佐久間奈緒インタビュー

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佐久間奈緒さんは、1995年に英国バーミンガム・ロイヤル・バレエ団(BRB)に入団。2002年にプリンシパルに昇進し、エリザベス女王即位50周年記念ガラに出演するなど、名実ともにBRBを代表するプリンシパルとして活躍しています。来年の日本公演でも、東京公演の『美女と野獣』、西宮公演の『コッペリア』に主演します。
この夏、故郷の福岡で夏休みを過ごしていた奈緒さんが、BRB日本公演のプロモーションのため東京に足を運んでくれました。新聞、雑誌を中心に二日間で計12件の取材というハードスケジュールでしたが、笑顔を絶やさず、自分の言葉でしっかりと対応する奈緒さんに、取材陣の誰もが応援団になってしまったほど。素顔の奈緒さんは、礼儀正しく、飾らない人柄の魅力あふれる女性です。
秋から冬にかけて、いろんな媒体で佐久間奈緒さんの記事をご覧いただける予定ですが、まずはこのBLOGで、フリーライターの岩城京子さんによるインタビューをお届けします。

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来日公演が少ないため日本での知名度こそ控えめだが、英国において彼女の名を知らぬバレエファンはいない。名実ともに英国バーミンガム・ロイヤル・バレエ団のトッププリンシパルとして活躍する佐久間奈緒は、オデット、ジゼル、オーロラなどの誰もが知る王道主役から、バランシンの『アポロ』、アシュトンの『二羽の鳩』などの佳作小品に至るまで、見事に身体を七変化させ完璧なテクニックで踊りこなしてみせる。無論、技術力だけでなく「チャーミング、デライトフル、ポエティック」と評されるその雄弁な演技力も圧巻。芸術監督デヴィット・ビントリーもお世辞抜きに「カンパニーを代表するダンサー」と称える佐久間の絶頂期の踊りを、いま日本で見逃すことほど口惜しいことはない。来年1月の公演で『美女と野獣』のベルに扮する彼女に、今までのキャリアや来たる公演などについて訊ねた。

 

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佐久間奈緒(さくまなお)さん 20078NBSにて撮影

 

―――佐久間さんはロイヤル・バレエ・スクールで学ばれたのちに、95年にバーミンガム・ロイヤル・バレエ団(以下:BRB)に入団されたわけですよね。

そうです。ローザンヌ国際バレエコンクールのセミファイナルまで進出したときに、そこにいた審査員のかた何人かに気にいっていただけまして。その場で「明日、ロイヤル・バレエ・スクールのオーディションを受けに来ないか」と声をかけられたんです。それで運良くスクールに入学することになりまして、卒業公演では主役を踊らせて頂いたりもしました。演目はバランシンの『ヴァルス・ファンタジー』とアシュトンの『二羽の鳩』。ちなみにバランシンのほうは今度日本で一緒に『美女と野獣』を踊る、(ツァオ)チーと組みました。彼とはとても長いつきあいなんです()


―――『リーズの結婚』や『二羽の鳩』などアシュトン作品での評価が高いですね。

確かにそれらの演目では、ナチュラルな自分を生かしたまま踊ることができます。芸術監督のデヴィット(ビントリー)も、白と黒で言うなら「白」のイメージの役柄を私には多く振りますし。だけど自分としてはフォーキンの『火の鳥』やデヴィッド振り付けの『アーサー王』など、いつもとは違う少し力強さを要する役柄を踊るのも大好き。それでデヴィッドに「普段のナオとは違うけど、これはまたこれでいいよね」と言ってもらえたりすると本当に嬉しい! 私はテクニックと同じぐらい演技面も鍛えてきたつもりなので、女優のように役によって自分の印象をがらりと変えたいんです。

07-09.06nao4.jpg『リーズの結婚』 photoBill Cooper

 

―――BRBは本当にアットホームで、ダンサー間の会話も密に交されると聞きました。

そうですね。時間さえあれば「昨日観たバレエはこんなだった」「あの映画は絶対に観たほうがいい」とダンサー同士で会話を楽しみます。そうして個々人が自由に発言できる雰囲気が、おのずと舞台上にも表れてくるんです。特に芸術監督がデヴィッドになってからは、技術以上に、表現力・音楽性・個性といったことを重視してダンサーを採用しているので、今度の『美女と野獣』に関しても、2組がまったく違う演技を披露すると思いますよ。


―――最後に、ベル役にかける意気込みをお聞かせ下さい。

物語の冒頭でのベルは、本当に真っ白でピュアな存在。二人のお姉さんの下にいて、それこそシンデレラのように静かに生きている。けれど野獣と出会うことによって、徐々に彼女自身の意志や勇気や決断力が見えてくる。そうしたベルの女性としての成長を、きちんとお見せできればと思います。デヴィッドが作り上げたベルは、すごくリアルなんです。だから技術的にはそれほど難しい部分はないものの、演技面ではそうとう丁寧に作り込んでいかないとダメ。お客様に共感していただけるよう、チーとも相談しながら私たちなりの物語を紡ぎあげていければと思います。

 

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『くるみ割り人形』(ツァオ・チーと) Photo:Bill Cooper

このブログ記事について

このページは、NBSが2007年9月 7日 15:44に書いたブログ記事です。

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