イタリア・オペラの殿堂によるヴェルディ・オペラの神髄 ミラノ・スカラ座 TEATRO ALLA SCALA 2009年日本公演
イントロダクション 「アイーダ」 「ドン・カルロ」 最新情報 来日特別演奏会 公演概要
解説 Story・聴きどころ スタッフ・CAST 動画
「ドン・カルロ」新世代の巨匠ガッティの指揮のもと、当代最高のヴェルディ歌手陣が、絢爛たる声の饗宴にいざなう!

解説

ヴェルディが『ドン・カルロ』に望んだ深遠なる心理劇を実現した スカラ座の新生面

 『ドン・カルロ』は、登場人物の苦悩が全編を支配するオペラです。父王の妃となってしまった恋人エリザベッタへの愛と父への愛憎に苦しむカルロ、そのカルロへの想いと自身の立場に苦しむエリザベッタ、そしてフィリッポ2世は王として、夫として、そして父としての苦しみを抱えています。さらに、カルロの親友であり、王から腹心と認められているロドリーゴは、いわば板ばさみ的な立場に苦悩し、カルロを慕いながら報われず、嫉妬心からエリザベッタを窮地に追い込むエボリ公女…、これらが複雑に絡み合いながら織り上げられるドラマに、ヴェルディは壮大で劇的効果みなぎる音楽を与えました。それだけに、上演に際しては音楽と演出の両面に高度な「力」が要求されるのは当然のことといえるでしょう。また、もともとフランス・グランド・オペラ形式に則ってつくられたことから、大掛かりな舞台装置による上演も少なくありませんが、そうした場合、ともすると作品の本質がかすんでしまうことも起こりえます。その点 “ヴェルディの劇場”の異名をもつミラノ・スカラ座の2008/09年シーズン開幕を飾ったこの『ドン・カルロ』は、スカラ座にとって新しい時代を映すことに成功したといえるでしょう。ダニエレ・ガッティの絶妙にコントロールされた指揮と、無為に装飾的な舞台装置を排したシュテファン・ブラウンシュヴァイクの演出は、スタイリッシュな美しい空間、シェイクスピア劇のようなエッセンスでつくられた舞台のなかで、ひたすらにドラマを進め、胸えぐる悲嘆を描き出しています。
 オペラ『ドン・カルロ』にヴェルディが望んだのは心理劇であったことを、この上演があらためて感じさせてくれることとなります。

「スカラ座に音楽監督が必要なら、ここにその人がいる」

 昨年12月の開幕公演に寄せられた評において、最大の賛辞を得たのはダニエレ・ガッティの指揮でした。
「心の襞の奥底にいたるまで作品を深く掘り下げ、明暗のコントラストと微妙な色調を、考え抜かれた繊細さで浮かび上がらせるとともに、豊饒な色彩とニュアンスを振り分けた」(ウニタ紙)、「ガッティは、フィリッポ2世の苦悩や、このオペラの政治的駆け引きと激情の場面だけをことさらクローズアップするのではなく、ストーリーのいくつもの流れの間に完璧なバランスを作り上げる。それによって、ドラマチックな緊張を直截な洞察力で掘りさげると同時に、哀切きわまりない数々の場面を、登場人物たちの不安にうち震える内面を、ドン・カルロとエリザベッタの品位に満ちた悲嘆を浮き彫りにする」(イル・ガッゼッティーノ紙)、「ガッティのこのスカラ座のヴェルディこそは、ムーティ、アッバード、そしてその前の時代の最良の伝統を汲み上げるものである」と評するイル・ソーレ24オーレ紙では、「スカラ座に音楽監督が必要だとするなら、ここにその人がいる。」と、その評を結んでいます。

主要登場人物6人に揃う最強歌手たち

 このオペラの上演では6人の主要登場人物全員が、その心情をドラマチックに歌い演じる力量を備えていなければなりません。まず、ヴェルディから美しいロマンツァやロドリーゴとの二重唱、エリザベッタとの二重唱などを与えられた悩める青年カルロには、豊かな表現力が要求されます。すでにこの役では高い評価を得ているリリック・テノールのラモン・ヴァルガス、スカラ座開幕の全公演を一人で歌い切り、その強靱で丸みのある声質で喝采を浴びたスチュアート・ニールが登場します。
 最終幕での宿命的なアリアを聴かせどころとしてもつエリザベッタには、美声と美貌、そして卓越した表現力をもつ歌姫バルバラ・フリットリの登場が話題を呼ぶところですが、開幕公演で豊かな声量と魅力的な陰影に富む中・低音域、響きわたる高音の持ち主として高評を得たミカエラ・カロージもまた、美しきエリザベッタとして注目されます。
 「ヴェールの歌」や「呪わしき美貌」といった魅力的なアリアを与えられたエボリ公女は、メゾ・ソプラノにとって高い技術と表現力を要求される難役です。すでに“エボリ歌い”と称されるドローラ・ザージックですが、開幕公演でそのザージックを圧倒したと評されたアンナ・スミルノヴァも聴き逃せません。
 ロドリーゴ、フィリッポ2世、宗教裁判長の男声3人は、いずれもこの作品において重要な役割を与えられています。カルロへの友情と国政への理想主義を、死をもって貫くロドリーゴに要求されるのは気高い情熱。輝かしく、しなやかな声と演技力にも優れたダリボール・イェニス、美声で繊細な表現で心に迫るトーマス・ヨハネス・マイヤーは、いずれも注目のバリトンです。
 歴代のバス歌手が、こぞってこの役をレパートリーとしようと努めたのがフィリッポ2世。タイトル・ロールのカルロより、抱えている苦悩はずっと複雑な役なのです。すでに人気実力ともに世界のトップクラスに立つルネ・パペが描き出す威厳と憂鬱は、聴く者の心の奥底にまで痛みとして響くはず。また、フィリッポ2世役をすでにあたり役の一つとしているサミュエル・ラミーは、宗教裁判長でも登場します。背筋も氷るほどの冷徹無比さをアナトーリ・コチェルガと競うこととなります。


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