ
4月19日(日)
エトワール:吉岡美佳 エトワール:フリーデマン・フォーゲル エトワール:レオニード・サラファーノフ
「月に寄せる七つの俳句」SEVEN HAIKU OF THE MOON
振付:ジョン・ノイマイヤー、音楽:アルヴォ・ペルト、J.S.バッハ
東京バレエ団初演:1989年7月22日
ジョン・ノイマイヤーが東京バレエ団創立25周年記念公演のために創作した作品。大学で文学を修めたノイマイヤーは、東京バレエ団初のオリジナル作品を手がけるにあたり、“俳句”をテーマとして選択。松尾芭蕉、小林一茶、与謝蕪村、正岡子規、山口素堂らの数編にもとづき、装置・衣裳・証明のすべてに至るまでノイマイヤーの透徹した美意識が染み込んだ、美しい「目で見る俳句」の世界を創り上げた。
その年の第11次海外公演でも上演し、西洋と東洋が見事に融合された作品は高い評価を受けた。今回18年ぶりの再演となる。
「俳句を踊ることは不可能に違いありません。でも、俳句とダンスの間には、共通点があると思います。まず、この二つの芸術はどちらも実際の言葉が語る、あるいは動きが見せる以上のものを暗示しています。そして俳句がある一瞬を捕らえて、具体的なイメージを観察したり、比較したりして宇宙の統一性を示すのと 同じく、ダンスも時間と空間の中で動く現実の人間の身体を使って、普遍的あるいは形而上学的なものを喚起するのです。
二つの芸術の関連に強い興味をひかれた私は、ダンスと音楽と言葉を結びつけて、一連の「目で見る俳句」を作ってみました。ですがこのバレエは、私のインスピレーションの源になった俳句を動きで描き出したり、説明するのではなく、俳句とは独立したイメージを作り出しています。俳句と同じように、この言葉と動きの組み合わせは一つの対話を生み出します。――言語のみ、ダンスのみでは表現できない深い内容を表し、俳句の意味を完全に超えるところまで示す新しい形 式です。舞台で朗唱される俳旬は、「月見」をしているダンサーの頭の中の考えなのか、それともダンサーは俳句の言葉を問いて想起された幻想なのか考えてみてください。
俳句という省略され、凝縮され、どこまでも単純な形式にはアルヴォ・ベルトの音楽が理想的だと思われました。振付の準備をしているうち、私はベルトのサラバンドを聞きましたが、この曲はヨハン・セバスチャン・バッハを引用しています。突然私は、バッハの名前[Bach]と俳人芭蕉[Basho]の名前が ローマ字で書くと似ていることばかりでなく、この二人の大芸術家が同じ時に生きており(J.S.バッハは1685-1750、芭蕉は 1644-1694)、同じ月を見ていたことに気づきました。ですからJ.S.バッハの音楽もこのバレエに織り込むべきだと思ったのです。
このバレエは、特に一つの物語を追ってはいませんが、いくつもの物語を暗示しています。秋に始まり、秋に終わるように四季を追うこのバレエでは、月の様々 なイメージがダンスを統一しています。「水面に映る夜空」が月もとらえ、その月はまた、月を見る人々の心や考えに影響を与えているのです。」
ジョン・ノイマイヤー(初演時のプログラムより)
I. 赤い月 是は誰がのぢゃ 子供たち (一茶)
II. 人に似て 月夜のかがし あはれなり (子規)
III. 四五人に 月落ちかかる をどり哉 (蕪村)
IV. 寒月や 石塔の影 松の影 (子規)
V. 春もやや けしきととのふ 月と梅 (芭蕉)
VI. 小言いふ 相手もあらば 今日の月 (一茶)
VII. 我をつれて 我影かへる 月見かな (素堂)
VIII. 鐘消えて 春の香は撞く 夕べ哉 (芭蕉)
ノイマイヤー・フェスト2009
2009年前半、ジョン・ノイマイヤーの作品が日本で相次いで上演されます。現代随一の振付家の魅力をたっぷり味わえる貴重な機会をお見逃しなく! ハンブルク・バレエ公演[東京・横浜2/12-2/19]、〈東京バレエ団創立45周年記念スペシャル・プロ〉「月に寄せる七つの俳句」、パリ・オペラ座バレエ学校公演「ヨンダーリング」[東京4/25-4/29]、デンマーク・ロイヤル・バレエ団公演「ロミオとジュリエット」[東京5/22-5/24]。
ジョン・ノイマイヤーは、東京バレエ団の25周年記念のために『月に寄せる七つの俳句』を完成させた。日本独自の俳句の風景を表現するだけに留まらず、うっとりするような象徴的なシーンの連続のなか、ダンサーたちの秘めたる力を十分に発揮することに成功している。
1989年10月30日
クライネ・ツァイトゥング エルンスト・ナルディ・ライナー
「月に寄せる七つの俳句」の振付は、日本人ダンサーの繊細さと完璧に一致し、ダンサーたちは優雅できめ細かく、内在する魅力を生かしながら演じている。また西洋の振付芸術と東洋の舞台芸術が見事に融合しているといえよう。そして物語そのものの神秘的で超自然的な要素が、バレエ団の魅力を増している。
1989年11月13日
フィガロ紙
MOVIE
CAST
「タムタム」TAM-TAM ET PERCUSSION
振付:フェリックス・ブラスカ
音楽:ジャン=ピエール・ドゥルエ、ピエール・チェリザ
東京バレエ団初演:1979年4月12日 モンテカルロ歌劇場
ブラスカはこの作品を1970年にエスパース・カルダン劇場のために創作した。その初演は8人の舞踊手で構成されたが、東京バレエ団のために24人に拡大して振り付け直した。ブラスカは自身のバレエ団のアフリカ公演でインスピレーションを得てこの作品を創造したと思われる。洋楽の打楽器とトムトムの二人の実者によって奏されるこの音楽は、即興音楽のように聞こえるが、実際はきわめて的確な一連のリズムによって構成されている。舞台の舞踊手たちのそばで 演奏する時、音楽家はこのリズムの中に無数のヴァリエーションを見いだすことができる。
東京バレエ団では、1977年第7次海外公演のモンテカルロ歌劇場で初演。海外公演で繰り返し上演し、観客を熱狂させた。
観客は『タムタム』に熱狂した。メッセージを伝えるのではなく、生きる歓びを湧き上がらせる。日本人たちはここに魂と肉体を注ぎ込んだ。そしてこれに割れるような拍手が応えた
1982年10月31日
コッリエーレ・デッラ・セーラ マリオ・パージ
ブラスカ振付『タムタム』は心ときめくような素晴らしい出来栄えだった。原始的なリズムと純粋なクラシックの技巧の結合である。この作品で、東京バレエ団は観客を熱狂させた
1982年10月31日
ガゼッタ・デル・ポポロ紙 ヴィットリア・ドーリオ
MOVIE
CAST
※配役は2008年12月15日現在の予定です。出演者の怪我等の理由により変更になる場合があります。正式な配役は公演当日に発表いたします。
Photos: Kiyonori Hasegawa